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2章
2-1 霞目インスタグラマーと幽霊と丹桂飄香(タングイピャオシャン)
しおりを挟む8月、桃花は退社してすぐ社宅から店に越してきた。
緑仙から
「桃花さんの部屋にも家具はあるので」
そう言われて紹介された部屋はまるで中国映画に出てきそうな深い茶の木製ベッドとライティングビュロー(引き出しとデスクが一体化した家具)があり
とても素敵で歓迎されてるのが伝わった。
開店は9月始め。覚える事ややる事は多い。
接客や茶の知識はひたすら緑仙付き添いで勉強の日々だ。
9月は中秋節、お月見に合わせ中華街で様々な限定メニューを店がこぞって出し、桃花源も月餅を出す予定だ。
インスタやエックスでも開店しますと予告をしたが反応はイマイチだ。
やはり文字や店の内装写真だけではなんの宣伝にもなってない。
「やっぱり、看板メニューはあった方がいいと思うの」
桃花の提案に明明は乗り気だ。
「でも何を作ろうかしら?」
「そうなんだよね」
こうゆう時こそネットの力を借りる時だ。
「何を見てるの?」
明明は桃花のスマホの画面に興味深々だ。
「お気に入りのインスタを見てるの。
このcocoさんのアカウントがいつも変わったお料理や喫茶店のメニュー載せていて好きだからなんかヒントにならないかなって」
cocoさんのアカウントには佐世保バーガーからフグ、ケーキ屋やカフェで撮った画像をあげてある。
「あら、この辺の店も載ってるじゃない」
地元のお店をあげているのも親近感が湧き学生時代桃花も行ける範囲でcocoさんの紹介していた喫茶店やバーガーを食べに行っていた。
「いいなあ」
桃花も今はお金を節約する為外食は控えているが店が軌道にのったらまた食べ歩きのインスタアカウントを復活させるつもりだ。
「なにかいい案ないかな」
2人で悩んでいるとちょうど緑仙が食材の買い出しから戻ってきた。
「2人とも買い物行ってきましたよ。休憩しましょう」
そうして緑仙は袋からある物を取り出した。
「これは!?」
桃花と明明に衝撃が走った。
カステラだ!
「長崎といったらやっぱりカステラよね。端っこの寄せ集めだけどやっぱり美味しいわあ~」
明明は袋を開けてもぐもぐ頬張る。
そんな明明を緑仙がこらこらと叱る。
「冷やした烏龍茶を淹れましょうか」
わーいと明明は万歳をして待つ。
桃花もカステラを食べるのは久しぶりだ。
そして桃花はあるを思いついた。
「そうだ!これだあ」
「パイナップルケーキ?」
桃花の急なプレゼンに緑仙と明明はハモった。
「そう。薬膳料理屋さんとかでのデザートはいろいろあるけどパイナップルケーキがメニューになってるとこ多いの。
この周り、お土産屋さんとかでお菓子は売ってるけどティーセットってなかなかないでしょ?
だからパイナップルケーキに緑仙さんのお茶を出したら看板メニューになると思うの」
「パイナップルケーキですか。鳳梨酥(フォンリースー)は台湾のお菓子ですが中国でも人気ですし良いかもしれません。明明どうです。作れそうですか?
」
「舐めないでほしいの!材料費さえあれば明明に作れない物はないのね」
「よし。じゃあセットのお茶は茉莉仙桃(モーリーシェンタオ)
にしましょう」
「ああ、それ習いましたよね。ジャスミンの工芸茶」
「はい。工芸茶はジャスミンを使うものが多く茉莉仙桃(モーリーシェンタオ)は工芸茶でもよく出されます」
「うんうん。あ、もし試作する時に完成したら写真撮りたいな。印刷屋さんに頼んでポスター数枚作って店の前に看板置いとこうと思うの」
メニュー表作りも桃花がパソコンで作成している最中だ。
「ありがとうございます。私にはデザインや機械の才能はないので助かります」
緑仙は桃花に頭を下げる。
「いえ、それがしたくてここに来たんですから。それに今はスマホでもプロ顔負けの写真が撮れるんですよ」
そう言いながら自慢の食べ歩き料理のスクショを見せる。
桃花はあれから病院に行き、咳は改善された。
「さあ、お茶を準備しますので明明はお皿にカステラを並べて下さい」
そう談笑し桃花源の午後は過ぎていく。
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