鳥籠令嬢は伯爵魔法使いに溺愛される

麻麻(あさあさ)

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10話 魔法使い伯爵とココア

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(あの人が魔法使い・・・)
てっきり魔法使いはミアの話していたように恐ろしい者ばかりと思っていた。

でも、彼は今まで出会ったどんな人よりも優しい人に思えた。

それこそお義母様やミア、そしてお父様よりも。

テーブルの上のディナーを一口食べる。

「美味しい」
温かい料理を口にしながら先程の夢を思い出した。

『ルナがもし彼らとお友達になったらママに会わせてね。約束よ』

お母様の言葉だ。

(お母様、魔法使いとお知り合いになれたわ。お友達じゃなくて)

婚約者としてだけども。

そう思い出すとなんだかとても彼に介抱してもらったかと思うと穴があったら入りたい気持ちになってきた。

(あの方は呆れてないわよね)
料理を食べ終わっても落ち着きは戻らなかった。

(私も彼にお礼がしたい)

そう思い何かできる事を探していると
カア!と鳴き声が聞こえた方を見ると倒れる前に会ったカラスが側にいる事に気が付いた。

「こんばんは」
と挨拶をするとカラスは
「コンバンワ コンバンワ」
と返事をする。

「彼が飼っている子なのかしら。すごいわ」
さすが魔法使いのペットも魔法が使えるのか、はたまた彼がカラスに魔法をかけたのか関心していると、その子は着いて来てと言わんばかりに目配せをした。

着いていくとそこは厨房だった。
明かりだけ付いているのに誰もいない。

厨房の真ん中のテーブルにはチョコレートとミルク、それとミルクパンが置かれていた。

「ホットチョコ ツクル」
とカラスが言ったので本当にこの子は賢い子と感動した。

「カラスもホットチョコを飲むの?」
と聞くと
「チガウ ノア ノド カワク」
とカタコトで答えられハッとする。
「あ、そうよね。確かにあの方はまだ起きているのかもしれないわね」
勝手に彼の屋敷の食料を使って申し訳ないが返せるものがない。

細かく切ったチョコをミルクパンで煮たミルクをかけ、それを鍋に戻し煮るとと甘いホットチョコができた。

「失礼します」と彼がいる部屋に挨拶をすると、その中は摩訶不思議な空間が広がっていた。

中にはいくつものトルソーがあり真ん中には立派な純白のドレスが異彩を放っていた。

彼はそのドレスとメモを交互に見て何かに悩んでいるようだった。

「あの?」
声をかけると彼は気づき
「ああ、ルナ嬢夕飯はもう食べたのか?」
と聞かれ
「はい。食器はカラスが厨房に連れて行ってくれたので洗いました」
と伝えると
「すまない。言ってくれれば使いを呼んだのだが」
と言われ、そういえばこの屋敷に使用人を見ていない事に気がついた。

「あの、そういえばお義母様から魔法使いの御使いが家に来て婚約の話を持ちかけたと言っておりましたがどなたが家に来たのでしょうか?」

そう尋ねると彼は
「そうだな。うちの使用人は実体はない」
と言い切られ
「では、どうやって?」

と彼に迫る。

するとまた彼がベルを鳴らすとあたりがかわり部屋の端にエヴァンズ家よりも多い使用人が老若男女現れた。彼らはいろんな国の使用人と思われる衣服を身に着けておりこちらに向かってお辞儀をしていた。

「彼らは私の魔法でできた者達だ。普段はこのベルで呼ぶ事ができる」
彼の手にある金色のベルはキラキラ輝いている。

「まあ、部屋にはベルがあるから君も自由に使うといい。それこそ私の御使いは素晴らしいぞ。銀食器なんてあっとゆう間に綺麗になる」
そう自慢家に話す彼に使用人達は一礼をするのを見てなんだか怖がっていたのが本当に可笑しくなってしまった。

「ふふ!」
(やだ、失礼になるのに)
と思っていたが側にいたカラスも
「フフ・・、フフフフフ!」
と笑うので釣られて彼も
「ハハッ」と笑い出した。


気のせいか使用人も笑顔になっていた気がする。

「やっと君は笑ってくれた」
と彼に言われドキッと胸が高鳴った。

「君は私達を少し怖がっているんじゃないかと思っていたんだ。でもスフェーンが君が困ってるのを見かけて私に花嫁にどうかと提案してくれたんだ」

「カア」
と鳴いたカラスがそのスフェーンと気づき、そう言われて家でカラスを見かけた日の事を思い出した。

「あなたが助けてくれたの?ありがとう」

そう言うとスフェーンは満足そうにカアと一言鳴き彼の来ているマントに入っていった。

「スフェーンはおしゃべりもできてすごいですね。
あれも魔法なんですね」

と聞くと彼は
「ああ、それは」と気まずそうに言い掛けたので気になっているとマントからスフェーンの声が聞こえた。

「マホウ チガウ カラス カシコイ」
と言われ
「ええ!」
と驚いた。

バレたかと主人である彼は
「カラスは九官鳥やオウムみたいに根気強く言葉を教えれば覚えるんだ」

と言われ恥ずかしくなったが改めてスフェーンの賢さに感心した。

「そういえばあの、ホットチョコを淹れましたのでどうぞ」

持って来たソーサーごと彼に渡す。

「ありがとう」
と目を細める彼のグリーンの瞳に見惚れていると彼はソーサーに口を付けた。

「うん。甘くて美味いな」
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