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12話 稲荷様との婚礼
しおりを挟むそう考えている間も刻々と時間は過ぎ、婚礼の準備が進んでいく。
紅色の花嫁衣装を御使い達に褒められても私の心配事は頭を巡る。
唇に紅を塗ってもらう間も考えがまとまらず
そうしていると式を見る為に親族や客が次々に訪れた。
そこには家族の姿を見つけた。
「すもも、お前無事だったのかい?よかった」
父や母は私の姿を見つけると駆け寄り、はらはら涙を浮かべ再会を喜んだ。
「すもも、よかったねえ。今度こそ幸せになってね」
姉も涙を浮かべ私の背を撫でながらよかったと繰り返す。
しかし今になって尚
『幸せになって』という言葉を素直に受け入れられないのだ。
(私の幸せってなんだろう?
みんなに祝福されるのは嬉しい。
でもこんな事を望んでいるわけじゃない!)
ここから今すぐ出ていきたい気持ちと反抗したら旦那様はどうなってしまうのかという2つの気持ちが
対峙する。
今、神主が祝詞を挙げ夫婦酒を呑むときが来た。
しかし、なかなか呑む事ができない。
その姿に気付いたのか稲荷様は
「ほら、すももさん。君も飲んで」
そう促すがなかなか盃を口に運べない。
これには参加者も一同に困惑し
父や母も
「すもも、どうしたの?」
「何かあった?」と姉にも口々に聞かれるが上手く答えられない。
それを見ていて稲荷様が肩を落とした。
「蛇神よ、いるのだろう」
「!」
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