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8話 蛇神の記憶と桃酒

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その後は先程掃除した場所をまた見渡しながら物思いに耽っていると陽はとっくに落ちそうになった。

「すみません。遅くなりました。夕食の支度します」

旦那様に謝り、夕食の準備に取り掛かろうとする。

しかし彼は

「大丈夫だ。お前さんも疲れたじゃろ?休め」
  
と労う彼に

「あ、じゃあこれを」

と果物を出す。

「うちでとれた桃です。裏庭で取れるので家族が嫁入り道具と一緒に包んでくれた物ですけど。
旦那様桃は食べれますか?」

すると彼は桃を凝視すると何か言いたげに口を開こうとした。




10年ほど前、広い塀に囲まれた家に住む1人の少女は裏庭の端で焦りと哀れみや恐怖で泣いていた。
彼女は5から7歳くらいだろうか?


家の端には綺麗で小さな白い蛇に数箇所痛々しい姿をし少し弱っていた。
幼い蛇神が蛇の姿で屋敷に迷い込んだのだろう。


「大丈夫?」
少女はビクビクしながら底が傷んだ樽に桃をいれて怪我した蛇を捕獲しようとする。

「父様がごめんね。痛かったよね」

小蛇はどこからか迷い込んだのだろう。
裏庭に桃の木を見つけ地面に落ちた実を食べようと近づいた矢先、少女の父に棒で突かれ投げられ、屋敷の隅に追いやられた。

頬っておけば弱りそのまま命を落とすはずだと思われたのだろう。

しかし、その父親の娘は一部始終を見ていたのか放っておけなかったのだろう。


軒先下に蛇を入れた樽を隠す。
小さく割った桃を樽に入れ

「これ、お詫び。蛇さんは果物食べるよね」

「早く良くなってね」

そう、声を掛けると小蛇はどこか覇気が戻ったように見えた。

次の日少女が樽を除くと桃も小蛇も消えていた。

残されたのは底が少し傷んだ樽だけだった。



「お前さん、もしやー」

旦那様は何か私に心当たりがあったのかスッと私の顎を掴むと彼の顔が近くにあって胸が高鳴る。

「あの?」
と動揺し上擦った声をあげると彼は


「いや、何でもない」
と言ったきり満足そうに私の頭を撫でた。

(どうしたんだろう?)

昨夜より彼は機嫌が良く見えた。





「桃酒なんてどうだろう」
という提案に
「いいですね」と乗ると旦那様の術により桃は空中で液体になり桃酒は出来上がった。

「すごい!旦那様は本当になんでもできるんですね」

「わしじゃて一応神じゃ。朝飯前よ」

フフフと旦那様は上機嫌だ。
乾杯とまた、盃を交わしがふけて行った。

そうしてまた外は湿った空気と共にポツリ、ポツリと音がした後、サアーっと雨が降った。
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