【完結】オメガの純が夢見ていること

若目

文字の大きさ
上 下
55 / 55

王子様とお姫様 ※

しおりを挟む
純がクローゼットから取り出したのは、18世紀の貴族風衣装であった。

「これでヤるの?どんなプレイ?」
仁志は苦笑いするしかなかった。
通常、ラブホテルで用意されている衣装というのは、大抵は縫製が雑で生地が薄く、全体的に粗雑なものが多いが、これは違った。
やたら装飾が凝っているネイビーのフロックコートに、スタンドカラーのフリルシャツ、それとは対照的にすっきりシンプルなスラックス。
まるで大手劇団が所持している舞台衣装みたいだ。

「ふふっ、ねえ仁志。せっかくだからさ、これ着てみてよ」
「ええー」
純の要望に、仁志は苦笑いで返した。
「ぼくはこれ着よっかな!」
言うと純は、童話のお姫様が着るような、フリルとリボンたっぷり真っ白なネグリジェを引っ張り出した。
ガラじゃない衣装を着るのに抵抗はあったが、可愛い恋人のたっての望みとあっては拒否できない。


「芸人がコントでやる王子様じゃん、コレ…」
着替え終わった仁志は、これまた派手なロココ調デザインのスタンドミラーに自身を写し、感想を述べた。
いかにも今どきの日本の若者といった顔つきと、数百年前のフランスで流行ったであろう派手な服は、まるで合っていない。
見事なまでにケンカしている。
「ええー、いいじゃんいいじゃん!カッコいいよ仁志!!」
そんな仁志の隣で、純はネグリジェの裾をヒラヒラ揺らして舞い上がっていた。
どこにあったのか知らないが、ご丁寧に花冠までかぶっている。


「そうか。そりゃ、ありがとう…」
形ばかりの礼を言った途端、急に純が抱きついてきた。
瞬間、仁志は体が異様に昂ぶるのを感じた。
純の発情期が来たのだ。
「ねえ、王子様…わたしのこと助けてくれる」
純が抱きついたまま、とろんとした瞳で仁志を見つめてきた。
「わかったよ、お姫様」


「んんっ…はあっ、ん…」
2人はベッドに移動すると、熱い口づけを交わした。
「このネグリジェ、えっちだなあ、乳首透けてんじゃん」
唇を離して、ベッドに寝そべる純を見下ろすと、生地の薄いネグリジェが汗で張り付き、純の体を露わにしていた。
仁志がネグリジェ越しに純の乳首を指先で可愛がってやると、純はビクビクと震えて背中を反らした。
そうすると純の股が濡れてきて、そこにネグリジェが張り付く。
その扇情的な光景に、仁志は思わずゴクリと唾を飲み込む。

「や…んっ、そこ、だめえ、イっちゃう…!」
「どうして?ジュンちゃん、ここ好きじゃん」
仁志は、ちょっと意地悪したい気持ちにかられて、純の乳首を爪先で軽くはじいた。
そのたびに、純はいやいやをする幼児のようにかぶりを振って喘ぐ。

「…挿れてえ、前戯とか、いいからあ…!」
「え、でも…」
挿れるのはもう少し後と考えていたので、仁志は戸惑った。
「いいから、はやくう…」
純がネグリジェの裾をめくって懇願してきた。
そこはもう、しとどに濡れそぼってしまって、蕾は雄を求めてヒクヒク動いている。
「…わかったよ」
言われた通り、仁志は前をくつろげて男根にコンドームをつけると、純の胎内に侵入していった。

「あんっ!あっ…ひんっ、んんっ…イイッ、気持ちいいよお…あ、だめ、イッちゃう、もう、出ちゃう!」
純のそこは男根をきゅうきゅう締めつけて離さず、そのあまりに強い快感に、仁志は頭がクラクラしてきた。
「うん、俺も出すね、お姫様!」
2人とも、挿入して間もないのに、あっという間に達してしまった。


その後も数回交わっているうち、疲れた2人はそのまま寝込んでしまった。
先に起きたのは、純の方だった。
何気なく、隣で寝ている仁志の顔を覗き込んでみる。

──王子様ってか、ほぼ狼だったなあ…

すうすうと規則正しい寝息を立てている仁志の顔を見て、純はそんなことを思った。
それでも、純はそんな狼が好きでたまらない。

──これからもよろしくね、ぼくの狼さん!

純は寝ている仁志の胸に顔を埋めると、もう一度眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

処理中です...