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9話 優しい人
しおりを挟む(そうだった。確かこのマントを付けていた人に倒れる前に会っていたんだわ)
ソファから立ち上がり周りを見渡すとその人はすぐ見つかった。
「もう、大丈夫なのか?」
声が聞こえた方を見ると隣の部屋から魔法使いが現れた。
「はい!あの、こちらありがとうございました」
とマントを返すと彼は受け取りジッと私の方を見る。
「顔色はさっきみたいに悪くはないな」
と言われて自分がいかにひどい顔をしていたと思うと恥ずかしくなってしまった。
(まあ、もとから化粧なんてしてないしひどい顔だけど)
と落ち込んでいると彼は手を叩くと、どこからか現れカップに甘い香りがするものが現れた。
ココアだ。
「長旅で疲れただろう。本当なら夕食を共にしたかったのだがあまり急に食べない方がいい。召し上がれ」
彼はそう言うとソーサーを渡した。
久しぶりに人から受けた優しさに急に触れて気がつくと目から涙が溢れていた。
「うわ、どうした?」
ボロボロと涙を垂れ流す私に彼はどうしたらいいんだと困惑している。
それを見てホッとすると同時にぐう~っとお腹が鳴ってしまった。
(やだ、はしたない!)
とうろたえたが彼は私を見ると満足したようで
「よかった。腹は減っているようだな。すぐに用意させよう」
とベルを鳴らすと驚きの早さで豪華な食事が暖炉の前のテーブルに現れた。
「僕は隣の部屋にいるから、ちゃんと食事を取りなさい」
そう優しく言い残すと彼はさっきの部屋に帰って行った。
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