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二章 馴れ初め
12話 流行りのリボン
しおりを挟む「燈子さんが家に来てくれて本当によかった」
とカイに言われて数日が経ち、燈子の頭は気を抜くとその時の事ばかりになっていた。
針仕事中は千代が一緒にいるからかまだ大丈夫なものの朝と夕方はオウムのユキに勘づかれたのか
「トーコ ドウシタノ」と聞かれその度に「なんでもないわ」を繰り返す。
あまりにそんな事が続くとイラついたのかユキは燈子が持って来た餌に手を付けなくなってしまったので仕方なくおやつのナッツをあげて機嫌を取った。
このままではいけない。
けど、燈子は輪島家に来て自分が少しでも役に立てたと思えたからか欲が出てきてしまったのだ。
(だって、しょうがないじゃない)
高柳ではこんな風に本心からそんな事言ってもらえなかった。
「とにかく気を引き締めなきゃ」
その頃、高柳は久しぶりの三ツ橋の滅多に行かない視察に出かけた。
自分の店は相変わらずの賑わいぷりの変わらない光景だが店の者に形だけ顔を出してすぐ店を出ると次の目的地に向かう。
上の階にある輪島だ。
一目見るだけで以前と客入りから客層が違うのだ。
店に近づくとその理由が分かった。
リボンだ。
「くだらん」
一人呟くとその場を離れる。
輪島の客足が戻ったと一瞬元康は危惧したがテコ入れし、夫人小物を置き出したところで高柳から見たら脅威でもなんでもない。
「無駄足だった」とその後はランチを済ませると元康は高柳の家に帰って行った。
しかし茉莉は違った。
最近、街中や帰り道に素敵と思ったリボンがあった。
しかし、下校中耳にしたのだ。
上機嫌にその気になっていたリボンについて聞かれ、答えていた上級生の言葉を。
「何て店だったかしら。初めて入ったお店だったから。たしか三ツ橋の『しま』が付いてたっていうのは覚えてるんだけど」
そう聞いて茉莉は耳を疑った。
リボンのお店を聞かれた上級生とその友人は
「もう。お店の名前くらい覚えておきなさいよ」
「あなただってそうゆうとこあるじゃない。そんなに気になるならまた今度一緒に行けばいいじゃない」
「ええ、そうしましょう!」
という会話を繰り広げていた。
憧れを勝手に汚された様な感情に茉莉は唇を噛み締め、高柳の屋敷に帰って行くのだった。
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