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第2章 矢作、村を出る?!

先輩は何処にいても変わらない?!***草薙視点***

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「頭が爆発するーー!!」
叫ぶ俺に全く動じることなく、先輩は通常運転中。

『ちゃんとこの国の言語で話せ。』

そう。
この世界に飛ばされてから、ずっーと勉強中の俺。

異世界転移だぞ!!
ファンタジーの定番。今では深夜枠のアニメの全ては異世界モノだと言われているのに、なんで『勉強』なんだーー!!

いつも見てた異世界モノに自分がなったら。オタクなら何度も夢見るスチュエーションだけど、現実は厳しい。

通じない言葉
見た事ない大柄な人々は、戦い慣れた猛者だらけ。

ココは安全な日本じゃない。

何度も見た漫画のセリフが、自分の身になれば全く違う意味になる。

怖い。
食べ慣れない食品。
使えないスマホ。

テレビや漫画のない世界なんて考えたこと無かった。来週のワン○ースが気になるし、ボーナスはあと3日後だった。

そんなザリザリする心の中なんてお構い無しに、先輩からの一言。

「勉強するぞ。」

そうだった。
入社して1番初めの研修で、世話役だった先輩は柔らかい声の優しそうな人。
そんな第一印象だと、我が班の全員が思った。

「やり直し」

何を提出しても、突き返されるレポート。
質問には親切なのに、あまりの厳しさに付いたアダ名は「リトライ鬼」。

うっっ。今思い出しても涙が。

でも、研修後配置された場所で我が班は全員が創設以来の高成績を修めた(新入社員としてだけど…他の記録は無論先輩だ。)
そして、自分達に付いた実力の理由が、先輩のおかげだと分かったのは、数年後。

辛さが感謝を忘れさせたあの研修。

リトライ鬼の復活とは。異世界より厳し現実がコレ。

やっとカタコトで通じたら『旅に出る』

この世界は村の外に出れば、命の保証は無い。怖い。本当にビビってた。


なのに…何コレ?
旅に出て1晩目の野宿だよね、今。


「なんだお前、ドラム缶風呂知らないのか?」

いや、知ってますけど。ほら、「とっ○どーー」とか叫ぶ芸人さんが良く入ってたし。

『素晴らしいです。さすが矢作さん。』
そう言ってドラム缶風呂の中で寛ぐ超ド級のハンサム。

そう、この人がリーダーだ。
だけど、ツッコミどころはソコじゃない。

「先輩、この匂いって。」
そう、普通のドラム缶風呂ではない。
ま、先輩に普通なんて求めるのはとうの昔に諦めた。

「ドクダミだよ。」

野宿の準備を皆がしている時に、雑草抜いてたと思ったらドクダミ。

「じゃあ、干してるのもドクダミですか?まさかあのお茶作るんじゃ…」

「それは既に持ってる。あれはヨモギ。そんな事より草薙。お前言葉はどうした?!
あんなに勉強したのに。今夜も勉強な。」
ゾクッ。先輩の目は本気だ。
今夜も徹夜かもしれない。

「昼間は馬車で寝れるんだ。徹夜も大丈夫。」
心も読むリトライ鬼…怖し!!

『矢作さん、このお茶凄く美味しいですね』
村長さんが感激して飲んでるのは、先輩作
【生姜湯】。但し蜂蜜はない。

『これを入れるともっと美味しくなりますよ。』感激する村長のコップに入れたのは、えっ?砂糖?

この世界では砂糖始め甘味は高級食材だと聞いたのに。

『あ、甘い?!矢作さんコレをどこで?』

『これ、テンサイです。』

テンサイ?!まさか砂糖の原料の野菜のアレか。異世界でも先輩の食べ物に対する嗅覚はスゴすぎる。

火を囲んでいても、冷え込むその夜は生姜効果で徹夜の勉強も耐えられた。

でも、徹夜もリトライ鬼も耐えられるその本当の理由はコレだ。

草から作った紙は、ガサガサで書きづらい。ゴワゴワの紙をまとめてノートにするのも手間どころじゃない。

【ヌーヤ語翻訳本】

異世界転移特典のある先輩は、ヌーヤ語など読み書きも全く問題無い。
この世界に来てまだ数ヶ月のはずだ。

でも、この手書きのノートは単語も文法も分かりやすくまとめてある。
他に見る者もいないのに、なぜ?

呟きのように出た俺の言葉に先輩はいつもと変わらぬ淡々とした声で答えた。

『備えあれば憂いなし、だよ。』

変わらない。
何処にいても、何の立場でも万全を期す。

やっぱり勉強するしかない。
俺のために、今夜も完徹する先輩の為にも。

『やり直し』
ヌーヤ語で1番始めに覚えた言葉が今夜も響く。

グッホホホ。

不気味な鳥の声が響く森の中で、俺たちの長い一日目の夜が更けていった。

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