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1話 先生、はじめまして
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「じゃあ、この内容でお願いします」
土曜日の真夏、クーラーの効いた狭いワンルーム の玄関で私達は書類を挟みながら対面している。
目の前の男性は学生にしてはしっかりとしたペンで
私の作った契約書にサインをした。
以下はその内容である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
労働契約書
労働内容 家事代行
日給8000円
毎週月に4回とする
勤務時間11:00~18:00
内休憩1時間
雇用主 藤宮 のどか
被雇用者 榊原 傑(さかきばら すぐる)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「わざわざ真面目だなあ」
榊原くんは少しからかうような含み笑いを浮かべ記入した私が簡易的に作った契約書を私に返した。
「こうゆう事はきちんとしなきゃだからね」
そうだ。彼は学生なのだ。
依頼主の私はこんな時こそしっかりしなければいけない。
訳あって『兼業作家』の私が彼を雇用するのだ。
「控えはコピーして渡すから」と彼に言うとデスク横のプリンタでコピーを取り彼に渡すと「確かに」と書類を受け取った。
こういうのは会社で済ませてるんですけどねと榊原くんはため息をつく。
「それにしても俺が前回来た時よりまた物増えてません?」
彼は玄関から覗く奥の部屋を見て呆れている。
図星である。
本来仕事の依頼なら奥の部屋に通し、お茶を出しながらこういった交渉事をするのが正しいのだろう。
しかし、奥の部屋には宅配で届いた本の段ボールや洗濯物が積まれている。
よって申し訳ないが彼とは玄関先でのやりとりになってしまった。
「ごめんってば」
と謝る。
「まあ、やりがいはありそうだからいいですけどね」
と笑うと彼はスリッパを履いて奥の部屋に入ってゆく。
「じゃあ、少し換気しますから」
ガラッと窓を網戸だけにし彼は片付けを始めた。
「先生、これ開けても大丈夫ですか?」
彼は私の事を『先生』と呼ぶ。
編集以外、ましてやまわりの人間にそう呼ばれる事はないのだが気は悪くない。
彼は自分のリュックからカッターを取り出して聞いてきた。
「うん。多分この間発売した本が出版社から来たんだと思う」
と言うと榊原くんは
「うわ、生の作家の本じゃん!」
かっけー!と騒いでいる。
「そんな大層なもんじゃないでしょ」
(たいして売れてないし)
今のは自虐だ。
自分に毒付いていると
「いや、すごいですよ。
0から1を作れる人ってなかなかいませんよ」
と年下なのにふとした言葉に慰められた。
榊原くんは段ボールを私に確認を取りながら開けていく。
そうして物が所定の位置に収まった。
自分1人でそこまで出来る事はなかなかないので感動だ。
本当に魔窟化していた1ヶ月前とは大違いだ。
私は榊原くんが来る前の事を回想するのだった。
土曜日の真夏、クーラーの効いた狭いワンルーム の玄関で私達は書類を挟みながら対面している。
目の前の男性は学生にしてはしっかりとしたペンで
私の作った契約書にサインをした。
以下はその内容である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
労働契約書
労働内容 家事代行
日給8000円
毎週月に4回とする
勤務時間11:00~18:00
内休憩1時間
雇用主 藤宮 のどか
被雇用者 榊原 傑(さかきばら すぐる)
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「わざわざ真面目だなあ」
榊原くんは少しからかうような含み笑いを浮かべ記入した私が簡易的に作った契約書を私に返した。
「こうゆう事はきちんとしなきゃだからね」
そうだ。彼は学生なのだ。
依頼主の私はこんな時こそしっかりしなければいけない。
訳あって『兼業作家』の私が彼を雇用するのだ。
「控えはコピーして渡すから」と彼に言うとデスク横のプリンタでコピーを取り彼に渡すと「確かに」と書類を受け取った。
こういうのは会社で済ませてるんですけどねと榊原くんはため息をつく。
「それにしても俺が前回来た時よりまた物増えてません?」
彼は玄関から覗く奥の部屋を見て呆れている。
図星である。
本来仕事の依頼なら奥の部屋に通し、お茶を出しながらこういった交渉事をするのが正しいのだろう。
しかし、奥の部屋には宅配で届いた本の段ボールや洗濯物が積まれている。
よって申し訳ないが彼とは玄関先でのやりとりになってしまった。
「ごめんってば」
と謝る。
「まあ、やりがいはありそうだからいいですけどね」
と笑うと彼はスリッパを履いて奥の部屋に入ってゆく。
「じゃあ、少し換気しますから」
ガラッと窓を網戸だけにし彼は片付けを始めた。
「先生、これ開けても大丈夫ですか?」
彼は私の事を『先生』と呼ぶ。
編集以外、ましてやまわりの人間にそう呼ばれる事はないのだが気は悪くない。
彼は自分のリュックからカッターを取り出して聞いてきた。
「うん。多分この間発売した本が出版社から来たんだと思う」
と言うと榊原くんは
「うわ、生の作家の本じゃん!」
かっけー!と騒いでいる。
「そんな大層なもんじゃないでしょ」
(たいして売れてないし)
今のは自虐だ。
自分に毒付いていると
「いや、すごいですよ。
0から1を作れる人ってなかなかいませんよ」
と年下なのにふとした言葉に慰められた。
榊原くんは段ボールを私に確認を取りながら開けていく。
そうして物が所定の位置に収まった。
自分1人でそこまで出来る事はなかなかないので感動だ。
本当に魔窟化していた1ヶ月前とは大違いだ。
私は榊原くんが来る前の事を回想するのだった。
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