102 / 185
第百一話『僕は思い返す』
しおりを挟む「ねえ龍ちゃん。
勉強や技術を教えてくれている流民は、ここにいる人だけなの?」
「そんな事はないよ。
大陸中を探したら、百万人くらいいるかな?
いや、五百万人くらいかな?
よく知らないけど」
「みんな生活に困っていないの?
飢えたりしていないの?」
「どうかなぁ。
流民の事はよく知らないんだよね」
神龍の嘘だった。
そもそもこの国の人間の事も知らないのだ。
人間自体に、まったく興味がないのだ。
この国の守護龍となっていたのも、魔獣や魔族と戦いのが楽しかったのと、移動するのが面倒だったからだ。
「じゃあ流民を助けるのは無理なのかな?
龍ちゃんでも居場所が分からないのなら、困っている流民の人達に、この国に来てくれと言うのは無理なのかな?」
「無理じゃないよ。
僕にできない事はないからね。
使い魔や神龍鱗兵を使って、流民を集めるなんて簡単な事だよ」
神龍は強がって嘘をついてしまった。
多くの流民のなかから、一万人に激減した民の教師を探すことはできた。
自分の神力の及ぶ範囲にいる流民を連れてくる程度なら簡単だった。
だが、大陸中にいる流民全てを集めるとなると、神龍でも難しかった。
しかし、シャロンにできないという事は、神龍にはできなかった。
だから、また、戦いの女神セクメトに頭を下げることになった。
屈辱だったが、人間の事はセクメトに聞くしかなかった。
他の神に知り合いはいないし、明らかに自分よりも弱い神達に頭を下げるなんて、絶対に嫌だった。
どうしても頭を下げなければいけないのなら、自分が認める好敵手にしたかった。
それが女神セクメトだった。
「シャロン。
シャロンが女王として布告を出せばいいんだよ。
全ての流民を国民として迎え、国民として権利を与えると布告すればいいんだよ。
そうすれば、厳しい生活をしている流民は集まってくるし、他の地で豊かに生活している流民はその地に残るよ」
「そうなの?
私が女王として布告したら、流民の人達は助かるの?
だったらやるわ。
私のできる事は何でもやるわ」
神龍は女神セクメトに教えられたことを全て話した。
その話は、シャロンに大きな決断をさせた。
自覚がどれほどあるかは分からなかったが、女王として生きていく気にさせた。
それがこの国のためには大きな福音だった。
だが同時に、民が女王シャロンに依存する可能性があった。
勉強や技術を教えてくれている流民は、ここにいる人だけなの?」
「そんな事はないよ。
大陸中を探したら、百万人くらいいるかな?
いや、五百万人くらいかな?
よく知らないけど」
「みんな生活に困っていないの?
飢えたりしていないの?」
「どうかなぁ。
流民の事はよく知らないんだよね」
神龍の嘘だった。
そもそもこの国の人間の事も知らないのだ。
人間自体に、まったく興味がないのだ。
この国の守護龍となっていたのも、魔獣や魔族と戦いのが楽しかったのと、移動するのが面倒だったからだ。
「じゃあ流民を助けるのは無理なのかな?
龍ちゃんでも居場所が分からないのなら、困っている流民の人達に、この国に来てくれと言うのは無理なのかな?」
「無理じゃないよ。
僕にできない事はないからね。
使い魔や神龍鱗兵を使って、流民を集めるなんて簡単な事だよ」
神龍は強がって嘘をついてしまった。
多くの流民のなかから、一万人に激減した民の教師を探すことはできた。
自分の神力の及ぶ範囲にいる流民を連れてくる程度なら簡単だった。
だが、大陸中にいる流民全てを集めるとなると、神龍でも難しかった。
しかし、シャロンにできないという事は、神龍にはできなかった。
だから、また、戦いの女神セクメトに頭を下げることになった。
屈辱だったが、人間の事はセクメトに聞くしかなかった。
他の神に知り合いはいないし、明らかに自分よりも弱い神達に頭を下げるなんて、絶対に嫌だった。
どうしても頭を下げなければいけないのなら、自分が認める好敵手にしたかった。
それが女神セクメトだった。
「シャロン。
シャロンが女王として布告を出せばいいんだよ。
全ての流民を国民として迎え、国民として権利を与えると布告すればいいんだよ。
そうすれば、厳しい生活をしている流民は集まってくるし、他の地で豊かに生活している流民はその地に残るよ」
「そうなの?
私が女王として布告したら、流民の人達は助かるの?
だったらやるわ。
私のできる事は何でもやるわ」
神龍は女神セクメトに教えられたことを全て話した。
その話は、シャロンに大きな決断をさせた。
自覚がどれほどあるかは分からなかったが、女王として生きていく気にさせた。
それがこの国のためには大きな福音だった。
だが同時に、民が女王シャロンに依存する可能性があった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎毎日朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
恋愛
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる