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第1章 ココどこですか?

ヤマタノオロチ作戦は…結果は予想外の方向に?!

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ヤマタノオロチ。
日本の有名な神話である。

ヤマタノオロチを退治する為に必要なのは、
瓶とお酒。

と、言うことで
試行錯誤の瓶の登場である。

焼き物甘く見ていたと悟った3ヶ月前。
土があれば出来るものじゃない。
だいたい、焼きあがっても直ぐに割れてしまうものが多い。

いや、出来上がる前に割れるのも多い。

しかし、時間はあった。
残業も無い、課長の尻拭いも部下のフォローも無いのだ。
これは夢の待遇かもしれないと開き直ったのが良かったのかもしれない。

瓶は出来た。

さて、問題はお酒だ。
俺は飲まない。あんなに高額の水分は必要ない。水道と言う素晴らしい水分があるのだから他の物は必要なかったのだ。

しかし、売り物となれば違う。
手土産、接待。名前は違えどお客様に喜ばれるもの1つのだ。

商売をするなら1つのは欲しい。

こっちも苦労した。
そこで活躍したのがコレだ!

収納庫ミニLv2.5

実は収納庫が二つに分かれたのだ。
3ヶ月前、突然である。

収納庫ミニの性能は

時間経過あり
収納毎に温度管理あり
収納容量  10t
品数制限無し

この【時間経過あり】が良かったのだ。

熟成等がスムーズに進んだのだ。

作ったのは【芋焼酎】

麹作りには欠かせない
温度管理もあるとは、電子レンジかと思った。

居酒屋でバイトしていた時代、オヤジ達がいつも頼んでいたメニューが芋焼酎。
少し臭いが癖になると呟いていた。
(ま、酔っ払って管を巻いてたとも言うが)

誘き寄せる準備は出来た。

問題はラッセルさんを1人だけ呼び出す方法だ。

そこで登場するのがこれだ。

【眠り草】

あの場所で手に入れたのだが、数種類ある。その内の1番弱いタイプを使う事にする。とにかく、睡眠薬っぽい薬草は扱いが難しい。
後は、家中にこの薬草の煙を充満させて、彼だけ起こせば良い。

少々荒っぽいが待ったナシなのだ。
村長から聞く圧倒的資材不足の被害はこの国全土に及んでいるばかりか、他国でも同じ事が、起きているらしい。

飢えはダメだ。
絶対に許せない。

だから、なるべく早く解決したいのだ。


皆が寝静まった深夜、台所に侵入して
口に布を巻いて、薬草を燻す。

【はぁ、お前の作戦とやらが上手くいくとは思えないが協力はしてやろう。】
どこでも出入り自由のキョウの特性は今、(初めて)生きた!

【むっ。まあツッコむのも疲れた。やって来る】

背中に燻した(覚ました)薬草を括り付けられたキョウは各部屋へと。

効力発揮まで5分くらいか。

30分後にラッセルさんの泊まっている部屋に起こしに行く前に、焼酎のお湯割りとツマミを作成する。

大根の味噌漬け
キノコの炒め物
ほうれん草の胡麻和え

台所で夢中で用意していた俺は、その様子を誰かが見ていた事に気づかなかった。


【貴様、誰だ!!】
帰ってきたキョウの大声にビクッとして振り返って作戦の失敗を悟った。

眠ったはずの家の中の人でない。
何ならラッセルさんと一緒に来た好青年でもない。


全く見知らぬ黒装束の人がいたからだ。


『用があるのだ。ジルが(好青年の名前)避けられていたので接触出来ずにいたが、家中が寝静まった今なら私でも接触出来る好機とみたのだ。』

自滅。

何やってるんだ、俺。
焦るとろくな事ないのは何度も痛い目みて知っていたのにまた、やってしまった。

『さぁ、少し付き合って貰おう。』

大柄で強そうな黒装束がこちらに手を伸ばしてきた。

武力とか、戦いとか全然無理。
逃げれる感じがしない。
じわっと手に汗が滲む。チラッと出口の扉を見た瞬間。

つ、掴まれた!!

い、痛い!!
結構強く握っているせいか痛い。

その時【貴様、コヤツに何をする!!】
黒装束をキョウが吹っ飛ばした。

小型犬になるのがやっとだったキョウは今や象くらいの大きさだ。

倒れた黒装束が武器を手にこちらを睨んでいた。

一触即発。

息を飲む。
俺に出来ることも無く、ただ見つめていたら思いもよらぬ仲裁が現れた。

『よせ。勝手な行動を厳禁のはずだぞ。
しかし、【眠り草】とは些か貴方様を甘く見ておりました。
こちらに敵意はありません。どうか神狼様のお怒りをお解き下さい。』

好青年?!
眠ってなかったのか!!
しかし…
今は精悍な表情で、全く印象が違う。
こういうタイプは手強いタイプだ。

『よいか。コヤツに手を出せば私が黙っていない。それを忘れるな。』
威厳のある低い声でそう言い終えたキョウがその場から消えた。

耳の中で微かに『力を使い過ぎた。暫く現れぬ。』と。

俺のために踏ん張ってくれたのか。
少し胸が温かくなった。

好青年の後ろに下がった黒装束は武装を解いていた。

『これは美味しそうな匂いだ。ラッセルさんをお誘いになる所だったのですね。
だとすれば、私は失敗した訳だ。貴方から警戒心を取り除けなかったのだから。』

傍の椅子に座りながら、こちらにも座るように促す。やっぱりうん臭い感じがする好青年だな。

作戦失敗したけれど、改めて正体を探るチャンスと捉えるべきだ。誰も寝静まった今だからこそ。

『あなた方は誰ですか?目的は?』

『我々は諜報部隊です。あっ、私の直属の上司はこの国の王様ですよ。』

あっ、サラッとロクでもない話が混じってる。

諜報部隊
王様

庶民の味方にはなりそうにない響きだ。
しかも、好青年は偉い人だった。
舌が何枚もありそうだ。

『そうそう。目的は貴方です。』

俺の敵、が正解か。

『いいえ、私は貴方様の敵ではありません。
正直に話せば、お力添えをお願いしたいのです。今国は枯渇しかけている。待ったナシの状況に貴方が現れた。神狼様と共に。
吉兆に手を伸ばす。
溺れる我々の切なる願いです。』

最後の方だけ、少し目を伏せて切なげな様子に好青年の素顔が見えた気がした。

油断は禁物。

でも

『飢えはダメです。
その為の協力なら、させて頂きます。』

真っ直ぐ目を見て、俺はそう答えた。

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