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6話 未熟者
しおりを挟む「どうだった?」
姉に聞かれ眠い目をこすりながら
「完全にナメられたから姉様の真似をしたわ」
と言うと父も姉も安心したのかひと笑いした。
それから朝食も食べず自室に戻ると日が暮れるまで寝ていたところを姉に起こされた。
「寝過ぎよ、メイユイ!父様から話があるそうよ。ほら身支度して一緒に来なさい」
そういわれ父がいる客室に向かうと父は巾着袋に入った粉を取り出した。
「極東の国に伝わる霊薬だ。我が家にあった代物。ちょうど今、母さんから送ってもらった。
人間はもちろん死人にも効く薬と言われている。
もしかしたらこれが何かの役に立つかもしれん」
そう見せてくれた粉は生薬臭く霊薬と言われてもピンとこない。
「ためしに怪我をした鳥にかけたところある程度治った」
成る程。効き目は確からしい。
「宮廷導師様に許可をもらったところ是非、キョンシーに煎じて欲しいとの事だ。
早速、今夜から私から奴に試してみようと思う」
(よかった!これで剣は使わなくとも彼は正気を取り戻すかもしれない)
父は私達に煎じる霊薬の量を伝えるとまた地下牢へ足を運んだ。
自分達の客室に戻ると姉は渋い顔をしていた。
彼女らしくない。
「父様、煮詰まっているわね。あれはキョンシーに効くというより汚れに効く万能の薬よ。
いきなりアレに頼るなんて他に手はなかったのかしら」
「そうなのね」
半人前の知識がない私は初めて霊薬を知った。
「でも、護摩もやり過ぎはよくないから他にできる事はないんでしょう?」
「そうね、このまま薬が効いて邪気を抜くしかないかもね」
姉は私も他の手立てがないか調べてみるわと言われ心強くなる。
日が昇り父が地下牢から戻ってきた。
「はじめは薬を嫌がったがなんとか奴は飲んだ。
身体の硬直は完璧ではないが徐々に元に戻るだろう。
だが霊薬は量を守り少しづつだぞ」
「はい」
姉と返事をし自室に戻る。
「父様、すごいわ!やはり霊薬はすごい力があるのね」
姉は興奮気味で嬉しさを私に表した。
「ええ。これで彼から邪気を払えると任務完了ね」
私も霊薬の効果に感動し2人で喜びあった。
これではひと月と言わず数日で彼は元に戻るかもしれない。
「さて、私も霊薬を試せる時がきたのね!」
と姉は小躍りした。
「え、姉様も霊薬を使った事なかったの?」
「そうよ。あれは家に伝わる秘薬よ。
わざわざご先祖が極東の祈祷師に頼んで分けてもらった我が家に伝わる家宝だもの。
父様意地でも今回の仕事やり遂げるつもりだわ。
まあ、出世がかかってるもの」
当然よね
と姉は言うと
「さて、じゃあまた、奴を驚かせてやるわ」
と笑うと牢番の準備を始めた。
「姉様、一応元皇弟よ。加減したら」
と苦言すると何故か姉に鼻で笑われた。
「アンタはそんなんだから半人前なのよ。
いいこと?
高貴な身なのは確かよ。
でも、彼は今は化け物!
私達が祓わなきゃ誰が祓うの?
確かに彼は高貴な身分の元は人だけれども彼よりも絶対の存在『皇帝』の願いあっての依頼よ。
やり遂げるのが一人前でしょう」
そうきっぱり言い切り地下牢に向かって行った。
「!」
その通りだ!
姉に図星をつかれたのが恥ずかしくて悔しくて涙が出る。
ふとどこからか人の気配を感じた。
部屋の外に誰かいるのだろうか・・・?
いや、気のせいだ。
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