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第1章 ココどこですか?

【死んだフリ】ってアリなのか?!

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キョウの知識はさすが自称でも神狼を名乗る程の優れものだった。
聞きたいことが満載だが、街へ進む努力を見せないと拗ねるからめんどく。。いや、気難しい神狼だ。

仕方なく、1日に1キロ程進めば質問に答えてくれると言う約束したが圧倒的に時間が足りない。
本物の第1村人と出会うまでには、しなければならない事が沢山あるのだ。自慢ではないが文無しになった経験ならある。
しかし、あの時は子供だった。まだ保護という名目があり生き延びる手段も豊富だったのだ。

それがこの歳になってからの文無しはキツい。正直、収納庫に貯めているモノとて何処までお金になるか分からない。
キョウもイマイチ市井の実態は分かっていなかったからな。

しかし、それでも3ヶ月が限度だったようだ。さしもの青木課長とて我慢が爆発した後のフォローは大変だった。
本気で怒らせては協力は得られない。唯一の味方なのだから。まぁ、少し疑念の余地はあるけれど今はキョウだけが頼りだ。

『矢作!!ようやく出口が見えてきたぞ。
お前のノロマには本当は手間取ったが今こそ、その成果を見せる時が来たのだ!!』

肩に乗るようになったキョウは、今では手のひらサイズが当たり前だ。大きくなるのは力を使うらしく滅多にしない(まぁ、俺が本気で怒らせた時だけだな。)

出口と言うだけあって、薄桃色の幕のようなものに覆われていた。

『ここを破ってもいいのか?怒られないか、上司とかに。』
『ふふふ、無知はこれだから困る。出口を作る方法を知らない訳がないだろう。』
『なるほど。上司も了承済みなのだな。なら安心だ。』
『お前ごときが心配する必要はない!!もちろん、上司も了承済だ。』

マジでチョロい。
何時だったか、上司🟰神様の事を聞いたらめっちゃくちゃ怒って暫く手をつけられないくらいだったのに。
あっさり口を滑らしたぞ。

絶対、上司に信用されてないクチだな。

『おい!!世紀の瞬間を見逃すなよ。
この先に進めばここにはもう戻れないのだからな!!』

『分かった。緊張して待っていよう。』
顔を引き締める俺を見て、満足そうなキョウが何やらブツブツと呟き始めた。

〚開門なる詔を捧げ、神使なる身の新たなる力となりぬ〛

時折、キョウの話す言葉は意味が分からない。正確には意味は分かるけれどその真意を考えようとすると言葉が頭の中でハジケて消える。

恐らく何かのLvが足りないのだろう。

そんな事を考えていたら、キョウの口から青い炎が薄桃色の膜に向かって放たれた。

肩から突然放たれた青い炎は、何故か暑くもなく冷たくもない。しかし、さすがの強心臓の俺でもドキッとした。

イキナリは無茶過ぎる。

暫く、すると炎の場所から膜が溶け始め向こう側が見えてきた。
目を凝らして、向こうを除くと大きな木々が見える。

森の中という感じだな。
まあ、いきなり青い炎から人が現れたらびっくりされるからな。

久しぶりに見る緑の木々に和んでいると
キョウが炎を収めて叫んだ。

『走れよ!!溶けている間しか脱出出来ないんだぞ!!』

慌てて走り出した俺の目の前で膜がドンドン閉じていく。久しぶりのダッシュは心臓が、破れそうな程バクバクと脈をうったがとにかく懸命に走った。

でも、ま、膜が。。

その時、、ハックション!!

キョウのクシャミでチョロっと青い炎が出た。

少しだけ溶けたその隙に、必死に走り込む。


はーはーはーはーはー。


呼吸音しかしない。
心臓が壊れそうだ。

言いたい文句も緑の木々の上の青空の美しさも今は後回しだ。

とにかく、脱出は成功した。

と、思ったら。


『*☆$#%%%%☆○+×÷』


熊がこっちを見て叫んでいた。

えーっと、こっちでも【死んだフリ】とか有効ですかね。
いや、実際は逃げるしかないと聞いてるけど今は動けないので本当はコレしか手がないのだけど。

荒ぶる息を潜めて目を閉じていると

ふーふーふー。

頬に息がかかる。
生暖かな息に今度こそ真剣に息を止めた。

ツンツン。
鋭い爪が頬を突く。

痛っ。血が出るヤツだな。
キョウの気配もない。

これは

やっぱり。。詰んだのか。




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