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第百二話『僕はお願いする』

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 俺はアドルティスを促して仰向けにさせると、ガチガチに復活していたモノをもう一度アドルティスの中に沈めていく。なんかもう随分しっくりと馴染んで、一分の隙間もなくきゅっと包み込まれて、いかにも俺専用って感じがしてものすごく気持ちがいい。
 俺はまた最初の時みたいにあいつが怖がったりしないように、手を繋いでしっかりと顔を見ながらゆっくり、でも大きく腰を突き動かす。

「んあっ、はあっ、おくっ、おく、すごい、きた……ぁ……っ」

 抜けそうなくらいまで引き抜くと、赤く熟れた粘膜がなんとか抜かれるのを引きとどめようとするみたいに竿に纏わりついてくる。浅いところを何度も抜き挿ししてからもう一度こいつのイイところをえぐるみたいに奥まで一気に突き入れると、今までで一番深いところまで入ってアドルティスが激しく仰け反った。
 ほらな? もうだいぶ俺の形に馴染んできてるだろう?

 俺は鬼人だ。今までずっと本能だけで生きてきた。常識も世のことわりなんぞも知らないし、正直愛だの恋だのもわからない。それでもこいつは俺だけのものだし他の誰にも絶対に渡さねぇ。それだけは絶対だ。

 ガチ、と牙を鳴らして、腹の底から息を吐いて、過ぎる熱をなんとか逃がす。なのにきゅうきゅうと締め付けてくるあいつの秘肉をもっと奥まで味わいたくてたまらない。
 頭の角の辺りがちりちりと熱く焼けつくようだ。
 ああ、クソッ。もっと、もっと欲しくてたまらない。

「あっ、んっ、ラ、ラカン、ソコ、あっ、ひうっ」

 俺の下でアドルティスが死ぬほど気持ちよさそうに喘いで啼いている。だから俺も今回ばかりは遠慮もなくあの場所を何度も何度も突いてやる。

「ひあっ、あっ、ダメっ、くるっ、なんか、あっ! クるっ、きちゃう……っ!」

 アドルティスが眉を顰めて俺にしがみついてきたけど、それでもアドルティスのモノには触らなかった。だってこれ、触らなくても本気でイけそうじゃないか?
 さっき風呂場でオンナにしてやるとか俺も馬鹿なこと言ってたけれど、でもやっぱり驚く。本気かよ。男のくせに、男のモノで中突かれて、それだけで本当にイけるのかよ。そんなに俺に抱かれて嬉しいのかよ。

「ラカン、ラカン……っ」

 アドルティスが両足を俺の腰に巻きつけてぎゅっと締め付けてくる。俺はしがみつくアドルティスの指を絡めてもう一度手を繋ぎ、アドルティスの頭の上に縫いとめる。こうやって少し身体を離した方がちゃんとアドルティスが見えるから。

「あっ、あっ、すご……っ、ラカンっ、すごい、あっ、ラカンの、おれのなか、すごい、はいってるっ」
「わかるか? お前の中、出入りしてるだろう」
「わ、わかる……っ、んあっ、さきっぽ、ふといの、いったり、きたりしてる……っ、」
「お前のイイとこ、いっぱい突いてやるからな。アディ……っ」
「~~~~~っ!!」

 ふいに、アドルティスの身体が硬直した。頭の上で繋いだ俺の手をすごい力で握り締める。そしてびくびくっと痙攣したかと思うとアドルティスのいきり立ったモノからこぷっと精液が溢れ出てきた。それと同時に俺のモノもアドルティスの肉壁に締め付けられてまた射精する。
 すげぇ、本当にナカだけでイきやがった。それになんだ今の。ただぎゅって締め付けられるだけじゃなくて、中がビクビクうねってすごい勢いで根元から精液搾り取られたみたいな感じだった。こんなの正直生まれて初めてだ。ってさっきも同じこと言ってた気がするが、あんなのはメじゃない。なんだこれ。

 初めて後ろだけでイッたアドルティスはまだひくひく痙攣しながらぼんやりと宙を見ている。これが中イキってやつなのか? こんなにすごいものなのか。
 ダナンじゃ多分知らないヤツはいないくらい有名な、綺麗で有能でそっけなくて誰にも靡かなかったあのアドルティスが中イキって、マジで? 

 でも次の瞬間、こいつはほんとに俺のモノでオンナになっちまったんだ、と思った。途端にゾクゾクと得体の知れない何かが一気に背筋を駆け上る。そして、飲み屋で聞いたあの若い女たちの話を思い出した。

 この街で知らぬ者がいないほどの美形で、国一番の薬師に一番信頼されていて冒険者としても優秀で、なのにさっぱり浮いた話も出ないアドルティスを狙っている女は山ほどいる。
 エルフっていう種族は本当に特別で、並外れて優れた知恵と美貌と明らかに人とは違う浮世離れした佇まいはどうしたって人間たちを惹き付けて離さない。
 そんな優秀な種を我が物としたいと女たちが思うのは当然だし、自然の摂理と言ってもいいくらいだ。
 だからあいつが一人でいれば、それこそ花や火に惹かれる羽虫みたいに寄ってきてはあいつの気を引こうと延々話しかけたり触ろうとしたり、ひどいやつだと酔わせて既成事実を作ってやろうとやたら酒を飲ませようとするやつらだっている。

 けど残念だったな。こいつの摩羅は、こいつに惚れて憧れて恋人の座を狙ってる女どもを喜ばせることは一生ねぇ。
 俺は込み上げてくる笑みを抑えきれずに、口の端を上げる。
 酒場で女たちが話してたダナン一の美女だか魔性の女だか知らないが、お前らが本懐を遂げる日は一生来ねぇ。
 俺のモノで奥の奥を突かれて、もうこれ性器なんじゃないのかってくらいぐずぐずに蕩けた尻穴から香油と俺の精液を漏らして、ぐったりと無防備にだらしない姿さらしてるアドルティスを見下ろしながら、そんなどこの誰ともわからない女相手に俺は溜飲を下す。

 それと同時に、俺はついに、というかようやく自覚した。
 確かに、俺はこいつが言うのと同じ意味でこいつのことが好きなのかはまだわからない。でもこの凶暴で執拗で自分でもコントロールできないくらいの執着心は、どう考えたって普通のツレや相棒に対して抱く感情じゃない。
 そんな相手が、どうしてかはわからんが俺にメロメロで心底俺を欲しがってるなんてこんなラッキーなことないんじゃないのか?
 
 理想の女ってのは『昼間は淑女、夜は娼婦』だなんて言うらしいが、さしずめこいつは『昼間は最高に強くて度胸があって頼りになる相棒で、夜はやたら素直でエロくてかわいくてセックスに夢中な俺のオンナ』ってわけか。最高じゃないか。
 それに比べて俺はかなり最低なことしかしてない気がしないでもないが。まあこいつがいいって言うんだからまあいいか。

 びくびくと痙攣した後、開きっぱなしの口から唾液と一緒に蕩けきったため息を漏らして、アドルティスはそのままがっくりと頭を落とした。
 息はしてる。どうやら気絶してしまったようだ。気絶するほど良かったのか。すげぇなこいつ。

 根元まで呑みこんだアドルティスのソコからゆっくりと引き抜くと、中からどぷどぷと精液が溢れ出てきた。いくら鬼人族の吐き出す精は人間とは比べ物にならないくらい多いといっても、一体どれだけ出したんだ俺は。まあ二回分だもんな。『抜かずの何発』ってヤツだ。
 俺のカタチにぽっかり開いたソコがゆっくりと閉じていく。それがなんだか惜しくて、俺は親指の腹でそこをそっと撫でた。その時唐突に思い出した。しまった、こいつが好きだって言ってた、先っぽをここにくっつけるの、やってやるの忘れてた。
 何がいいのかはわからんが、でもあれが好きだと言ってたよな、こいつ。なんだっけ「ラカンくんとアディちゃんがちゅっちゅってキスしてるみたいじゃないか?」だっけ。

 そこまで思い出して俺ははた、と気づいた。
 そうか、こいつ俺とキスしたかったのか。

「……お前、そういうことはちゃんと言えよな」

 あの時に実際そう言われたとしても、自分が一体どんな反応を返していたかはわからんがな。我ながら勝手な男だな、俺は。
 気絶したままのアドルティスの半開きの唇を指でぷにぷにとつつきながら考える。
 果たして俺は本当に男と、というかこいつとキスなんてできるんだろうか。
 これだけセックスしといて何を馬鹿なこと言ってるんだと思われるだろうが、でもセックスとキスって違わないか? なんか、なんとなく。

 そこで俺は試しに眠ってるアドルティスに顔を近づけてみた。薄く開かれたままの、ピンク色の薄くて形のいい唇。これ、舐めたり吸ったりしたらすべすべして気持ちよさそうだな。さっき下でしゃぶって貰った時も、ものすごく気持ちよかったしな。
 そう思った途端気づいた。あ、全然イケるな、俺。キスなんて余裕。というか、したい。

 だがあとほんのちょっとで唇同士が触れるってところで俺は思い直した。
 どうせならこいつがちゃんと起きてる時の方がいいよな。その方がきっとこいつも喜ぶんじゃないか?
 俺との初めての口づけが、出だしレイプまがいのセックスのあげくに初めて中イキして、そんで頭ブッ飛んで気絶してしまった最中だなんてそりゃちょっとイヤだよな。少なくとも俺だったらイヤだ。
 しょうがない。キスは次回までお預けだ。

 ため息をついて俺はベッドの下に落ちてたシャツを拾って自分の股間を拭う。うわ、シーツがドロドロだな。これ剥がした方がいいよな、絶対。でもその前にこいつの身体を拭いてやってからだな。

 俺はエリザのばあさんの気配がないことを確認してから裸のまま風呂場に行ってざっとシャワーを浴びると、手桶にお湯をいくらか入れて、ついでに手拭いもお湯で絞って一緒に抱えて寝室に戻る。そしてまだ眠ったまんまのアドルティスの身体を拭ってやる。

 とりあえず目に付くとこは綺麗にした後、ベッドの横のキャビネットを見た。そこには見覚えのある小さな軟膏の入れ物が置いてあった。俺はアドルティスの身体をまたぐように手を伸ばしてそれを取る。そして蓋を外して中身を手のひらに出した。花か何かの匂いがする固い軟膏を手の中で暖めて伸ばして、気絶するように眠り込んでしまったアドルティスの手に塗りこんでやる。

 手や指が荒れないように、こうしてこいつがよく軟膏を指に擦り込んでいるのを俺は見て知っていた。
 別に美容とかお洒落のためとかそういうことじゃない。

 アドルティスは、国で一番と言われている薬師のラヴァン婆のお気に入りだ。なんでも薬の材料になる草や実の採取がものすごく上手いらしい。
 そういうのはただ引っこ抜いたり切ってこればいいわけじゃなくて、根だの葉脈だのを傷つけず、薬効を落とさず持ち帰るのが大事なんだそうだ。
 そのためには五感をフルに活用しなくちゃならなくて、あと指先の感覚も大事らしい。つまりこいつの指や手は大事な商売道具だ。万が一にもひび割れやあかぎれなんてこさえるわけにはいかない。そういうことだ。

 俺とは比べ物にならないくらい薄くて細くて白い両手がしっとりとするまで軟膏を塗りこむと、俺はアドルティスの顔を見た。ぐっすり寝てるな。疲労困憊って感じだ。って、なんか唇荒れてんな、こいつ。唇の真ん中あたりがちょこっとだけめくれている。

 俺は軟膏で湿った自分の手を見る。これって口にも塗っていいんだろうか。
 以前、こいつが薬草やなんかをラヴァン婆に納品するのについて行ったことがあった。その時、店番の若い娘とこういう軟膏の話をしていたのを聞いた覚えがある。手でも顔でも髪にも使えて便利ないいやつだ、って。
 その時には話半分にすら聞いていなかった俺にささくれや冬場のあかぎれにもいいからってそこの娘に押し売りされたやつがあった気がするが、あれどこにしまったっけな。

 そんなことを考えながら今度はアドルティスの片足を起こして股間を見る。すると後ろの穴からまた俺の精液が溢れてきた。
 細いけどちゃんと筋肉のついた男らしいアドルティスの両足に伝い落ちる、白い精液。
 ………………こないだ風呂場で初めて見た時も思ったけど、やっぱり相当ヤバイな。この光景。正直、気に入った。かなり。ものすごく。

 俺がよいしょ、と片足を抱えてその間に腰を据え、精液やら香油やらでドロドロになってるそこを親指でぐっと押し開いたが、アドルティスは起きる気配はない。揃えた二本の指をくぷ、と中に差し込んでゆっくりゆっくり肉壁を撫でるように中身を掻き出しても、アドルティスは低く唸っただけで起きなかった。よしよし。
 俺はにんまり笑うと、熱くぬかるむアドルティスのソコを指だのなんだのでたっぷり、とことん、心ゆくまで、堪能した。ほら、アレだ、後処理な。ハラ壊すといけないからな。他意はねぇって、本気マジで。そういうことにしとけ。



 アドルティスの身体は、初めはひんやりしてるのに抱いてるうちにゆっくりじんわりこっち熱があいつの身体に移って、そして俺に触れてる場所がどんどん熱くなっていく。
 その気持ちよさにぼんやりしてるといつの間にか酔いが回っていて最後にぐらっと来る。気づいた時にはもう手遅れってやつだ。
 つまりアドルティスの身体は綺麗な透明の清酒の冷やみたいで俺の好み。これが今回の結論な。

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