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マリッジブルー?
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「君は「ハナビ」って知ってるかい?」
ある日、海面を揺蕩いながらお喋りしていると、ジュールがそんな話題を振ってきた。
「知ってるわ、パンパン音を鳴らしながら空に上がるものでしょ?すごくキレイよね。」
花火なんて、前世から今に至るまで何度も見てる。
夏休みには毎年、家族で地元の花火大会に出かけて、本当に楽しかった。
「ボク、こないだそれを見たんだ。お船の上で王子様の婚約のお祝いしてたみたい。すごく面白かったよ。」
ジュールが10本の脚を嬉しそうにバタつかせた。
「ああ、王子様、結婚するのね。」
ああ良かった。
王子様も女性も無事にハッピーエンドを迎えられたのね。
「王子様のこと知ってるの?」
「ええ、私ね、王子様の誕生祝いの日にたまたま出くわしたの。花火もそこで見たわ。」
「そうなのかい、でもね、女の子の方はなんだか悲しそうな顔してたよ。しばらくしてから地上を見に行ったら、その女の子が海辺で泣いてたところを見たんだ。それこそ、毎日泣いてるみたい。」
ジュールの声に元気が無くなる。
「どうして?王子様と結婚できるのに。」
「わからない。ねえ、アナスン。君はハンサムな人間の王子様と結婚できたら嬉しいと思うの?」
「ううん、思わないわ。ずっと海の中で家族と過ごしたい!」
ジュールはなぜそんなことを聞くのだろう?
いや、それよりも「女性が泣いていた」というのが気になる。
後日、海面から顔を出して海辺の方を見やると、ジュールの言う通り、あの女性が岩場でうずくまって泣いていた。
どうして泣いてるのかしら?
見たところ嬉し泣きでは無さそうだし。
マリッジブルーってやつ?
その悲しそうな様子がどうしても気になって、近づいてみることにした。
大きな賭けではあるけれど、尾ひれが見えないように近づけば人魚だとバレないわ。きっと大丈夫。
海辺にゆっくりゆっくり近づいて、女性の目の前までたどり着いた。
「ねえ、あなた、どうして泣いてるの?」
尾ひれを海中に沈めて、上半身だけ出した状態のまま、話しかけてみる。
「ぐすっ、うっ…あなた、だれ?」
膝に顔をうずめていた女性が顔を上げ、こちらを見た。
キレイな人だ。
こんな美人を泣かせるなんて、王子様は一体何をしたのだろう。
「私は…この辺に住んでる漁師の娘よ。貝とかを拾ってたの。どうしたの?良かったら、お話を聞くわ。」
とっさに取り繕って答える。
「私、もうすぐ結婚するのだけど…」
女性は泣いている理由を教えてくれた。
海辺で倒れていた王子様を助けて、それをきっかけに王子様と結婚することになった。
しかし、肝心の王子様というのが……
ある日、海面を揺蕩いながらお喋りしていると、ジュールがそんな話題を振ってきた。
「知ってるわ、パンパン音を鳴らしながら空に上がるものでしょ?すごくキレイよね。」
花火なんて、前世から今に至るまで何度も見てる。
夏休みには毎年、家族で地元の花火大会に出かけて、本当に楽しかった。
「ボク、こないだそれを見たんだ。お船の上で王子様の婚約のお祝いしてたみたい。すごく面白かったよ。」
ジュールが10本の脚を嬉しそうにバタつかせた。
「ああ、王子様、結婚するのね。」
ああ良かった。
王子様も女性も無事にハッピーエンドを迎えられたのね。
「王子様のこと知ってるの?」
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ジュールの声に元気が無くなる。
「どうして?王子様と結婚できるのに。」
「わからない。ねえ、アナスン。君はハンサムな人間の王子様と結婚できたら嬉しいと思うの?」
「ううん、思わないわ。ずっと海の中で家族と過ごしたい!」
ジュールはなぜそんなことを聞くのだろう?
いや、それよりも「女性が泣いていた」というのが気になる。
後日、海面から顔を出して海辺の方を見やると、ジュールの言う通り、あの女性が岩場でうずくまって泣いていた。
どうして泣いてるのかしら?
見たところ嬉し泣きでは無さそうだし。
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大きな賭けではあるけれど、尾ひれが見えないように近づけば人魚だとバレないわ。きっと大丈夫。
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「ねえ、あなた、どうして泣いてるの?」
尾ひれを海中に沈めて、上半身だけ出した状態のまま、話しかけてみる。
「ぐすっ、うっ…あなた、だれ?」
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「私は…この辺に住んでる漁師の娘よ。貝とかを拾ってたの。どうしたの?良かったら、お話を聞くわ。」
とっさに取り繕って答える。
「私、もうすぐ結婚するのだけど…」
女性は泣いている理由を教えてくれた。
海辺で倒れていた王子様を助けて、それをきっかけに王子様と結婚することになった。
しかし、肝心の王子様というのが……
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