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2人の決意
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「なに、急に…」
仁志は口をあんぐりと開けて、純を見つめた。
「仁志はやっぱり、ぼくのことが嫌い?ちょっと前に、好きって言ってくれたでしょう?アレは嘘だったの?」
「ち、違うよ。オレは、ジュンちゃんのこと大好きだよ。でも、オレはベータだよ?金も地位もないし。それどころか、中卒で少年院入ってたようなヤツで、イケメンじゃないし……ジュンちゃん、「金持ちでイケメンのアルファと番になって結婚して、それでめでたく寿退社!」とか言ってたじゃん。急にどうしたの?」
仁志は赤面して、あわてふためいた。
「ぼく、番とか結婚とか、もうそんなのどうでもいいんだ」
仁志とは正反対に純は真剣そのものといった顔で、その対比は、傍から見ればとてつもなく滑稽であろう。
それでも、純は一向に引く気配がない。
「ぼく、大貴や高貴さん以外にもいろんなアルファに会ったよ。付き合った人もいる。でも何でかわからないけど、ぜんぜん好きになれなかった。向こうがこっちのこと見下してる態度取ったり、嫌なこと言われたってのもらあるだろうけど。それでまた、振り出しに戻るだけで…でも、今は違うんだ。胸張って言えるよ。ぼく、仁志のことが好き。だから、付き合ってくれる?これからもずっと、一緒にいてくれる?」
こうまで熱く言われては、仁志は応えるより他ならない。
「……うん、わかった。オレたち、付き合おう!」
「ホントに?嬉しいよ仁志!!」
そう言って飛びついてきた純を、仁志はギュッと強く抱きしめた。
「あ、それとね、ぼく、今度の発情期は10日後なんだ。その日に家に来てくれる?」
耳元で艶っぽく囁かれて、仁志の耳はかあっと熱くなった。
それから1週間後。
「軽井沢くん、相田くんから聞いたよ。結局、番を探すのは止めにしたんだよね?」
仕事中、高貴さんに声をかけられた。
「ええ、これからは、仁志と仲良くやっていくつもりなんで!」
純がにっこり笑った。
「それでいいのかい?発情期大変だろうに…」
断言する純に対して、高貴さんは心配そうな顔をする。
「いいんです、発情期がつらいときは、仁志が支えてくれるから!ぼく、休み挟みながら、頑張って働きます。だから、これからもお世話になりますね、高貴さん!」
「そっか、そりゃよかった。正直言うとね、忍尾さんが辞めちゃったから、この上でさらに軽井沢くんが寿退社なんかしちゃうと困るなーと思ってたから、嬉しいよ」
明るく振る舞う純を見て、高貴さんはホッとしたような顔をしてみせた。
「え、忍尾さん、辞めたんですか⁈」
初耳だった。
もっとも、忍尾さんとは元からあまり話さないし、大貴が店にやってきて純に襲いかかってきたときからも、それは変わらなかった。
「うん、なんかねえ、ご家庭の事情で働けなくなったらしくて…」
高貴さんは肩をがっくり落とした。
店はそこそこに繁盛している一方、人手がなかなか確保できないので、パートやアルバイトが一人辞めるだけでも結構な痛手なのだろつ。
「そうなんですね…」
肩を落とした高貴さんを見て、今度は純が心配そうな顔をした。
「そうなんだよ。とりあえず、休憩行ってくるから、その間よろしくね」
「はあい、いってらっしゃい」
休憩室に向かっていく高貴さんに、純は軽く手を振って見送った。
──さ、真知子叔母さんに連絡入れるとするか…
純に見送られる中、高貴は魔法使いが杖を降るように空中で指を遊ばせたかと思うと、ポケットからスマートフォンを出した。
仁志は口をあんぐりと開けて、純を見つめた。
「仁志はやっぱり、ぼくのことが嫌い?ちょっと前に、好きって言ってくれたでしょう?アレは嘘だったの?」
「ち、違うよ。オレは、ジュンちゃんのこと大好きだよ。でも、オレはベータだよ?金も地位もないし。それどころか、中卒で少年院入ってたようなヤツで、イケメンじゃないし……ジュンちゃん、「金持ちでイケメンのアルファと番になって結婚して、それでめでたく寿退社!」とか言ってたじゃん。急にどうしたの?」
仁志は赤面して、あわてふためいた。
「ぼく、番とか結婚とか、もうそんなのどうでもいいんだ」
仁志とは正反対に純は真剣そのものといった顔で、その対比は、傍から見ればとてつもなく滑稽であろう。
それでも、純は一向に引く気配がない。
「ぼく、大貴や高貴さん以外にもいろんなアルファに会ったよ。付き合った人もいる。でも何でかわからないけど、ぜんぜん好きになれなかった。向こうがこっちのこと見下してる態度取ったり、嫌なこと言われたってのもらあるだろうけど。それでまた、振り出しに戻るだけで…でも、今は違うんだ。胸張って言えるよ。ぼく、仁志のことが好き。だから、付き合ってくれる?これからもずっと、一緒にいてくれる?」
こうまで熱く言われては、仁志は応えるより他ならない。
「……うん、わかった。オレたち、付き合おう!」
「ホントに?嬉しいよ仁志!!」
そう言って飛びついてきた純を、仁志はギュッと強く抱きしめた。
「あ、それとね、ぼく、今度の発情期は10日後なんだ。その日に家に来てくれる?」
耳元で艶っぽく囁かれて、仁志の耳はかあっと熱くなった。
それから1週間後。
「軽井沢くん、相田くんから聞いたよ。結局、番を探すのは止めにしたんだよね?」
仕事中、高貴さんに声をかけられた。
「ええ、これからは、仁志と仲良くやっていくつもりなんで!」
純がにっこり笑った。
「それでいいのかい?発情期大変だろうに…」
断言する純に対して、高貴さんは心配そうな顔をする。
「いいんです、発情期がつらいときは、仁志が支えてくれるから!ぼく、休み挟みながら、頑張って働きます。だから、これからもお世話になりますね、高貴さん!」
「そっか、そりゃよかった。正直言うとね、忍尾さんが辞めちゃったから、この上でさらに軽井沢くんが寿退社なんかしちゃうと困るなーと思ってたから、嬉しいよ」
明るく振る舞う純を見て、高貴さんはホッとしたような顔をしてみせた。
「え、忍尾さん、辞めたんですか⁈」
初耳だった。
もっとも、忍尾さんとは元からあまり話さないし、大貴が店にやってきて純に襲いかかってきたときからも、それは変わらなかった。
「うん、なんかねえ、ご家庭の事情で働けなくなったらしくて…」
高貴さんは肩をがっくり落とした。
店はそこそこに繁盛している一方、人手がなかなか確保できないので、パートやアルバイトが一人辞めるだけでも結構な痛手なのだろつ。
「そうなんですね…」
肩を落とした高貴さんを見て、今度は純が心配そうな顔をした。
「そうなんだよ。とりあえず、休憩行ってくるから、その間よろしくね」
「はあい、いってらっしゃい」
休憩室に向かっていく高貴さんに、純は軽く手を振って見送った。
──さ、真知子叔母さんに連絡入れるとするか…
純に見送られる中、高貴は魔法使いが杖を降るように空中で指を遊ばせたかと思うと、ポケットからスマートフォンを出した。
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