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5話 先生と水族館

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これって『デート』になるのかな?

普段、少女向けの小説を書いているが自分事になるとピンと来ない。

帰り際、彼は
『先生、来週おしゃれしてきてくださいね♪』
と言われたがそれは私が普段適当な格好をしているからだろうか。

改めて榊原くんの手によって綺麗にされた部屋の姿見を見る。

そこには年相応のロングヘアの仕事用の眼鏡をかけゆったりとしたフードのあるロングワンピースに靴下を履いて化粧もそこそこ女がいる。

「どうしよう、何着よう?」

悩んでいてクローゼットを見ると奥に数着普段よりレースやフリルが目立ったワンピースがある事に気づいた。

よく元カレがいた時にデートで来ていた服だ。

「ーッ!」

懐かしさと別れようと言われた事がフラッシュバックしてしまった。

(忘れなきゃ・・・
好きだった、けど酷い人でもあったんだ)

パタンとクローゼットを閉じる。

次の日私は久しぶりに服を新調した。

既に涼しくなっていたので上着一式上から下までアクセサリーも買い直した。

榊原くんに言ったら『また、物あんまり増やさないで下さいよ』

と怒られそうだ。

でも、クローゼットに忘れたまま放置していた服に袖を通す気は起きなかった。

「お客様、お似合いですよ」
コーディネートをお願いした定員さんに褒められ少し勇気づけられて私はショップを後にした。

執筆を編集さんと打ち合わせしたスケジュール通りこなし週を跨いだ土曜日、榊原くんは駅に着いた私を見るなり一瞬固まったように見えた。

定員さんに勧められた通りコンタクトにし、長袖ロング丈のマーメイドラインのニットワンピースにヒール付きのブーツを合わせて来たがたまにしかこのような格好はしないせいか付け焼き刃っぽくなってないか心配になった。

しかし彼はいつも通り笑顔を浮かべると
「先生、行きましょう」と目的地に一緒に向かう。

向かった先は商業施設のフロアにある水族館だ。

夏らしい事がしたいという提案に花火大会は終わったし榊原くんのシフトがいつも通り11時から18時とすると考えた末の候補だ。

それから私達は館内を回った。

途中ランチ休憩をし、ビル内にあるからかショーはないものの魚以外にも大きなカメに触れるコーナーもあって楽しかった。

ペンギンコーナーはやはり人が多かったが2人でペンギンの可愛さに語り合いながら時間をかけてフロアを回ったらあっと言う間に夕飯には少し早いくらいの時間になってしまった。

「遅くまで付き合わせてごめんね。シフト超えちゃうかもしれないからここまでにしようか?」
謝ると
「気にしないで下さい。今日はお祝いなんですから俺に祝わせて下さい」

さ、ご飯食べに行きましょう
榊原くんはお腹が空いてるのか楽しそうに飲食店のフロアに行くと
「何でも食べて下さい」と中々値段のはるいくつかの店舗を提案してくれたが遠慮をしてると

「俺の顔を潰さないで下さい。以外と稼いでいるんですから」

彼はチラッとポケットからカードを見せてきた。

「榊原くん、学生でしょう?」
無理しなくていいんだよと説得しようとするがまた
先生、俺の顔を潰すの?哀れみの表情を浮かべお願いをされあざとい彼に金銭的な格差で泣かされてしまった。

「私が雇用主なのに」
ステーキを切り分けながらブツブツ言っていたが
「先生、俺の雇用主は社長ですから」と正論を説かれたのだった。













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