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一章 出会い
4話 今までお世話になりました。
しおりを挟む父が燈子に話をしたその日の夕食時、カヲリや真莉のいる席で燈子を嫁に出すと公にすると、一番驚いたのは真莉だった。
「この子がお嫁?ずっと家の手伝いとしてこの家にいるんじゃないの!?」
それについては父から話があるまで自分も同意見だ。
「そうよ。こんな子を嫁がせるなんて・・・。嫁ぎ先になんて言われるか」と母も真莉動揺に父に抗議するが嫁ぎ先を話すと二人は父に寝返った。
「なんだ、そうよね。私よりも先に嫁ぐと思ったら落ちぶれた輪島の家なんて・・・。あの子にぴったりじゃない。ねえ?お母様」
「そうね。お前学は真莉みたいに無いんだから輪島家の家で下手をするんじゃありませんよ」
と母娘とも燈子を笑う。話題は変わり真莉が父に
「お父様ったらあの子ばかり。私の嫁ぎ先はいつ決めるつもりかしら?」
と詰め寄る。
かわいい高柳家の一人娘のとんでも話に明らかに動揺した父は無言になる。
「これ、真莉!お父さんを困らせるんじゃありません」
カヲリがその場を宥め、なんとも温度差がある夕食時間が過ぎてゆく。
それが終わるといつもの様に女中達と一緒に料理を引いていつもの日常を過ごす。
そうしているとすぐに父が話していた一週間になりついに自分は出ていく時になった。
女中から渡された訪問着に着替えを済ませる。
淡い紫色の無地の着物に淡い金や緑や水色や橙色の花模様が入ったものに着物と同じ帯締めだ。
美しい着物に驚いて受け取る。
ほんの少しばかり父の優しさに触れたのかと手袋を外し素手で着物に触れて視る。
しかし、これは一昨年の夏に高柳の売り上げが過去最高を上回った時に調子に乗り元廉が燈子のいないところで呉服屋なの主人に言い寄られ仕入れた末、結局若い子には地味と売れ残り、お蔵入りになったものだという事を感じ取る。
(まあ、嫁入りに掠(かす)りを来て言ったら輪島様に驚かれるわよね)
嫁入りを公にされた日に母のカヲリに言われた「嫁ぎ先になんて言われるか」という言葉を思い出す。
おそらく母の意見に父も同調したのだろう。
袖を通し、帯を閉め玄関口の姿見を見る。
以外にも違和感なく着こなせ
(私って地味な着物が似合うのかしら?)
と複雑な気分になったがいつもの掠りとは違う。
着物は地味だが燈子は晴れ着姿なのだ。
本来なら紅や白粉を塗るところだろうがそれがない燈子はこの姿で輪島の家に向かうしかない。
掠りと寝巻き、替えの手袋を入れた風呂敷と輪島の家の地図を持って高柳の家に一礼すると燈子は生家を後にした。
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