俺の拾い主

ちかず

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変装とは、バレない為にするはずなのだが。

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小道具は、あの日も役に立った。
包囲網から逃れるには遠くを目指さない事だと。逃げようとする気配そのものがプロにはバレるのだと。

日和ちゃんに近所の幼稚園の制服を着せる。公立幼稚園のソレは派手な黄色にヒヨコの付いたこの辺りの子供達のトーレドマークとも言える姿だ。近くの団地の影響でマンモスな幼稚園生が周りを歩いている。隣にいるのがサラリーマンでなければ大丈夫。

空き地の町会の物置に隠した衣装は少し肥料の匂いがするがそれよりも昨日の脱毛を膝上までするべきだった。ロングスカートとは言えヒラヒラするたびにドキリとする。女装は2回目だが慣れない。
訓練所でも女装での合格点はほぼ無い。内股にし過ぎると繰り返し注意をした先輩はもう居ない。やるしか無いのだ。

目的地までは少し歩く。
こう言う場合は公共交通機関が良い。
地下にある駅のホームへ急ぐ俺たちの目の前にオカシナ集団が目に入る。
明らかに何か探す背広達。特に子供の顔を覗いている。

じわりと背中に汗が噴き出るもぎゅっと握られた日和ちゃんの手のひらから伝わる熱にハッとする。
アイツだ。
運転手…あの時顔を見られたに違いない。

「おい、そこのオバハン。ちょっとこっち向けよ。」

逸らす目線に気づかれたのか?
いや、誰彼なく声掛けしているようだ。
ゆっくり振り返り声色を作ろうとしたその時。

「ママ…」日和ちゃんがそう呟いてぎゅっと抱き着いてきた。不安な心持ちが出て身体が震えている。

致命的だが、もちろんソレは仕方ない。
こんな小さな子に演技など出来るはずもないのだから。

相手を殴り倒すと心に決めて振り向いたその時。

「探したよ、ミツコ!!」

俺を日和ちゃん毎抱きしめたいこの人物は誰だ?追手の興味を削ぐにはバッチリだったようだ。

新たな登場人物に見覚えはない。
更なる脂汗が背中を伝った。
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