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3話

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「ーーさぁ、復讐劇といきましょうかお姉様」

それを呟いた後に、アリシアは胸に手を当て深呼吸をする。

それから、ある一点だけを見つめてゆっくりと歩き出した。

「さぁ、僕と結ばれることを光栄に思うがいい。僕も君と結ばれるこの幸せを噛み締めるよ」

アリシアに手を差し出しながら元婚約者は言う。

何故だか私はそれにゾッとした。

大切な実な妹に対してそんな発言をしているからだろうか。

いいえ、既に嫌いになってしまった人だからかもしれない。

「はい。その前に皆さんに知って貰うべきことがございます」

「アリシア……?」

不思議そうに見つめている彼がなんだか可哀想に思える。

おそらく妹は何かしらの証拠をもとに彼をこの場で……。


アリシアは腹の底から大きな声で告げる。


「ご無礼、失礼を承知の上で告げさせていたたきます! この男は! 市民に数々の乱暴を働き、女性を喰い物にし、しまいには巷を騒がせているよからぬ集団を束ねていたことが発覚しました!! 私はこの日まで男の正体を暴くべく、それだけのために生きてきました」


「「「な、なんと!」」」

会場がざわめく。


「証拠はあるのかね??」

この場で最も位の高い存在、アルタ様の父が問う。


「はい。これを」

書物を護衛に渡す。


「な、アリシア! なんてことを!! 何を言ってるんだ! お前!!!」

一方でアルタ様といえば慌てふためいて、殴る勢いでアリシアに突っかかろうとするのを近くにいた参列者に抑え込まれている。

しばらくして、ことはおさまった。

会場中の全員が彼の悪行を理解したのだ。アリシアの持っていた証拠のおかげで。

でも、アルタ様がそんなことをしていたなんて私も知らなかった。

もしこれが本当だとすると、彼を嫌いになったどころでは済まない。許せない苛立ちが底から湧き出そうになる。


「えええええい! 貴様など息子でもなんでもないわ! 今すぐここを去れ!愚民が! 誰かコイツを追放しろ! 飯も与えるな! 即刻牢屋行きだ!」


「そ、そんなお父様……! 何かの勘違いです。僕がそんなことするわけ」


「お前ならしないとも言い切れん。私がずっと近くで見てきたんだ。それくらいわかるわ!」

「お父様……」





**************************


「あ~ほんとすごい一日だったわね。アリシア」

「ええ。お姉様。驚かせてしまってすみません」


後々聞いたのだけれど、アルタ様は本当に数々の悪行を繰り返していたのは事実。

そして、それに便乗してアリシアは他の事件などの犯人も彼に仕立て上げたというわけだ。

味方だからよかったものの、私の妹は敵に回すと世界一恐ろしい人物かもしれない。


だけど、心が晴れたのも事実。

正直、濡れ衣を着せるのはいかがなものかと思うけれど、アリシアは私を思ってやってくれたわけだし、それに彼のやってきた行動は許せる範疇にないことばかりだった。むしろ今は、婚約破棄されて幸せだったと思える。


「これからもお姉様を支えて参ります」

「ええ。アリシア……少しやり過ぎだったけどね」

「すみません……」


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