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第1章 ココどこですか?

第1村人との遭遇は理解の外だった。

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ふーふーふー。
ふーふーふー。

生暖か息をかけるばかりで、一向に何もしない熊に焦れた俺は整った息で反撃に出る事にした。

『いったい何の用だ?食いたいのではないのか?息をかけるだけとか、獣としての矜恃はどこにいったのだ!』

久しぶりの怒声。
あんまり、久しぶりだから大きさ間違えた。

木霊まで、聞こえる。
山頂でもないのにな。

ん?
何だ?!

熊が目の前で蹲っている?!
その上震えて『*2♪・÷』小声で何か繰り返しているし。

『おい、熊。何を言っているか俺には分からない。食べないのか?』

腹は減ってないのか。
野生の動物は、不要な狩りはしないと聞いた事がある。ものすごく共感したものだ。
無駄🟰良くない
これは大事な事だからだ。

『おぉ、やっと復活出来たら面白い事になってるな。はっ?何だと…そうだとも!!私は逃げてなどいない!!少し力を使い過ぎて形を保てなかっただけだ。
そうだ、今はお前の耳の中にいる。暫くはこのままだ。』

大事な時に役に立たない。
やっぱり青木課長だな。

『お前、今良からぬ事を考えただろう。最近はそのうん臭い無表情の裏側を読み取れるようになったのだぞ!!』

こう言う時は無視するに限る。まだ何やらブツブツ言っているが、俺の方もようやく立ち上がる力が回復したばかりだ。
キョウとそんな話をいつも通りしていて、熊の方を見たら。

熊が倒れていた。

えっ!!

マジか。

熊って神狼に弱いのだな?

『バカもの!!私の姿や声などこの者に感じるはずはないだろう!!!
お前の姿が怖すぎて倒れたのだ。』

はっ???
俺が熊を気絶させる姿だと。

『自覚がないのか。お前の無表情、かなり怖いぞ。それとこの者は野獣とかではない。この世界の住民だ。』

失礼な神狼だな。
でも、問題はない。
熊の危険が去ったのだから、まずはこの場所の調査をしなくては。

森の中など、資源の宝庫だ。
俺の収納庫が活躍しない訳にはいかない。

しゃがみこんで、調査を始めた俺の耳の中でまたもやキョウの叫びが木霊する。

『倒れた第1村人を、そのままに調査するとか。お前には異世界へのリスペクトが足りないーーー!!』


***  ベン視点(矢作にとって熊)***

その日は朝からおかしかった。
森の守り人をしている我々にとって、予感は大切な神様からの啓示だ。

『森に行ってくる。』

その一言が家族に異常なる緊張感を齎した。

『それしか方法はないの?』
切なげな妻の声に静かに頷く。

『役目を果たすのが長の責務だ。』

まだ早朝で子供たちは寝ている。
それで良い。

私は妻の方を振り返ること無く、家の扉を開けた。

【東方の森】

許さざる者の侵入を排除する。

森ならば当然の理。
呼ばれたからと許されるとは限らない。
父も祖父も。

森へ行ったまま帰らなかったのだから。

許される森の入り口付近から、1歩奥へと進むと木々の大きさは空を隠す程となり、獣道すら微かにあるのみ。

慎重に奥へと進んでいたその時!!


ごぉぉぉぉぉ。

竜巻の様な物凄い風が辺り一面を吹き荒れ、轟音が耳に直撃して鼓膜が痛む。
しがみついた大木がギシシギシシと軋む音を立てていたがしがみつく他に出来ることは無い。
必死の思いでしがみついたが、終わるのも呆気なく一瞬だった。

あれ程の竜巻に周りの木々が根こそぎ無くなり、深き森の中に少しの空き地を作っていた。

空が見える。

驚いた私の目の前が突然、歪んだ。


そして、そこには居たのは

私の人生を…いや、この森を根底から変える1人の人物だった。
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