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第2章 矢作、村を出る?!

自重の意味を今こそ問いたい!!

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『お主の言う事は分かるが、まだ手出しは無用だ。』

下げたままの自分の顔が歪むのが分かる。
何でも、国のため。それは納得している。
父に猛反対された【入隊】を決めた時から自分の身はこの国に捧げたつもりだ。

しかし、これは違う。
隊長が初めて見せた安堵の姿が胸にいつまでも残っている。

東の辺境が崩れそうだ。

その噂は他国まで流れる程深刻だった。
実際は崩壊寸前だったのだが、今やこの国一番の安全地帯になったのだ。

全ては矢作様のおかげだ。

『しかし、惜しい。矢作とやらが作った【純水】があればこの国に巣食う闇を払えたものを。』

そうではない。そんな単純な事ではないのだ。そう言えるはずもなく。
ただ、胸の奥にチクリと痛みが走る。
遥か昔、忘れたはずの人としての何かが僅かに動くのを感じた。


『そこはお主達が上手く誘き出すのだ。矢作を上手く使え。そしてこの国に巣食う膿を全て吐き出させよ。それまで矢作に対する手出しは最小限で良い。』
『御意』


顔を上げることなく、そのまま退出してゆくキセを見送る王の表情は暗い。

『予言は真実なのか、本当にその時が来るのか。あぁ、どうか…』
僅かな独り言は、そのまま誰の耳にもとどかない。

そして、大きく豪華絢爛な部屋には冷たい沈黙が流れた。



***報告 A  ・ B ・C  より***

A『報告致します。』

キセ『それで村はどうなったのだ?矢作様方はどうされている?』

A『はい。今は村の立て直しをされています。』

キセ『馬車の改造をしたと聞いたが?』

B『改造は完成しました。草薙殿とコルバ殿達の協力のもと全く揺れのない画期的な馬車の完成です。』

キセ『。。。』

C『馬車の改造は既に首都の商会始め、五大会議の皆様も情報を把握されています。ただ、草薙殿の情報の拡散はありません。』

キセ『矢作様だけでも頭が痛いのに、倍になったな。』

A『矢作様から叱責を受けたと聞きます。
あまり急な技術向上は危険だと。』

キセ『。。矢作様が言われたか。。』

B『はい。たいちょ…元隊長が矢作様にだけは言われたくない言葉だとつっこんでおられました。』

キセ『矢作様には通じまい。』

A『はい。全く通じておりませんでした。
草薙殿から激しい反論もナンノソノ。そのままお説教は続きました。』

キセ『王から言質は取った。専売特許としての売り出しをラッセル殿の所属する商会に任せるそうだ。その商会に王家の後ろ盾を与えると。』

A『なるほど。今の首都にあるジーラン商会への牽制ですか。』

キセ『ふふふ。そんな事よりも他の動きはどうだ?矢作様の立て直しは具体的にどのように進んでいるのだ?』

A『はい、しっかりをされています』
B『お前それを言うならしっくくだよ。』
C『はぁぁ、馬鹿だな。本当の名前は、しっくいだよ。』

キセ『お前達、いったいなんの事だ?村の事を聞いたのだぞ。しっくいとは、なんの事だ?』

A『おほん。失礼しました。
しっくいとは家の壁の事です。矢作様が提案した簡易で高性能な新たな壁作りの事です。
それを移動村の人達を呼び寄せて、村人たちを指導しつつ、村中の家の建て直しが始まっています。ま、と言うか始まったと思ったら、あっという間にほぼ、完成に近いのですが。。。』

キセ『ふむ。またもや矢作様の通常運転な訳だな。では村人達の健康状態はどうした?』

B『ほぼ健康状態が回復したようです。ただその途端、新たな動きがありました。
矢作様の指導のもと、身体に良いララじ体操をしております。変わった動きで歌いながら踊っております。』
C『それを言うならラジオたいしょうだ。』
A『ラジオたいそう』

キセ『名称はよい。それでどうなったのだ?』

B『聞き取り難い言語なので、お許しください。
その体操と野草からの栄養補給。そして完治した者から即労働。今は村中で、マツリの準備しております。』

キセ『マツリとは?新たな動きか?もしやまた草薙殿が何か発明されたか?!』

C『ご安心ください。草薙様は矢作様のご下命により超チチ作りをしております。』
A『提灯だ!!』
C『。。おほん。ええと、失礼しました。提灯もまた、新たな簡易な明かりです。矢作様曰く、危険な点もあるので室内での利用は良くないとの事。』

キセ『明かり作りをして、夜でも作業をする予定なのか?』

B『いいえ。提灯こそマツリのための準備です。それにマツリを盛り上げる為にチラシも大量に作成し、ラッセル様が隣町である【ゴート】に配布されている様です。』

キセ『分かりにくな。まずはマツリの目的と内容を報告せよ。
Aが代表して話せ。』

A『はい。まず目的は、即収入を得る方法として催しをするとの事です。その催しの名が【マツリ】です。
【マツリ】とは村中を提灯で飾り賑やかにして人を集める目的で行います。
そして屋台で料理を売り出します。それは野草の利用方法を広めると同時に人材募集をかける為との事です。人材募集では護衛を雇う予定だと言われました。』

キセ『熊よけがあるじゃないか?あれは野獣も裸足で逃げ出す目鼻を潰される劇薬。
野盗対策には、既に杭を立てるべく木材の提供をされていたはずでは?』

A『外縁は既に完成しております。
その外側には大きな掘りも完成しました。また、井戸の補修や水源も確保済。
女性達には、何やら植物からふわふわしたものを取り出して作業させてました。』
B『それについては私が。服作りだそうです。まずは糸つむぎだと。ハタンオリとか言う機械を鍛冶師殿に依頼されて設計図を草薙殿に一任。
草薙殿のうめき声が日々、上達。おかげでかなりヌーヤ語の習得が進んでおります。』

キセ『この村は首都へ行くための寄り道だったはずでは?』

C『村の立て直しを、した後に出発の予定です。今のところ…。』

A『立て直しではなく、これでは村作りでは。。。とジル様がお聞きしたら』

キセ『矢作様はなんと?』

A『大丈夫。ちゃんと自重してるから…と。



キセ『。。。それは…。。。
報告は以上だな。
では、お前たちはこの後も引き続き矢作様方の警護と見守りをせよ。』

矢作語録(諜報部隊作成)
自重🟰常識をぶち壊す事

追記  気にしたら負け



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