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せんせいの黒いカバン
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先生はいつも大きな黒い
カバンを持っている。
先生のカバンには
不思議が沢山つまっている。
今日も先生はカバンと一緒に
電車に乗って出かけてゆく。
「今日は大好物のそばを食べに
信州まで行くんだ。」
先生は上機嫌。
街を過ぎて、山々が遠くに見える。
もうすぐ、信州だ。
その時。
『お客様の中に、どなたかお医者様はいらっいませんか?』
車掌さんの声が車内に響いた。
先生はニコニコ顔から急に真面目になって
立ち上がった。
「はい。急患なら僕がみましょう。」
先生は困った人の所に駆けつけた。
お腹の大きな女の人が
うんうん唸って苦しそうだ。
「急に妻が。」女の人の手を握っていた男の人が泣きそうな顔で先生を見上げた。
「大丈夫。ぼくに任せて。」
先生はカバンから聴診器を取りだすと
女の人のお腹に当てて
「いい子だね。出たいのもう少し待ってね。お母さんもがんばっているからね。」
優しい声がする。
「次の駅に救急車の手配をしてください。
大丈夫、まだもう少し時間はあります。」
落ち着いた声に車掌さんがキビキビ動いた。
先生の聴診器は何でも分かる魔法の道具だ。
「一緒に行くから安心してね。」
先生は男の人の肩に手をあててそう言って頷いた。
その日の夜、元気な赤ちゃんが生まれた。
お母さんも赤ちゃんも元気いっぱいだ。
産声が聞こえてきた頃、
病院の近くの立ち食いそば屋に先生はいた。
「信州まで来たかいがあった。
あぁ、美味しかった。」
先生は優しい奥さんに蕎麦をお土産に買うと足取り軽く家路へ着いた。
「ただいま。」
深夜遅く先生は家のドアを開けると
「今日も、ご苦労さまでした。」
奥さんは笑顔で先生と黒いカバンにそう言った。
プロポーズの言葉は
「僕は名医になれなくても、良医にならなれると思うんだ。」
答えに奥さんは先生に大きな黒いカバンを
贈った。
先生と黒いカバンはいつも一緒だ。
カバンを持っている。
先生のカバンには
不思議が沢山つまっている。
今日も先生はカバンと一緒に
電車に乗って出かけてゆく。
「今日は大好物のそばを食べに
信州まで行くんだ。」
先生は上機嫌。
街を過ぎて、山々が遠くに見える。
もうすぐ、信州だ。
その時。
『お客様の中に、どなたかお医者様はいらっいませんか?』
車掌さんの声が車内に響いた。
先生はニコニコ顔から急に真面目になって
立ち上がった。
「はい。急患なら僕がみましょう。」
先生は困った人の所に駆けつけた。
お腹の大きな女の人が
うんうん唸って苦しそうだ。
「急に妻が。」女の人の手を握っていた男の人が泣きそうな顔で先生を見上げた。
「大丈夫。ぼくに任せて。」
先生はカバンから聴診器を取りだすと
女の人のお腹に当てて
「いい子だね。出たいのもう少し待ってね。お母さんもがんばっているからね。」
優しい声がする。
「次の駅に救急車の手配をしてください。
大丈夫、まだもう少し時間はあります。」
落ち着いた声に車掌さんがキビキビ動いた。
先生の聴診器は何でも分かる魔法の道具だ。
「一緒に行くから安心してね。」
先生は男の人の肩に手をあててそう言って頷いた。
その日の夜、元気な赤ちゃんが生まれた。
お母さんも赤ちゃんも元気いっぱいだ。
産声が聞こえてきた頃、
病院の近くの立ち食いそば屋に先生はいた。
「信州まで来たかいがあった。
あぁ、美味しかった。」
先生は優しい奥さんに蕎麦をお土産に買うと足取り軽く家路へ着いた。
「ただいま。」
深夜遅く先生は家のドアを開けると
「今日も、ご苦労さまでした。」
奥さんは笑顔で先生と黒いカバンにそう言った。
プロポーズの言葉は
「僕は名医になれなくても、良医にならなれると思うんだ。」
答えに奥さんは先生に大きな黒いカバンを
贈った。
先生と黒いカバンはいつも一緒だ。
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