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2話 後宮の闇

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後宮で皇帝の弟が自室で亡くなられた。

朝方に彼の使いが起きてこない彼に気付き部屋に入ったところ机に伏せて亡くなっていた。




皇帝は悲しみ、それだけで後宮は大混乱に陥った。

しかし、本当に恐ろしいのはここからだ。


しばらくすると亡くなった弟君は両手を宙に上げた。


息を吹き返したのだと思ったが、その声は苦しそうにアア、ウヴと唸りまともにしばらく会話が出来なかったらしい。


検視官達はみな、まだ動く彼を恐れ
乱暴する事は出来ず宮廷の柱にくくりつけるまでしか出来なかった。

宮廷導士にすぐさま相談するも彼では手が負えず、後宮に皇弟の化け物がいるという事を公にする訳にはいかず街で祈祷や呪術を扱うに趙(チョウ)家話が来たのはすぐだった。

私、美雨 趙(メイユイ チョウ)は姉 桜綾(ヨウリン)と一緒に連れられ、父の跡を継ぐようと父と仕事の手伝いをするにあたり後宮に来た次第だ。

最初は衛兵に
「なぜ女が・・・」
と父への同行を疎ましがられていたが父の説得で後宮に入る事を許された。

そこは天井に窓が一つだけの地下牢だ。

(臭い・・・)

すごい匂いだ。
ろうそくや地面の土には動物の血だろうか跡が残っていた。
父の他にも後宮は術師を呼んだのだろう。

しかし、牢の中にいる弟君は綺麗だっただろう着物も今は汚れ、下を向き両手を前に突き出している。

生きていれば敬い慕われるはずなのに、高貴な人のなれ果てた姿を見るのは辛かった。

「これはキョンシーだ。ヨウリン餅米を用意しろ」

「はい」

姉が道具箱の中から餅米を取り出した。


キョンシーは人間が恨みをを残して亡くなった姿だ。
対処に諸説あるが父は手始めに餅米を使った。



木箱から取り出した餅米を父はキョンシーにかける。

しかし、キョンシーは「ウウ?」
と狼狽える事なく目を見開く姿に父や姉、そこにいた私も拍子抜けした。

「次は血だな、メイユイ!」

「はい」

またしても父に言われたとおり今度は私が父に瓶に入った鶏の血を渡す。

(これで正気を取り戻してくれればいいんだけれどー!)

瓶の蓋を開け父は思いっきり中の血を彼に掛けると彼は「ウウ・・」

と嫌がった。

(そんな!?)

ある程度、父の術で治らないものはないのに!



「仕方ない・・・。最終手段だな」

そう言うと父は姉にある物を出すように告げた。

桃の樹でできた剣だ。


桃には邪気を払うといわれがあり、その剣で斬った者は邪気が、祓われ正気に戻るのだという。


「ウウ・・・」

キョンシーである彼は牢の中で父が持っている剣を見ると自分の運命が分かっているのか下を向いたまま項垂れていた。

(そんな・・・いくら死人だからってあんなやり方!)

いてもたってもいられなくなった私は


「お辞めください!」

と父の前に立ち塞がった。

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