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9話 親愛なるキョンシーへの手紙
しおりを挟む(メイユイ!)
聞いたことのある声が耳に届く。
「メイユイ!」
次の瞬間、はっきり父の声が聞こえて目が覚めたかと思うと私はある部屋にいる事が分かった。
「お前が導師様の部屋で倒れていたんだ。
衛兵が導師様の許可で入ったが部屋はすごい匂いだったぞ。もう身体は無事か?」
「はい。あ、私議事録を見ていて途中のままでした」
「それは、私も導師様に聞いている。彼が預かっているそうだ」
「そうなんですね。よかった」
「お前はしばらく休んだほうがいい」
「いえ、私も半人前ですが早く一人前になりたいんです」
そう父様に抗議する。
しかし、自分の身体ー。
具体的には呪術に使う道具をしまっていた服の袖口に違和感を感じてゴソッと中を漁る。
(霊薬がない!)
懐紙に何個かに分けて包装してある霊薬が全てなくなっていたのだ。
他にも諸々失くした物に気づいたが父は私より多くの事を感じ取ったみたいだ。
父は私を失望の眼差しで見つめると
「お前は、どうして道具の管理もできんのだ!」
と大声で叱った。
「!」
悔しい・・・。
でも落ち度は私にある。
「申し訳ありません。父様・・・」
「もう良い。あとはヨウリンにまかせる。
お前は体調の事もある。
この任務はお前に早すぎた。
荷物をまとめてお前は帰りなさい」
そう父に言われ背筋が冷たくなった。
「でも、父様、彼の死因を追求しないと・・・。このままでは剣で斬るしか方法はありません」
「止むおえん、その時はその時。
それが導師の勤めだ。
師の命だ。
お前は家に帰るんだ!」
そう父に言われ泣く泣く自室に戻ると驚いた顔をし姉は私を気にかけた。
「アンタ無事だったの!?よかった~!」
私の無事を喜び姉は抱きついて来た。
しかし私の胸の内は晴れない。
「どうしたの、メイユイ泣いてるの?」
自分の不甲斐なさに涙が出る。
「姉様・・・」
ボロボロ涙が止まらない私を姉は
「やだ、そんなに泣く事ないじゃない」
と頭を撫でて慰めた。
しかし涙が止まらなかった。
「約束したのよ。彼を正気に戻すって」
嗚咽する私の頭を姉は更に優しく撫でた。
『姉様お願い!彼にこの手紙を渡して』
そう言い残し私は牢の中にいる彼に手紙を書く事にした。
墨の匂いが苦手な彼に悪いのでしっかり乾かした手紙を姉が牢番をする時に読んでもらうつもりだ。
書いた手紙を渡すと彼女はまた眉間にシワを寄せる。
「私、父様にとって優秀だからこんな真似はしたくないのよ。アンタ正気?」
「ええ。姉様達には悪いけど私は半人前だもの」
そう姉に言うと私は姉に全てを預けると実家に戻る事にした。
(姉様、お願い!)
そう祈り実家でやり過ごすしかない私はその日は床に付けなかった。
一方その頃
地下牢ではメイユイに言われた通りヨウリンはキョンシーことエイレンに手紙を読むわと言われ
「そなたから手紙などなんのつもりだ?」
まさかメイユイに手紙を渡されるなんて思ってもいなかったエイレンは驚いた。
「勘違いしないで、
これは妹からの手紙よ。
あの子は術に使う道具を無くして実家に戻ってるわ
謹慎中よ」
「そうなのか、彼女は落ち込んでるんじゃないのか?」
とメイユイを案ずる彼に
「どこに退魔師を心配する化け物がいるってゆうのよ。私が妹のかわりに読むからよく聞きなさい」
と言われ彼女は淡々と文を読み始めた。
それを聞くとエイレンはあまりの驚きに瞳には涙があった。
「あ~、もう妹からの恋文を姉が読むってどうなのかしら」
そうヨウリンは吐き捨てる。
「・・・すまない。その手紙をくれ」
「別に構わないけどアンタ墨の匂い駄目なんじゃなかった?なにか企んでるわね?」
「違う!何かが分かりそうなのだ」
「!、それってアンタの死因って事?」
(暇だ)
実家に帰ってもいるのは母だけだ。
(昨日、姉様は手紙をエイレン様に読んでくださっただろうか)
昨日筆を取り書いた手紙を思い出す。
『エイレン様
私は父に謹慎を申し伝えられました。
今回、お香に当たって倒れて私も危うくあなた様と似た状況に陥りました。
私が不甲斐ないせいであなた様の牢番につく事はできません。
議事録には不審な点は何はなく他の書にもてがかりはありませんでした。
しかし真相が分かっていようと、いまいと私はあなた様を剣で斬る事はできません。
世界中のどこに恋い慕うお方を斬る女がいるでしょうか?
師の命令がある以上、後宮に戻る事はできません。
全く身分に従うのは窮屈ですね。
私が言うのはお角違いですがあなた様の無事をお祈りしています。
メイユイ』
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