2 / 6
2
しおりを挟む
私、ジュリエット・フォン・シュタインハイムは、婚約者だったシリル・フォン・ベルクハイト伯爵との婚約破棄の原因を知るべく、エドワード卿のもとを訪ねた。
彼は心なしかやるせない表情をしながらも親切に丁寧に語ってくれた。
そして私は彼の口から語られたその事実に衝撃を受けた。
そもそも彼は最初から私のことを愛していなかったというのだ。私が信じていた愛は、全て幻想にすぎなかったのだろうか。そんなことは思いたくもないが、でも腑に落ちてしまった。エドワード卿が全てを赤裸々に話してくれたおかげで、彼が私を利用する計画に納得したのだ。
「そういうことでしたのね……」
しばらくぼーっとして、静かな時間を過ごした。
「落ち着きましたかね? なんて訊くのは野暮かな。裏切られたという事実にジュリエットが落ち込むのは仕方がない。私も申し訳なく思うよ。立場上何もできなくてねぇ……。だから君にヒントをあげよう。その首にかけたペンダント。それはジュリエットのためにアンナが残したものだろう。彼女とはすごく親しい仲だったよ。優秀な魔法剣士だった」
「なるほど。よくご存知で……アンナお婆様は私の家系でも特殊な立場にいらっしゃいました。けれど、貴族としての地位以上に彼女の魔法剣士としての実力は確かなものだったと、聞いております」
「ああ、そのとおりだったよ。ーーそれが答えだ。魔法剣士になりなさいジュリエット」
私は婚約破棄をされたことによって、人生が暗転した気でしばらく過ごしてきた。
けれど、真実を知ったからこそ自由を手に入れられる。そんな気さえするようになった。
私は裏切られたのだ。ならばもう悩む必要はなかろう。
元婚約者に心を壊された私は、自分自身の幸福についてよく考えた。
それが今後の人生にとってなによりも大切なことになると確信していたからだ。
自分自身の運命を切り開くという意味でも、魔法剣士になることを決意した。
以前は、貴族の娘として生まれたことに誇りをもってさえいたけれど、今となってはそんなものお飾りに過ぎない。身分ではなく私は私自身を選んだ。
アンナお婆様のような素敵な方に私もなりたい。
その決意を胸に私は新たな人生に大きな一歩を踏み出すことにした。
自由と、そして自身の幸福を求めて。
彼は心なしかやるせない表情をしながらも親切に丁寧に語ってくれた。
そして私は彼の口から語られたその事実に衝撃を受けた。
そもそも彼は最初から私のことを愛していなかったというのだ。私が信じていた愛は、全て幻想にすぎなかったのだろうか。そんなことは思いたくもないが、でも腑に落ちてしまった。エドワード卿が全てを赤裸々に話してくれたおかげで、彼が私を利用する計画に納得したのだ。
「そういうことでしたのね……」
しばらくぼーっとして、静かな時間を過ごした。
「落ち着きましたかね? なんて訊くのは野暮かな。裏切られたという事実にジュリエットが落ち込むのは仕方がない。私も申し訳なく思うよ。立場上何もできなくてねぇ……。だから君にヒントをあげよう。その首にかけたペンダント。それはジュリエットのためにアンナが残したものだろう。彼女とはすごく親しい仲だったよ。優秀な魔法剣士だった」
「なるほど。よくご存知で……アンナお婆様は私の家系でも特殊な立場にいらっしゃいました。けれど、貴族としての地位以上に彼女の魔法剣士としての実力は確かなものだったと、聞いております」
「ああ、そのとおりだったよ。ーーそれが答えだ。魔法剣士になりなさいジュリエット」
私は婚約破棄をされたことによって、人生が暗転した気でしばらく過ごしてきた。
けれど、真実を知ったからこそ自由を手に入れられる。そんな気さえするようになった。
私は裏切られたのだ。ならばもう悩む必要はなかろう。
元婚約者に心を壊された私は、自分自身の幸福についてよく考えた。
それが今後の人生にとってなによりも大切なことになると確信していたからだ。
自分自身の運命を切り開くという意味でも、魔法剣士になることを決意した。
以前は、貴族の娘として生まれたことに誇りをもってさえいたけれど、今となってはそんなものお飾りに過ぎない。身分ではなく私は私自身を選んだ。
アンナお婆様のような素敵な方に私もなりたい。
その決意を胸に私は新たな人生に大きな一歩を踏み出すことにした。
自由と、そして自身の幸福を求めて。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説

【完結】『婚約破棄』婚約者のバカ王子に魔法の才能を盗まれた私は、物理(拳)で復讐する。
地鶏
恋愛
私、アルファ・マリエットには国で随一の魔法の才能がありました。
けど……どういうわけか幼馴染で婚約者のバカ王子が私の寝室に忍び込んで、不思議な魔法具を使ったのです。その結果、私の魔法の才能は王子に移り、王子は国中からもてはやされる魔法使いに。
私? 魔法が使えなくなった私を……国は見捨てました。だけど、忘れていませんか?
私、あなた達の前で魔法を使ったこと無かったですよね?模擬戦をしてきた騎士団長も、あの恐ろしい魔物も、戦った時、私は一度も魔法を使っていませんよ?
全部物理(拳)でしたよね?忘れていませんか?
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?
水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。
メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。
そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。
しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。
そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。
メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。
婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。
そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。
※小説家になろうでも掲載しています。
【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」
***
ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。
しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。
――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。
今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。
それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。
これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。
そんな復讐と解放と恋の物語。
◇ ◆ ◇
※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。
さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。
カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。
※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。
選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。
※表紙絵はフリー素材を拝借しました。

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない
金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ!
小説家になろうにも書いてます。

乳だけ立派なバカ女に婚約者の王太子を奪われました。別にそんなバカ男はいらないから復讐するつもりは無かったけど……
三葉 空
恋愛
「ごめん、シアラ。婚約破棄ってことで良いかな?」
ヘラヘラと情けない顔で言われる私は、公爵令嬢のシアラ・マークレイと申します。そして、私に婚約破棄を言い渡すのはこの国の王太子、ホリミック・ストラティス様です。
何でも話を聞く所によると、伯爵令嬢のマミ・ミューズレイに首ったけになってしまったそうな。お気持ちは分かります。あの女の乳のデカさは有名ですから。
えっ? もう既に男女の事を終えて、子供も出来てしまったと? 本当は後で国王と王妃が直々に詫びに来てくれるのだけど、手っ取り早く自分の口から伝えてしまいたかったですって? 本当に、自分勝手、ワガママなお方ですね。
正直、そちらから頼んで来ておいて、そんな一方的に婚約破棄を言い渡されたこと自体は腹が立ちますが、あなたという男に一切の未練はありません。なぜなら、あまりにもバカだから。
どうぞ、バカ同士でせいぜい幸せになって下さい。私は特に復讐するつもりはありませんから……と思っていたら、元王太子で、そのバカ王太子よりも有能なお兄様がご帰還されて、私を気に入って下さって……何だか、復讐できちゃいそうなんですけど?
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?
朱音ゆうひ
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。
何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!
と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど?
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる