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プロローグ
キリング・ウェーブ
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「キリング・ウェーブ」
少し先の未来、東京にて……。
「ウェーブ、2つ先の交差点を左へ」
無線の向こうから、マダムのハキハキとした声が聞こえる。年の割には声がしゃがれていない。いつ頃からか皆がボスのことをマダムと呼ぶようになり、すっかり浸透してしまった。
「了解」
キリング・ウェーブの異名を持つ男、音崎蒼波。彼は日本の諜報部隊、スサノオのエージェント。スサノオの特殊装備、ウェーブスーツを誰よりも上手く使いこなし、確実に任務を遂行する……。
男は狭い路地を抜け、怪しげな小屋へと入っていった。
「追跡して」
音崎はブーツの両サイドをタップし、スニークモードを起動する。スニークモード起動中は、エアコンの防音やイヤホンのノイズキャンセルと同様の原理で、走っても足音が一切しない。少量ではあるが電力を消費するため、普段はオフにしている。男は一度背後を見た後、テーブルの上にあるパソコンにUSBメモリーを差し込む。そして、携帯電話を操作しつつ、別の部屋へと移っていった。音崎は男が電話に気を取られている隙に、距離を詰める。
「はい、ただ今転送しました。それでは……」
男が電話を切った瞬間、音崎は男の両耳を手で塞ぎ、すかさず音波を放つ。
男はそれに反応する間もなく、気絶した。
しかし、それとほぼ同時に、音崎は自身に向けられた殺意を感じた。
「アームド」
音崎の背後から放たれた弾丸は真っ直ぐな軌道を描き、振り向いた頭部に命中した。半歩下がり、背後に仰け反るウェーブ。その頭部はウェーブスーツから展開されたヘルメットで覆われており、ウェーブは多少の痛みを感じつつも、絶命するには程遠い状態であった。ゆっくりと身体を起こすと同時に、先程までは目立たぬように収縮させていたスーツが膨張し始める。弾丸を放った敵をモニター越しに両目に捕えると、瞬時に右足を踏み込み、相手に接近する。数発の弾丸がウェーブに命中するが、それらはスーツにより弾かれ、火花を散らしただけであった。ウェーブは右大腿部のベルトからナイフを抜き取る。左手で敵の銃のバレルを掴み、ナイフで喉を攻撃しようと試みた。だが、敵は咄嗟の判断でナイフの刃を手で掴んだ。
(……測定完了)
ナイフは突然振動を始め、敵の手と喉を豆腐のように軽々と切断した。共振による攻撃……。これこそがウェーブスーツの特筆すべき点である。ウェーブが使用したナイフは、ウェーブナイフという特殊装備。掌紋認証により作動し、振動させることができる。敵との戦闘中に計測した固有振動数に合わせた振動で共振を起こすことにより、ナイフで攻撃した箇所が大きく振動し、崩壊していく。これにより、防刃ベストや自動車のフレームのようなものであっても、容易に切断することが可能となる。
少し先の未来、東京にて……。
「ウェーブ、2つ先の交差点を左へ」
無線の向こうから、マダムのハキハキとした声が聞こえる。年の割には声がしゃがれていない。いつ頃からか皆がボスのことをマダムと呼ぶようになり、すっかり浸透してしまった。
「了解」
キリング・ウェーブの異名を持つ男、音崎蒼波。彼は日本の諜報部隊、スサノオのエージェント。スサノオの特殊装備、ウェーブスーツを誰よりも上手く使いこなし、確実に任務を遂行する……。
男は狭い路地を抜け、怪しげな小屋へと入っていった。
「追跡して」
音崎はブーツの両サイドをタップし、スニークモードを起動する。スニークモード起動中は、エアコンの防音やイヤホンのノイズキャンセルと同様の原理で、走っても足音が一切しない。少量ではあるが電力を消費するため、普段はオフにしている。男は一度背後を見た後、テーブルの上にあるパソコンにUSBメモリーを差し込む。そして、携帯電話を操作しつつ、別の部屋へと移っていった。音崎は男が電話に気を取られている隙に、距離を詰める。
「はい、ただ今転送しました。それでは……」
男が電話を切った瞬間、音崎は男の両耳を手で塞ぎ、すかさず音波を放つ。
男はそれに反応する間もなく、気絶した。
しかし、それとほぼ同時に、音崎は自身に向けられた殺意を感じた。
「アームド」
音崎の背後から放たれた弾丸は真っ直ぐな軌道を描き、振り向いた頭部に命中した。半歩下がり、背後に仰け反るウェーブ。その頭部はウェーブスーツから展開されたヘルメットで覆われており、ウェーブは多少の痛みを感じつつも、絶命するには程遠い状態であった。ゆっくりと身体を起こすと同時に、先程までは目立たぬように収縮させていたスーツが膨張し始める。弾丸を放った敵をモニター越しに両目に捕えると、瞬時に右足を踏み込み、相手に接近する。数発の弾丸がウェーブに命中するが、それらはスーツにより弾かれ、火花を散らしただけであった。ウェーブは右大腿部のベルトからナイフを抜き取る。左手で敵の銃のバレルを掴み、ナイフで喉を攻撃しようと試みた。だが、敵は咄嗟の判断でナイフの刃を手で掴んだ。
(……測定完了)
ナイフは突然振動を始め、敵の手と喉を豆腐のように軽々と切断した。共振による攻撃……。これこそがウェーブスーツの特筆すべき点である。ウェーブが使用したナイフは、ウェーブナイフという特殊装備。掌紋認証により作動し、振動させることができる。敵との戦闘中に計測した固有振動数に合わせた振動で共振を起こすことにより、ナイフで攻撃した箇所が大きく振動し、崩壊していく。これにより、防刃ベストや自動車のフレームのようなものであっても、容易に切断することが可能となる。
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