23 / 45
十一本目 車中のトーク、夢中のチェイス
しおりを挟む
と、意気込んではみたものの、相手は空き巣なので今回もまた張り込みである。
その前に、皆で事件現場の確認をしておく。
警察の捜査によると、ホシは白昼堂々侵入している。入られた家は、荒らされた形跡はあるが、窓ガラスや鍵などをこじ開けた形跡はない。さながら正規の手順を踏んで開けたかのようで、ただの散らかった部屋みたいだ。だから昼間でも犯行が可能なんだろう。何しろ空き巣が一番恐れる音を出すことを、最小限に抑えることができるのだから。
一通り見て回ったので、作戦会議をしている。
「もちろん正規の手順なんて踏めるはずないですからね。これはキード確定でしょう」
「ああ。それじゃあここからは別行動だ。今回の犯人は三つの地区をランダムに漁っているようだ。そこで内海さんも入れた六人で、三ペアに別れる。有田川二人は北地区、私と犬斗君は南地区、理香ちゃんと榠樝ちゃんは西地区で、それぞれ張り込みだ」
「皆さん、よろしくお願いします。異能力対策課の、そして私の沽券のために、ひいては正義のために」
「榠樝はもう張り込みとかしたことあるの?」
「いえ、捜査に参加したりはしましたけど、張り込みは初めてなのです。だから、不謹慎ですが少しだけワクワクしているのです。それに理香と一緒だから」
張り込み中にガールズトークに興じる理香さんと榠樝さん。それでいいのか。そして今頃他の班はどうなっているのだろうか。
社用車で地区を巡回している。理香さんがもうキードを使っているので、見ればわかる。
「私はねー、実はもう何度もしたことあるんだよ。普段は事務仕事してるんだけどね。犯人捕まえて賞状も何枚か貰ったこともあるし」
「えー!それはすごいのです。なら、ここでは先輩ですね。よろしくお願いしますよ、先輩」
「えへへへ、先輩なんてサークルにいた頃依頼だから、なんか照れちゃうな」
張り込みの為の車の中には、優しい空間が広がっている。願わくば、この時間がずっと続きますように。
とは問屋が下ろさない。
「あ、あの人だ」
「え?!どれどれどれ?」
「そこのフード被って、大きなリュック背負ってる人。予想通り『開』の能力だ。鍵も何も無視して扉や窓などなんでも開けられる能力だって」
「よし、近づいてください。職質するのです」
ゆっくり近づいて停車し、榠樝さんが降りた。
「すみませーん、こんにちはー。少しお時間よろしいですか?」
懐から警察手帳を取り出して見せながら話しかけた。
「………………」
ダッ
瞬間、ホシが駆け出した。
「あ、待て!理香は車で進路を」
追いかけると同時に理香さんに指示を飛ばす
ビュンッ
が、理香さんは隣をすり抜けて行った。
「えっ?!ちょっと、あなたも降りてちゃ意味な、もー!」
今は口より足を動かす時だ。これでも二人とも中学時代からテニスでダブルスを組んでいて、全国優勝したこともあるのだ。運動神経には自信がある。グングンと距離は縮まっていく。ホシが後ろをチラッと振り向いた時には、もう後数十センチのところまで迫っていた。焦ったホシはスピードを上げる。だが、やはり敵わない。ついに手が届いた。
パチンッ
驚きで止まりそうな思考の中、理香はもう一度ホシの能力を読んだ。扉、窓などを絶対に開けられる。そしてもう一つ、さっきは関係ないだろうと切り捨てた、能力が。
ところで『開』には『ひらく』だけでなく、『はだける』という読み方がある。そう、もうお分かりでしょう。
「「キャーーー!!!!」」
もう一つの能力、それは、ボタン、ジッパー、肩紐、ホック、その他もろもろを、服を、開けさせる能力だ!
その前に、皆で事件現場の確認をしておく。
警察の捜査によると、ホシは白昼堂々侵入している。入られた家は、荒らされた形跡はあるが、窓ガラスや鍵などをこじ開けた形跡はない。さながら正規の手順を踏んで開けたかのようで、ただの散らかった部屋みたいだ。だから昼間でも犯行が可能なんだろう。何しろ空き巣が一番恐れる音を出すことを、最小限に抑えることができるのだから。
一通り見て回ったので、作戦会議をしている。
「もちろん正規の手順なんて踏めるはずないですからね。これはキード確定でしょう」
「ああ。それじゃあここからは別行動だ。今回の犯人は三つの地区をランダムに漁っているようだ。そこで内海さんも入れた六人で、三ペアに別れる。有田川二人は北地区、私と犬斗君は南地区、理香ちゃんと榠樝ちゃんは西地区で、それぞれ張り込みだ」
「皆さん、よろしくお願いします。異能力対策課の、そして私の沽券のために、ひいては正義のために」
「榠樝はもう張り込みとかしたことあるの?」
「いえ、捜査に参加したりはしましたけど、張り込みは初めてなのです。だから、不謹慎ですが少しだけワクワクしているのです。それに理香と一緒だから」
張り込み中にガールズトークに興じる理香さんと榠樝さん。それでいいのか。そして今頃他の班はどうなっているのだろうか。
社用車で地区を巡回している。理香さんがもうキードを使っているので、見ればわかる。
「私はねー、実はもう何度もしたことあるんだよ。普段は事務仕事してるんだけどね。犯人捕まえて賞状も何枚か貰ったこともあるし」
「えー!それはすごいのです。なら、ここでは先輩ですね。よろしくお願いしますよ、先輩」
「えへへへ、先輩なんてサークルにいた頃依頼だから、なんか照れちゃうな」
張り込みの為の車の中には、優しい空間が広がっている。願わくば、この時間がずっと続きますように。
とは問屋が下ろさない。
「あ、あの人だ」
「え?!どれどれどれ?」
「そこのフード被って、大きなリュック背負ってる人。予想通り『開』の能力だ。鍵も何も無視して扉や窓などなんでも開けられる能力だって」
「よし、近づいてください。職質するのです」
ゆっくり近づいて停車し、榠樝さんが降りた。
「すみませーん、こんにちはー。少しお時間よろしいですか?」
懐から警察手帳を取り出して見せながら話しかけた。
「………………」
ダッ
瞬間、ホシが駆け出した。
「あ、待て!理香は車で進路を」
追いかけると同時に理香さんに指示を飛ばす
ビュンッ
が、理香さんは隣をすり抜けて行った。
「えっ?!ちょっと、あなたも降りてちゃ意味な、もー!」
今は口より足を動かす時だ。これでも二人とも中学時代からテニスでダブルスを組んでいて、全国優勝したこともあるのだ。運動神経には自信がある。グングンと距離は縮まっていく。ホシが後ろをチラッと振り向いた時には、もう後数十センチのところまで迫っていた。焦ったホシはスピードを上げる。だが、やはり敵わない。ついに手が届いた。
パチンッ
驚きで止まりそうな思考の中、理香はもう一度ホシの能力を読んだ。扉、窓などを絶対に開けられる。そしてもう一つ、さっきは関係ないだろうと切り捨てた、能力が。
ところで『開』には『ひらく』だけでなく、『はだける』という読み方がある。そう、もうお分かりでしょう。
「「キャーーー!!!!」」
もう一つの能力、それは、ボタン、ジッパー、肩紐、ホック、その他もろもろを、服を、開けさせる能力だ!
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
一輪の廃墟好き 第一部
流川おるたな
ミステリー
僕の名前は荒木咲一輪(あらきざきいちりん)。
単に好きなのか因縁か、僕には廃墟探索という変わった趣味がある。
年齢25歳と社会的には完全な若造であるけれど、希少な探偵家業を生業としている歴とした個人事業者だ。
こんな風変わりな僕が廃墟を探索したり事件を追ったりするわけだが、何を隠そう犯人の特定率は今のところ百発百中100%なのである。
年齢からして担当した事件の数こそ少ないものの、特定率100%という素晴らしい実績を残せた秘密は僕の持つ特別な能力にあった...
マスキロフカ~楽園7~
志賀雅基
キャラ文芸
◆世にフェアは無し/世にフェアは無くても◆
惑星警察刑事×テラ連邦軍別室員シリーズPart7[全46話]
刑事・シドの幼馴染みの男女が訪れた。彼らも警察官でバディを組んでいるが近く結婚するという。そんな時に太陽系のハブ宙港があるタイタンで連続爆破テロが発生。テラ本星からの支援組としてシドとバディのハイファの二人だけでなく幼馴染みの男女も加わるが、男の方が罠に嵌められ囮にされてテロリスト・惑星警察側の両方から逃避行するハメになる。
▼▼▼
【シリーズ中、何処からでもどうぞ】
【全性別対応/BL特有シーンはストーリーに支障なく回避可能です】
【ノベルアップ+にR無指定版/エブリスタにR15版を掲載】
【WEB版】メイズラントヤード魔法捜査課
ミカ塚原
キャラ文芸
聖歴1878年、メイズラント王国。産業革命と領土の拡大に伴って、この国は目覚ましい発展を遂げていた。街にはガス燈が立ち並び、電話線が張り巡らされ、自動車と呼ばれる乗り物さえ走り始めた。
しかしその発展の陰で、科学では説明不可能な、不気味な事件が報告されるようになっていた。
真夏の路上で凍死している女性。空から落ちてきて、教会の避雷針に胸を貫かれて死んだ男。誰も開けていない金庫から消えた金塊。突如動き出して見物客を槍で刺し殺した、博物館の甲冑。
かつて魔法が実在したという伝説が残る国で、科学の発展の背後で不気味に起きる犯罪を、いつしか誰かがこう呼び始めた。
「魔法犯罪」と。
メイズラント警視庁は魔法犯罪に対応するため、専門知識を持つ捜査員を配置した部署を新設するに至る。それが「魔法犯罪特別捜査課」であった。
◆元は2008年頃に漫画のコンテを切って没にした作品です。内容的に文章でも行けると考え、人生初の小説にチャレンジしました。
神に愛された子供たち
七星北斗
キャラ文芸
この世界は神が存在し、特殊能力を持つ人間が存在する。
しかし全ての人間が特殊能力を持つわけではない。
無能と呼ばれた主人公の戦いがここから始まる。
なろう↓
https://ncode.syosetu.com/n6645fm/
ノベルアップ↓
https://novelup.plus/story/503317569
カクヨム↓
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894599135
千切れた心臓は扉を開く
綾坂キョウ
キャラ文芸
「貴様を迎えに来た」――幼い頃「神隠し」にあった女子高生・美邑の前に突然現れたのは、鬼面の男だった。「君は鬼になる。もう、決まっていることなんだよ」切なくも愛しい、あやかし現代ファンタジー。
本日、訳あり軍人の彼と結婚します~ド貧乏な軍人伯爵さまと結婚したら、何故か甘く愛されています~
扇 レンナ
キャラ文芸
政略結婚でド貧乏な伯爵家、桐ケ谷《きりがや》家の当主である律哉《りつや》の元に嫁ぐことになった真白《ましろ》は大きな事業を展開している商家の四女。片方はお金を得るため。もう片方は華族という地位を得るため。ありきたりな政略結婚。だから、真白は律哉の邪魔にならない程度に存在していようと思った。どうせ愛されないのだから――と思っていたのに。どうしてか、律哉が真白を見る目には、徐々に甘さがこもっていく。
(雇う余裕はないので)使用人はゼロ。(時間がないので)邸宅は埃まみれ。
そんな場所で始まる新婚生活。苦労人の伯爵さま(軍人)と不遇な娘の政略結婚から始まるとろける和風ラブ。
▼掲載先→エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう
※エブリスタさんにて先行公開しております。ある程度ストックはあります。
九龍懐古
カロン
キャラ文芸
香港に巣食う東洋の魔窟、九龍城砦。
犯罪が蔓延る無法地帯でちょっとダークな日常をのんびり暮らす何でも屋の少年と、周りを取りまく住人たち。
今日の依頼は猫探し…のはずだった。
散乱するドラッグと転がる死体を見つけるまでは。
香港ほのぼの日常系グルメ犯罪バトルアクションです、お暇なときにごゆるりとどうぞ_(:3」∠)_
みんなで九龍城砦で暮らそう…!!
※キネノベ7二次通りましたとてつもなく狼狽えています
※HJ3一次も通りました圧倒的感謝
※ドリコムメディア一次もあざます
※字下げ・3点リーダーなどのルール全然守ってません!ごめんなさいいい!
表紙画像を十藍氏からいただいたものにかえたら、名前に‘様’がついていて少し恥ずかしいよテヘペロ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる