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3話 信じがたい話

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彼から家族総出で聞いた話は俄かに信じがたい話だった。

ーーーー
「私に縁談ですか?」
「うん。すももさん特にいい人はおらんのだろう」

仲村様は確認を取るために聞いたのだがそう断定されると虚しくなる。

「はい」

「なら、よかった」

彼は安堵する。

「それで、お相手はどのような方ですか?」

私の代わりに両親が聞く。
私を目掛けてくれる人がいる。

単純に2人は娘の幸せに喜んでいる。


しかし、私のお相手の名前が上がるなり2人は

「仲村様、いくらなんでもそれは」

と狼狽した。


「しかし、他の年頃の娘さんのお宅もあたったけど皆断られてのう」

こうやってすももさんにしか頼む事ができんのじゃと彼はため息をついた。


私のお相手はこの村に祀られた蛇神様だ。


その人はただの神ではない。

村の人々に恐れられてる『祟り神』だ。


この村には古くから伝わる蛇神信仰がある。
何十年か一度に力が弱まりその度に干ばつが村を襲う。
だからその度に村の娘を彼の『花嫁』として差し出す決まりになっている。

ただの言い伝えとしか思ってなかったのて仲村様の話に私も含め家族全員が恐れ驚いた。

顔面蒼白の父は
「仲村様、申し訳ありませんがご一考ください」
と頭を下げる。

とても思い詰めた顔は険しく痛々しい。

(お父さん!)
不本意ながら仲村様に詫びる父の姿に感動してしまった。

しかし
「ダメか?」
と彼は引かない。

「茜さんはどうじゃ?」

仲村様は今度は姉に意見を乞う。

それを聞き姉の顔はみるみる蒼くなる。

何てことだろう!跡取りとの縁談が決めたのは仲村様だ。

跡取りの父である仲村様の命令
を断れば姉も破談になってしまう。

姉は俯き無言のまま言葉を発せずにいた。

「じゃあ、また来る」

仲村様はそう言うと我が家を後にした。

なんて事だろう。
村長の命令は絶対だ。





そうして仲村様が帰り、あれよあれよという間、時間だけが過ぎて私の婚礼準備は静かに進められた。
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