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11話 魔法使い伯爵の仕事
しおりを挟むそう言われ嬉しさを感じていると周りのドレスが気になった。
「このドレス達はどうしたのですか?」
「これは、他の領地の仕立て屋から私の遣いがもらってきた仕事だよ」
そう言うと彼は自分の領地の事を話してくれた。
「うちの領地はご存じかと思うが北の人知れずところに境界がある。君がいた大樹がそれにあたるんだけれど、うちの領地は賑わっているも私の父が亡くなって以降、魔法の発展が遅くなってしまった。
この領地には私みたいな魔法使いが生活している。
だから人間に見える遣いを君達みたいな人間のいる領地に派遣させて仕事を貰いにいくのさ。
例えばこれ・・」
そう言って真ん中にあるドレスを指差し
「南方の領地の令嬢のウェディングドレスだ。その町の仕立て屋が注文を受けたのだが、その御令嬢は理想が高いのか、ドレスに宝石の粉を使って欲しいと言い出した。町の仕立て屋にはその技術がなくて代わりに遣いがその注文を承って今私が仕上げている」
と聞いて
「え、あなたがですか?」
と驚いた。
「まあ、たまにはこんな事もある。承ったとはいえうちの仕立て屋だってこんな注文をつけられたらお手上げだったみたいだ」
と彼は手に持っていたメモを見せてくれると何項目にも渡る要望がメモにぎっしり書かれていた。
「まあ、結婚式ですもの。
花嫁は綺麗でいたいですものね」
とフォローした。
すると彼からは
「ルナ嬢の時はもっと綺麗なドレスを渡すよ」
と言われ顔が熱くなってしまった。
「ルナ嬢はおよしください」
と言うと
「じゃあルナ、僕の名前は覚えてる?」
と言われ答えられない。
そうしているとまた彼は笑い
「ノアだよ。ノア・ジャスパー・ウィンザード」
ノアでいいと言われ
「では、わたくしの事はルナと」
と改めて挨拶をする。
するとまたどこからかスフェーンが
「ヨロシク ヨロシク」と鳴いたので私達は笑い合った。
その日は広い一室に通され、その部屋を今日は使うよう言われた。
天蓋付きのベッドに金のびょうぶが付いた化粧棚、サイドにはバラが生けてあり我が家よりも立派な部屋に驚いた。
彼は「エヴァンズ家も広い屋敷だろう。謙遜することない」
と言われたが私の自室は出ていったメイドの空き部屋だったので苦い顔をしているしかなかった。
「いえ、こんな素敵な部屋を使えるなんて・・・。
ありがとうございます。ノア様」
とお礼を言うが
「様はやめてくれ。君は召使いじゃないだろう。ノアでいい。あと堅苦しい言葉も使っちゃダメだ」
と言われ困惑した。
言葉使いは淑女としての教育だったため、いくら彼の頼みでもなかなか直す事はできない。
「なるべく頑張ります。ノア」
と答えたが彼はやれやれ、まだルナには慣れが必要だねと言われた。
彼とおやすみの言葉を交わしたのちに寝巻きに着替え床に付いた。
今日は本当にいろんな事があった一日だった。
魔法使いの妻として嫁いで、お屋敷は立派だし、彼は仕事熱心でとても友好的でペットのカラスも賢い。
お母様と一緒に読んだ絵本よりも不思議な体験をしている気分だ。
「朝になったらエヴァンズ家に戻ってませんように・・・」
ベッドに横になりながら自分に驚く。
あんなに魔法使いを警戒していたのに・・・。
「不思議ね」
そう独り言を呟くと想像の中のお母様もそうねと笑っているだろうと感じた。
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