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5話 ティアラの宝石が分りました
しおりを挟むグレイが部屋から去り、エメは床につく前、久しぶりに自分のトランクからコレクションの鉱石を取り出した。
宝石よりも装飾価値の低い鉱石を見るのも好きだ。
それと小さな巾着袋に入れた宝石の破片も大事なコレクションだ。
父がカットした破片で商品価値はないので、父から研磨を教わり、自分のコレクションにしたのだ。
ピンクのルビーは比較的に紅いルビーよりランクが低いがこれが一番好きな宝石だ。
本当ならば密かに台座をデザインして理想の婚約指輪にしたいと自分の中で願っている。
妃から受け渡されるのは指輪ではなくティアラだが
結婚式に華を沿える宝石には誰かしらの想いが込められているのだ。
まさかグレイ様があの紳士とは思わなかったので今日は実に感情がいろんな方向に動く一日だったなと思った。
(グレイ様のあの感謝しているの言葉は本当にそれだけの意味かしら)
熱っぽく言われたから急に頬が熱くなり、妙にそれ以外に意味があるのかもと期待してしまった。
(いけない、私は庶民だ!立場が違うのよ)
それに早くティアラの宝石を探し当てなければならない。
妃は「あの石は光に当てると桃色が変わった」と言っていた。
ふと、頭を働かす。
「そうだ!」
宝石に心当たりがあったのだ。
翌日、コレクションから該当すると一つの青い宝石を太陽にかざした。
すると石は鮮やかなプリズムを出して輝く。
やはりこれに違いない。
サファイヤはサファイヤでもカラーチェンジサファイヤだ。
亡くなった王の母君はなんとも粋な感性をしていたらしい。
早速その旨をグレイに話そうと身支度を済ませた。
普段なら夜中と早朝以外は執事も自室にいる時間帯なのでメイドが運んでくれた朝食を食べグレイに話そうとした。
しかし、部屋の中から扉をノックしてもグレイは扉を開かない。
ならず者が侵入したのだろうか?
外が異様に騒がしく何があったのか分からないでいると急に誰かが部屋をノックしてグレイとは違う見習い執事が「ウィリアム様、お伝えしたい事がございます」と言って来た。
なんとサファイヤが中庭の隅に布に巻かれた状態で見つかったのだ。
見習い執事と一緒に中庭に向かうとそこには
妃も居合わせいたが何やら険悪な雰囲気だ。
見習いの執事はエメに
「宝石を発見したのはグレイ様なのですが、そのせいで誰もが彼が犯人と怪しんでいるのかと」
と状況を憶測した。
(そんな!)
確かに宝石は城中どこを探しても出てこなかったのは確かだ。
でも彼がそれを盗むメリットなんて一つもないはずだ。
まさかグレイ様が犯人なのかと噂する連中に
「違う!私は発見しただけで無実です」
と狼狽えるがその反応がますます怪しまわれた。
あまりの騒ぎに王も姫も側近を連れ何事かとあたりは騒然となった。
グレイは執事達、使用人が使っている棟からエメの部屋の前に行く為に中庭を通ると以前、話を本人から全身聞いたばかりだ。
騒ぎは大きくなり王は一度衛兵にどうするか指示を出そうか決めかねた矢先、耐えきれず王にお辞儀をした。
「お待ち下さい。彼は犯人ではございません」
と伝えた。
商人の娘が客人とはいえ王に物申す姿に緊張が走った。
王は静かに「どうしてそう思う?」と問う。
緊張したが思った違和感を答える。
「では何故宝石を布を巻く可能性があったのでしょう?」
「宝石に傷が着くのを避ける為だと思うが」
王は答える。
「そうですね。でもそれは割れない為でもあると思うのです」
「どうゆう事だ?」
「つまり、この高い塀の向こうから誰かしらがこの宝石が投げ込まれた可能性がございます。
布もただ庭に置いただけでは付かない泥汚れが多いと思われます。
なのでグレイ様を犯人と決めるのは早いかと」
しばしの沈黙の後
王はフーッとため息を付いた。
すると中庭の茂みから猫が呑気にニャアと入って来た。
足は泥だらけで執事見習いは猫を追い払う。
「グレイ、本当にそなたではないんだな」
王は彼を見つめ問う。
「はい。あの猫がいつも通り寄って来て呼ぶので何事かと庭の隅に行って宝石を見つけた次第です」
そう聞くと王は「そうか。疑って済まなかった」
と謝罪し周りにいた野次にパンパンと手を叩き解散を命令した。
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