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店内にて
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「わあー…」
ドアの内側に入るなり、小山は20平米あるかないかの店内をキョロキョロ見回しながら、声を漏らした。
サックスブルーの姫袖ドレスを着せられてディスプレイされたトルソー、壁際のラックにかけられたブラウスやスカート、ウィッグの上にボンネットをつけられているベッドマネキン、商品棚に並んだカチューシャやブレスレットやリング。
どれも、小山の目には新鮮には新鮮に写るのだろう。
そばに立つ女性店員は、そんな小山を少しばかり警戒しているようだった。
ロリィタ服を取り扱っている店は冷やかしや転売目的で入ってくる人も多いから、馴染みのない客を訝しむこは仕方のないことかもしれない。
「このドレスとか、すごいね。ホントにお姫様が着る服ってカンジ」
小山がトルソーに着せられている姫袖ドレスを指差した。
「うん、こういうの「姫ロリ」っていうと言うんだよ」
「へえ、いまヒカリ姫が着てるヤツとか、ゴスロリとは違うカンジ?」
「そうだよ」
小山はいつの間にか、光史朗のことを「ヒカリ姫」と呼び始めた。
恥ずかしい気持ちはあったが、まんざら悪い気はしないので、大した反論もしなかった。
「ところで、何か買うの?」
「う、うん!あの…新作の和柄のシリーズ、置いてますか?」
言われてハッとした光史朗は、あわてて店員に尋ねた。
「あ、今は予約受け付け中です」
2人の様子を静かに伺っていた店員も、ハッとしたような顔になって返答した。
「じゃあ、予約お願いします!」
光史朗はさっそく予約することにした。
店頭での購入と違って、すぐに手に入らないのは不便だが、人気のある商品はこういった措置が取られることも多い。
いわゆる受注生産というやつだ。
「かしこまりました。こちらにお名前と住所、お電話番号をお願いします」
言うと女性店員はカウンターに移動して、引き出しから申し込み用紙とボールペンを取り出した。
「予約って何?」
「えーと、受注生産ってわかるかな?」
「うん、ウチでもたまにあるよね」
小山の言う通り、光史朗たちの勤め先でも、取り引き先から発注を受けた分だけ製造して、発送するシステムがある。
「人気があるヤツってさ、転売ヤーに大量に買われちゃうことがあるの。先にそれを防ぐために、欲しい人がちゃんと買えるようなシステムがコレってワケ。もちろん、個数制限もある」
申し込み用紙の上でボールペンをカリカリ滑るように動かしながら、光史朗は大雑把に説明した。
「なるほどねー」
光史朗のその楽しそうな様子を、小山はジッと見つめていた。
もう店内にある商品には見慣れたらしい。
「書けました!」
「ありがとうございます」
店員は礼を言うと、希望した商品は今から1ヶ月ぐらい後に発送されることと、届き次第、申し込み用紙に書いた電話番号に連絡を入れる旨を伝えた。
そして、光史朗は前払い金を一部支払い、店内を物色した。
「何か買う?」
「うーん…」
小山に言われて店内を見回してみるが、特に欲しいものはない。
「これとか、どう?」
言うと小山は、そばの商品棚に置いてあるアクセサリースタンドを指差した。
ドアの内側に入るなり、小山は20平米あるかないかの店内をキョロキョロ見回しながら、声を漏らした。
サックスブルーの姫袖ドレスを着せられてディスプレイされたトルソー、壁際のラックにかけられたブラウスやスカート、ウィッグの上にボンネットをつけられているベッドマネキン、商品棚に並んだカチューシャやブレスレットやリング。
どれも、小山の目には新鮮には新鮮に写るのだろう。
そばに立つ女性店員は、そんな小山を少しばかり警戒しているようだった。
ロリィタ服を取り扱っている店は冷やかしや転売目的で入ってくる人も多いから、馴染みのない客を訝しむこは仕方のないことかもしれない。
「このドレスとか、すごいね。ホントにお姫様が着る服ってカンジ」
小山がトルソーに着せられている姫袖ドレスを指差した。
「うん、こういうの「姫ロリ」っていうと言うんだよ」
「へえ、いまヒカリ姫が着てるヤツとか、ゴスロリとは違うカンジ?」
「そうだよ」
小山はいつの間にか、光史朗のことを「ヒカリ姫」と呼び始めた。
恥ずかしい気持ちはあったが、まんざら悪い気はしないので、大した反論もしなかった。
「ところで、何か買うの?」
「う、うん!あの…新作の和柄のシリーズ、置いてますか?」
言われてハッとした光史朗は、あわてて店員に尋ねた。
「あ、今は予約受け付け中です」
2人の様子を静かに伺っていた店員も、ハッとしたような顔になって返答した。
「じゃあ、予約お願いします!」
光史朗はさっそく予約することにした。
店頭での購入と違って、すぐに手に入らないのは不便だが、人気のある商品はこういった措置が取られることも多い。
いわゆる受注生産というやつだ。
「かしこまりました。こちらにお名前と住所、お電話番号をお願いします」
言うと女性店員はカウンターに移動して、引き出しから申し込み用紙とボールペンを取り出した。
「予約って何?」
「えーと、受注生産ってわかるかな?」
「うん、ウチでもたまにあるよね」
小山の言う通り、光史朗たちの勤め先でも、取り引き先から発注を受けた分だけ製造して、発送するシステムがある。
「人気があるヤツってさ、転売ヤーに大量に買われちゃうことがあるの。先にそれを防ぐために、欲しい人がちゃんと買えるようなシステムがコレってワケ。もちろん、個数制限もある」
申し込み用紙の上でボールペンをカリカリ滑るように動かしながら、光史朗は大雑把に説明した。
「なるほどねー」
光史朗のその楽しそうな様子を、小山はジッと見つめていた。
もう店内にある商品には見慣れたらしい。
「書けました!」
「ありがとうございます」
店員は礼を言うと、希望した商品は今から1ヶ月ぐらい後に発送されることと、届き次第、申し込み用紙に書いた電話番号に連絡を入れる旨を伝えた。
そして、光史朗は前払い金を一部支払い、店内を物色した。
「何か買う?」
「うーん…」
小山に言われて店内を見回してみるが、特に欲しいものはない。
「これとか、どう?」
言うと小山は、そばの商品棚に置いてあるアクセサリースタンドを指差した。
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