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第二幕 あやかし兎の京都裏町、舞妓編 ~祇園に咲く真紅の紫陽花
45.四条大橋の決闘(3)
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アヤメさんが召喚した刀は、まるで悪鬼を切り裂く光明のようでした。
刀に詳しくない私にも分かる、あれは相当の代物に違いない。
「そうか……お前が持っていたか!」
ここまでずっと冷静だった義経さんが声を荒げています。
「天下五剣、鬼丸国綱。今は御物となっているはずだが、妖気からしてお前が持っているのが本物か。なあ、弁慶。千本目はアレで不服はあるまい」
「誠に、この数百年……待っていただけのことはあります。これ以上の業物と手合わせする機会は今後もないでしょう」
弁慶さんが棍棒を背に戻し、代わりに薙刀を構えました。
「これは岩融という。三草山、一ノ谷、壇ノ浦……数々の戦いを生き抜いた我が愛刀に不足はなし。夜叉姫よ、全力で相手してやろう」
「何でもいいよ。この刀を抜いて、負けたことがないからね」
アヤメさんが剣先を天に掲げた後に、
「此の天は他の所化を奪いて自ら娯楽す、他化自在、魔波旬六欲の頂に在りて別に宮殿有り。今因果経、自在天王を指し示すが是の如く――第六天魔王の御出ましだ!」
高らかな宣言と共に、剣先に一筋の稲妻が落ちました。それは禍々しい黒い炎となって――夜更けなのに黒を視認できるのは不思議なことですが、確かにアヤメさんが黒い炎に包まれているように見えたのです。
「さあ、かかってきなよ。来なかったらアタシから行くよ」
剣を腰に戻して抜刀の構えを見せます。下から斜めに斬り上げるつもりかな?
「……面白い……勝負は一撃で決する!」
対する弁慶さんは上段に構えています。こっちは真っすぐに振り下ろすようです。
再び、沈黙が包みました。
固唾を飲んで見守っていると、四条大橋を包むように笛の音が流れてきます。奏でているのは義経さんで、こんな緊張した場面なのに、なぜかとっても優しい音色。繊細で、美しく、笛の音に聞き惚れてしまって、眼前の決闘が遠い思い出のように感じられました。
そうして笛の音が、唐突に止みました。
ハッと我に返って、橋の上に固い物が落ちる音がして、既に二つ体は重なっていました。アヤメさんと弁慶さんが互いの武器を振り抜いた格好で接触しており、アヤメさんは抜刀した切っ先を弁慶さんの首筋に伸ばして、弁慶さんは既に薙刀を振り下ろしています。
まさか、どっちの刀も当たったの?
「見事だ……夜叉姫」
弁慶さんが右の肩を抑えました。よくよく見ればアヤメさんの刀が弁慶さんの首元で寸止めされている。それに薙刀の先がなくなっている。さっきの金属音は――薙刀の刃が橋の上に落ちた音だったのです。おそらくはアヤメさんの抜刀により、弁慶さんの武器が壊されてしまったのでしょう。
「アンタも強かったよ、弁慶さん。アタシよりも早く振り下ろしたんだから。けどね、ただ千人斬った刀と天下を目指した刀では背負った重みが違うのさ」
「はっはっは! 負けたか、そうか、負けたか!」
あまりの陽気な声に、すぐに誰が発したのか分かりませんでした。笑っているのは義経さんです。腹を抱えて、無邪気に笑っています。
「お前の背後に信長が見えた。ならば弁慶では相手が悪い。せめて同じ国盗りを目指した者として、信長の相手は俺がやるべきだった」
「だけど半分、霊体のあんたらじゃあ、どのみちこの刀とやり合うのはハンデがあるよ」
「なるほど、かもしれん。まあいい、負けは負けだ、約束通りにここは引き下がるとしよう。おい、弁慶、平気か?」
「御意」
義経さんに促されて、弁慶さんが何事もなかったように折れた薙刀を背中に片付けます。二人の表情には、さっきまでの殺気がまるでありません。決闘していたことが嘘のように穏やかな顔をしています。
そのまま二人が四条大橋から去りそうになったので、
「あ、あの、義経さん!」
張り詰めた空気が和んだのもあるし、ずっと疑問に感じていたことをちゃんと聞いておきたい。千載一遇のチャンスを逃してはならぬと、勇気を出して問いかけました。
「いったい何が目的だったのですか? どうして私達と敵対したのですか?」
「……五臓の顔を立ててやったと言ったろう」
「それは建前ですよね。その後、自らの意思で来たとおっしゃっていました。そもそも五臓さんに従っている様子が見受けられませんし、バクケンだって、義経さんとは思想が一致していないのに」
「ほう、思想が違うか。なぜそう思う?」
「だってバクケンは幕府復興で、義経さんのお兄さんが……」
あ、ヤバい。
ストレートに表現してしまった。
義経さんは幕府復権に興味がない、というのは真神さんから聞きました。鎌倉幕府を立ち上げたお兄さんに殺害されたのだから、幕府側の思想ではないだろうとの推測です。
「……失礼しました」
「別に構わん。千年も前だ、怒りはとっくに消え失せたし、そもそも兄を恨んではいない」
「では、幕府復興に興味があるのですか?」
「……幕府復興に全く興味がないわけではないが、どちらかと言えば五臓の政策と共通している。五臓は平安京を戻して京都に朝廷を復権させたいのだから」
あ、そうなんだ、知らなかった。
五臓さんの言う平安京って、首都を東京から京都に移したいだけかと思ったら、朝廷政治にしたいってことだったのか。
「公武合体、みたいなもんだろ」
アヤメさんが参加します。
「バクケンが裏町幕府を、五臓が朝廷を復活させて、仲良く手を取り合って近代政治に対抗しようってこった。ま、アタシの予想じゃ最終的には仲たがいしそうだけどね。どっちかが主権を取りたがるに決まってる」
「確かに、どっちも我が強そう……それで義経さんは朝廷復権を目的として五臓さんに味方して、バクケン側にも味方したと」
う~ん、そのわりに。
義経さんは、そこまで本気でやっていない感じがする。
いえ、敵対していたのは事実なのですけど。
五臓さんとはドライな関係っぽいし、何だかんだで私に危害は加えなかったし(怖かったけど)、義経さんは負けてないのにアッサリ引き下がるあたりに違和感が。
「キツネ娘、お前は思っていることが顔に出やすいな」
ドキッとして、思わず顔を撫でてしまった。
「アマモリとバクケンがやっているのも同じだ、ルールの中でやり合うから面白い。それを逸脱するのは詰まらん。今回の飛び入り参加は五臓への義理を果たしたのと、面白そうだった。俺たちは半分、霊体だからな、現世に姿を留めるには目的が必要だ。今夜の決闘は楽しかった、それで弁慶が負けた。だから約束通りに退くまでだ」
「ルールを守るって言うんならさ、ちゃんと鬼ごっこのルールも守ってくれよ」
アヤメさんが言及しているルールとは。
――脱落者は季節問わずに、鴨川で泳ぐべし。
「そうか、飛び入り参加なのだから例外ではない。では、飛び込むとするか、行くぞ、弁慶!」
「御意」
義経さんはひらりと舞って、弁慶さんは巨体をドスンと沈めるようにして、二人は四条大橋から鴨川へとダイブしました。あまりの決断の良さに私の理解が遅れてしまい、果たして水深は大丈夫なのか、裏町の鴨川はそこそこに深く、それなりに浅かったりして、平気なのかな。
「やったな、こいつ!」
橋の上から見下ろすと、もう二人は浅瀬まで泳いで楽しそうにバシャバシャと水を掛け合っています。まるで子供みたい。義経さんって、あんなに鋭くて危ない感じだったのに、いったいどういう性格?
「一つは片付いたね」
とりあえず義経さんの件は終わったので。
まだ残っているのは。
アヤメさんと、沖田さんについて!
「薫はん、アヤメはん!」
四条大橋の圏外から見守っていた音兎ちゃんが、パタパタと駆け寄ってきます。
「沖田はんが、気が付いたらおらんくなって」
え、あれ、本当だ。私達、三人しか残っていない。せっかく感動の再会になると思ったのに。
「いいよ、お互い認知したんだから、すぐ会えるさ。それよりも早く勾玉を持って行こう!」
二兎追うものは一兎も得ず。
アマモリの努力を無駄にするわけにはいきませんから、ここはアヤメさんの言う通り、先に今夜の決闘に終止符を打つ必要があります。沖田さんを探すのは後にして、私は勾玉を握りしめながら、四条大橋を渡った先にある決闘のゴール地点、八坂神社に向かって走りました。
刀に詳しくない私にも分かる、あれは相当の代物に違いない。
「そうか……お前が持っていたか!」
ここまでずっと冷静だった義経さんが声を荒げています。
「天下五剣、鬼丸国綱。今は御物となっているはずだが、妖気からしてお前が持っているのが本物か。なあ、弁慶。千本目はアレで不服はあるまい」
「誠に、この数百年……待っていただけのことはあります。これ以上の業物と手合わせする機会は今後もないでしょう」
弁慶さんが棍棒を背に戻し、代わりに薙刀を構えました。
「これは岩融という。三草山、一ノ谷、壇ノ浦……数々の戦いを生き抜いた我が愛刀に不足はなし。夜叉姫よ、全力で相手してやろう」
「何でもいいよ。この刀を抜いて、負けたことがないからね」
アヤメさんが剣先を天に掲げた後に、
「此の天は他の所化を奪いて自ら娯楽す、他化自在、魔波旬六欲の頂に在りて別に宮殿有り。今因果経、自在天王を指し示すが是の如く――第六天魔王の御出ましだ!」
高らかな宣言と共に、剣先に一筋の稲妻が落ちました。それは禍々しい黒い炎となって――夜更けなのに黒を視認できるのは不思議なことですが、確かにアヤメさんが黒い炎に包まれているように見えたのです。
「さあ、かかってきなよ。来なかったらアタシから行くよ」
剣を腰に戻して抜刀の構えを見せます。下から斜めに斬り上げるつもりかな?
「……面白い……勝負は一撃で決する!」
対する弁慶さんは上段に構えています。こっちは真っすぐに振り下ろすようです。
再び、沈黙が包みました。
固唾を飲んで見守っていると、四条大橋を包むように笛の音が流れてきます。奏でているのは義経さんで、こんな緊張した場面なのに、なぜかとっても優しい音色。繊細で、美しく、笛の音に聞き惚れてしまって、眼前の決闘が遠い思い出のように感じられました。
そうして笛の音が、唐突に止みました。
ハッと我に返って、橋の上に固い物が落ちる音がして、既に二つ体は重なっていました。アヤメさんと弁慶さんが互いの武器を振り抜いた格好で接触しており、アヤメさんは抜刀した切っ先を弁慶さんの首筋に伸ばして、弁慶さんは既に薙刀を振り下ろしています。
まさか、どっちの刀も当たったの?
「見事だ……夜叉姫」
弁慶さんが右の肩を抑えました。よくよく見ればアヤメさんの刀が弁慶さんの首元で寸止めされている。それに薙刀の先がなくなっている。さっきの金属音は――薙刀の刃が橋の上に落ちた音だったのです。おそらくはアヤメさんの抜刀により、弁慶さんの武器が壊されてしまったのでしょう。
「アンタも強かったよ、弁慶さん。アタシよりも早く振り下ろしたんだから。けどね、ただ千人斬った刀と天下を目指した刀では背負った重みが違うのさ」
「はっはっは! 負けたか、そうか、負けたか!」
あまりの陽気な声に、すぐに誰が発したのか分かりませんでした。笑っているのは義経さんです。腹を抱えて、無邪気に笑っています。
「お前の背後に信長が見えた。ならば弁慶では相手が悪い。せめて同じ国盗りを目指した者として、信長の相手は俺がやるべきだった」
「だけど半分、霊体のあんたらじゃあ、どのみちこの刀とやり合うのはハンデがあるよ」
「なるほど、かもしれん。まあいい、負けは負けだ、約束通りにここは引き下がるとしよう。おい、弁慶、平気か?」
「御意」
義経さんに促されて、弁慶さんが何事もなかったように折れた薙刀を背中に片付けます。二人の表情には、さっきまでの殺気がまるでありません。決闘していたことが嘘のように穏やかな顔をしています。
そのまま二人が四条大橋から去りそうになったので、
「あ、あの、義経さん!」
張り詰めた空気が和んだのもあるし、ずっと疑問に感じていたことをちゃんと聞いておきたい。千載一遇のチャンスを逃してはならぬと、勇気を出して問いかけました。
「いったい何が目的だったのですか? どうして私達と敵対したのですか?」
「……五臓の顔を立ててやったと言ったろう」
「それは建前ですよね。その後、自らの意思で来たとおっしゃっていました。そもそも五臓さんに従っている様子が見受けられませんし、バクケンだって、義経さんとは思想が一致していないのに」
「ほう、思想が違うか。なぜそう思う?」
「だってバクケンは幕府復興で、義経さんのお兄さんが……」
あ、ヤバい。
ストレートに表現してしまった。
義経さんは幕府復権に興味がない、というのは真神さんから聞きました。鎌倉幕府を立ち上げたお兄さんに殺害されたのだから、幕府側の思想ではないだろうとの推測です。
「……失礼しました」
「別に構わん。千年も前だ、怒りはとっくに消え失せたし、そもそも兄を恨んではいない」
「では、幕府復興に興味があるのですか?」
「……幕府復興に全く興味がないわけではないが、どちらかと言えば五臓の政策と共通している。五臓は平安京を戻して京都に朝廷を復権させたいのだから」
あ、そうなんだ、知らなかった。
五臓さんの言う平安京って、首都を東京から京都に移したいだけかと思ったら、朝廷政治にしたいってことだったのか。
「公武合体、みたいなもんだろ」
アヤメさんが参加します。
「バクケンが裏町幕府を、五臓が朝廷を復活させて、仲良く手を取り合って近代政治に対抗しようってこった。ま、アタシの予想じゃ最終的には仲たがいしそうだけどね。どっちかが主権を取りたがるに決まってる」
「確かに、どっちも我が強そう……それで義経さんは朝廷復権を目的として五臓さんに味方して、バクケン側にも味方したと」
う~ん、そのわりに。
義経さんは、そこまで本気でやっていない感じがする。
いえ、敵対していたのは事実なのですけど。
五臓さんとはドライな関係っぽいし、何だかんだで私に危害は加えなかったし(怖かったけど)、義経さんは負けてないのにアッサリ引き下がるあたりに違和感が。
「キツネ娘、お前は思っていることが顔に出やすいな」
ドキッとして、思わず顔を撫でてしまった。
「アマモリとバクケンがやっているのも同じだ、ルールの中でやり合うから面白い。それを逸脱するのは詰まらん。今回の飛び入り参加は五臓への義理を果たしたのと、面白そうだった。俺たちは半分、霊体だからな、現世に姿を留めるには目的が必要だ。今夜の決闘は楽しかった、それで弁慶が負けた。だから約束通りに退くまでだ」
「ルールを守るって言うんならさ、ちゃんと鬼ごっこのルールも守ってくれよ」
アヤメさんが言及しているルールとは。
――脱落者は季節問わずに、鴨川で泳ぐべし。
「そうか、飛び入り参加なのだから例外ではない。では、飛び込むとするか、行くぞ、弁慶!」
「御意」
義経さんはひらりと舞って、弁慶さんは巨体をドスンと沈めるようにして、二人は四条大橋から鴨川へとダイブしました。あまりの決断の良さに私の理解が遅れてしまい、果たして水深は大丈夫なのか、裏町の鴨川はそこそこに深く、それなりに浅かったりして、平気なのかな。
「やったな、こいつ!」
橋の上から見下ろすと、もう二人は浅瀬まで泳いで楽しそうにバシャバシャと水を掛け合っています。まるで子供みたい。義経さんって、あんなに鋭くて危ない感じだったのに、いったいどういう性格?
「一つは片付いたね」
とりあえず義経さんの件は終わったので。
まだ残っているのは。
アヤメさんと、沖田さんについて!
「薫はん、アヤメはん!」
四条大橋の圏外から見守っていた音兎ちゃんが、パタパタと駆け寄ってきます。
「沖田はんが、気が付いたらおらんくなって」
え、あれ、本当だ。私達、三人しか残っていない。せっかく感動の再会になると思ったのに。
「いいよ、お互い認知したんだから、すぐ会えるさ。それよりも早く勾玉を持って行こう!」
二兎追うものは一兎も得ず。
アマモリの努力を無駄にするわけにはいきませんから、ここはアヤメさんの言う通り、先に今夜の決闘に終止符を打つ必要があります。沖田さんを探すのは後にして、私は勾玉を握りしめながら、四条大橋を渡った先にある決闘のゴール地点、八坂神社に向かって走りました。
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