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10話 稲荷様
しおりを挟む珍しい!
(うちにお参りにくる人本当にいるんだ!)
その人は長い金髪が似合う旦那様とは似た風格だが
彼の耳と尻尾はフサフサで明らかに人間ではない。
昼間なのに神々しい姿で煌びやかな着物に糸目と上がった口角が印象的な人だった。
掃除を中断し一礼をすると
「もし、最近こちらに嫁いだという花嫁は?」
と声をかけられて
「私ですが」
と彼が出す圧倒的な雰囲気に
(眩しい)
と感じながら答える。
「なんと!?」
彼は驚いたと取り乱しじっと私の顔を見つめる。
熱い視線に戸惑っていると
「自己紹介がまだだったな。私は狐神の稲荷(いなり)だ」
と名乗ると今度は私が驚いた。
(神様!
この人が村の人達が信仰を受けていた神様だなんて)
稲荷神社は蛇神様と違い、祟り神ではなく村に伝わる奉納の神様だ。
昔、家族皆で稲荷神社に家での繁盛を願いに行った事を思い出した。
あの時は神様の気配なんて分からなかったのに!
旦那様に嫁いだからだろうか?
ご利益すらなかったものの、こうして蛇神様以外の存在に出会えるなんて珍しい。
そう村にいたときに父や母に聞かされていた事を思い出していると背後から冷たい気配がした。
旦那様だ。
「稲荷よ。なぜ来たのじゃ」
嫌の奴を見たという眼差しでどうやら旦那様は稲荷様を快く思わないらしい。
重い空気が流れ何も聞かなくても2人が仲が良くない事が分かる。
「水臭い。お前が嫁を娶ってと聞いてな。
こうやってこちらから来たわけだ」
そう稲荷様は旦那様に訳を話すと今度は私の方に振り返り
「君、私に嫁ぐといい」
と耳を疑う言葉を掛けてきた。
突然の求婚に
私も旦那様も
「はあ!?」
と驚く。
「・・・冗談がお上手ですね」
そうやんわり断る。
しかし彼には通じないようだ。
「冗談じゃないぞ。実に君は奥ゆかしそうだ。
拒否権はない。
そうだろう、蛇神」
旦那様は唇を噛み稲荷様を睨む。
その姿の意味を理解し
「!」
と私は絶句する。
狐神は蛇神とは違い崇められているから蛇神様でも逆らえない。
神様にも序列があるのだ。
つまり旦那様は稲荷様に逆らう真似もできない。
「さあ、我が社に行こう」
と稲荷様は私を抱えるとそのまま蛇神神社から霧のように姿を消した。
(嫌!)
旦那様と離れたくない!
一心で思ったのも束の間
「すもも!」
と旦那様が手を伸ばして助け出そうとしてる中
旦那様との距離は隔てられいつの間にか景色は
見慣れない風景に変わっていた。
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