⌘悟り令嬢の嫁入り奇譚⌘

麻麻(あさあさ)

文字の大きさ
上 下
4 / 22
一章 出会い

4話 今までお世話になりました。

しおりを挟む

父が燈子に話をしたその日の夕食時、カヲリや真莉のいる席で燈子を嫁に出すと公にすると、一番驚いたのは真莉だった。

「この子がお嫁?ずっと家の手伝いとしてこの家にいるんじゃないの!?」

それについては父から話があるまで自分も同意見だ。

「そうよ。こんな子を嫁がせるなんて・・・。嫁ぎ先になんて言われるか」と母も真莉動揺に父に抗議するが嫁ぎ先を話すと二人は父に寝返った。

「なんだ、そうよね。私よりも先に嫁ぐと思ったら落ちぶれた輪島の家なんて・・・。あの子にぴったりじゃない。ねえ?お母様」
「そうね。お前学は真莉みたいに無いんだから輪島家の家で下手をするんじゃありませんよ」
と母娘とも燈子を笑う。話題は変わり真莉が父に
「お父様ったらあの子ばかり。私の嫁ぎ先はいつ決めるつもりかしら?」
と詰め寄る。

かわいい高柳家の一人娘のとんでも話に明らかに動揺した父は無言になる。

「これ、真莉!お父さんを困らせるんじゃありません」
カヲリがその場を宥め、なんとも温度差がある夕食時間が過ぎてゆく。

それが終わるといつもの様に女中達と一緒に料理を引いていつもの日常を過ごす。

そうしているとすぐに父が話していた一週間になりついに自分は出ていく時になった。

女中から渡された訪問着に着替えを済ませる。

淡い紫色の無地の着物に淡い金や緑や水色や橙色の花模様が入ったものに着物と同じ帯締めだ。

美しい着物に驚いて受け取る。 

ほんの少しばかり父の優しさに触れたのかと手袋を外し素手で着物に触れて視る。

しかし、これは一昨年の夏に高柳の売り上げが過去最高を上回った時に調子に乗り元廉が燈子のいないところで呉服屋なの主人に言い寄られ仕入れた末、結局若い子には地味と売れ残り、お蔵入りになったものだという事を感じ取る。

(まあ、嫁入りに掠(かす)りを来て言ったら輪島様に驚かれるわよね)

嫁入りを公にされた日に母のカヲリに言われた「嫁ぎ先になんて言われるか」という言葉を思い出す。

おそらく母の意見に父も同調したのだろう。
袖を通し、帯を閉め玄関口の姿見を見る。

以外にも違和感なく着こなせ
(私って地味な着物が似合うのかしら?)
と複雑な気分になったがいつもの掠りとは違う。

着物は地味だが燈子は晴れ着姿なのだ。

本来なら紅や白粉を塗るところだろうがそれがない燈子はこの姿で輪島の家に向かうしかない。

掠りと寝巻き、替えの手袋を入れた風呂敷と輪島の家の地図を持って高柳の家に一礼すると燈子は生家を後にした。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遅咲き鬱金香(チューリップ)の花咲く日

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
巴 金香(ともえ このか)は寺子屋で教師手伝いをしている十九才。 母を早くに亡くし父親は仕事で留守であることが多く、家庭の愛情に恵まれずに育った。そのために自己評価の低いところがあり、また男性を少し苦手としている。そのため恋にも縁がなかった。 ある日、寺子屋に小説家の源清 麓乎(げんせい ろくや)が出張教師としてやってくる。 麓乎に小説家を目指さないかと誘われ、金香は内弟子として弟子入りすることに……。 【第一回 ビーズログ小説大賞】一次選考通過作品

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める

緋村燐
キャラ文芸
家の取り決めにより、五つのころから帝都を守護する鬼の花嫁となっていた櫻井琴子。 十六の年、しきたり通り一度も会ったことのない鬼との離縁の儀に臨む。 鬼の妖力を受けた櫻井の娘は強い異能持ちを産むと重宝されていたため、琴子も異能持ちの華族の家に嫁ぐ予定だったのだが……。 「幾星霜の年月……ずっと待っていた」 離縁するために初めて会った鬼・朱縁は琴子を望み、離縁しないと告げた。

眠りにつくまで…◆眠るまでそばにいて◆甘い支配の始まり:三鷹聖の物語【完結】

まぁ
恋愛
出会いは、とある寺の墓地 何度か見かけるあの人 あの君 戸田光里 Toda Hikari 私立一貫校高校担当事務員 三鷹聖 Mitaka Hijiri 経営コンサルタント 牧瀬樹 Makise Itsuki 作中の人物、団体名、街…全てがフィクション、想像上のお話です。 「甘い支配の始まり」「チューリップラブ」の人物が登場します。

身代わりの私は退場します

ピコっぴ
恋愛
本物のお嬢様が帰って来た   身代わりの、偽者の私は退場します ⋯⋯さようなら、婚約者殿

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

処理中です...