【完結】雇われ勇者の薬草農園 ~チートスキルで薬草栽培始めます~

近衛 愛

文字の大きさ
上 下
130 / 188
第8章 変わってしまう日常編

【雇用№129】魔族襲撃 後始末編2

しおりを挟む
 僕は急いで、倉庫に向かっていった。今朝までは、棚に綺麗に整然と並べられていたポーションの入った瓶が殆どなくなっている。入口の方に置いてあったリヤカー2台もなくなっている。

 どうやら、チルとウェルザさん、モニカちゃんは即効性の高い液体のポーションを積めるだけ積んで持って行った様だ。こうなると僕は、袋に入れて持ち運ぶしかないのだが、それだとここと街を往復する必要があるし、なにより、割れるのを心配して注意しながら歩がなくてはいけない。

「はー、こういう時は地球がありがたいかな。瓶じゃなくて、プラスチックのペットボトルだから、嵩張らないし、重くないし、割れもしないんだから。錠剤タイプのものは袋に入れて問題ないとして、瓶の方は異空間に入れて持ち運ぶ方がいいか。」

 精霊術を用いて、異空間を出そうとする。

『時空の精霊たちよ。精霊ティタニアの名の元に、異次元の空間をつなげん。異次元ホール』

「あれ?なんでだ?異空間が繋がらないぞ。」

「パパ、ティタニアママは、この時代にいないのですから、精霊に呼びかけても、お願いを聞いてもらえませんよ。」

 肩の上にちょこんと座っていたノエルが耳元に向かって話しかけてくる。

「ノエル。そういうもんなのか?精霊術って?形式状の言葉だとばかり思ってだけど。」

「そうですわ。魔法のことはわかりませんが、精霊術では少なくともそういうことになってます。ですから」

『時空の精霊たちよ。精霊ノエルの名の元に、異次元の空間をつなげん。異次元ホール』

 ノエルが異空間を開く精霊術を発動した。

ノエルの前にちょっとした小さな異空間が開かれる。

「てことですよ。パパ。この場にいない精霊の名前を出しても、効果はありません。逆に私は今この場にいますので、私の名前を使えば精霊術が発動する訳です。」

「なるほど。ノエル助かったよ。異空間には色々と重要なものを入れていたから、取り出せなかったら大変なことになるとこだった。」

「パパのお役に立ててノエルは嬉しいですね。」

「じゃー僕ももう一度精霊術で異空間を繋げてみるか。ノエル、名前を借りるよ。」

「パパなんですから、遠慮なく使って下さい。」

『時空の精霊たちよ。精霊ノエルの名の元に、異次元の空間をつなげん。異次元ホール』

 中くらいの異次元ホールが僕の目の前に現れた。

「あーやった。問題なく異空間にものが収容されて出来るよ。ありがとう。ノエル」

「うふふっ、どういたしまして。パパ様」

「でも、ちょっと違和感があるな。異次元空間の大きさが前に使っていた時よりも大分小さくなった気がする。異空間の中の大きさも、なんだか前より小さい気が。。。」

「パパ、異空間の入口や中の広さは、使った方の気の大きさに依存しますわ。でも、そんなに違うはずはないのですが……。」

「もしかして、『ティタニアが時の巻き戻しの術』を、使う際に僕の気をもらうって言ってたからかな。」

「うむむむむ。。。私には分かりませんわ。ごめんなさい。パパ」

「いやいやいいよ。チルも精霊術を使えるから、チルに試してもらったら色々と分かるだろう。」

「チルお姉ちゃんも使えるんですね。」

「そこも詳しくノエルに話しときたいけど、今は住民の人達を、助けに行かないとだから。また後でね。」

「はい。パパ」

 僕とノエルは異空間の中に瓶に入っているポーションをなるべく入れていく。倉庫にあったポーションは全部入れた。街の人に不審に思われない様に袋に2~3本は入れておく。なくなったら、人影のない場所で補充すれば良いのである。
 
「さて、準備は出来たけどどっちに行けば良いのだろう?」

「うーん、なるべく被らないように皆さんとは別の方向に行きたいとこですよね。」

「そうなんだよね。ひとまずは、街の方に行ってみよう。ノエルは、一応姿を隠せる様にしておいて。念のため、ポケットに入っててね。」

「はい、パパ」

 僕とノエルは二人とも街に向かって動き出した。

『疾走』

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 街に入ると、あたりは酷い有様だった。朝までは、綺麗な住宅街だったのに、家は壊れ、火は燃え上がり、人々は泣き叫ぶ、そんな光景があった。

 これは本当に前回とは比較にならないほどの被害だな。ウェルザさんとモニカちゃんがポーションを配って…傷の手当てをしていた。

「ウェルザさん。どんな様子ですか?」

「見ての通り酷い状態です。ポーションで治りそうな人には、分けてますけど。間に合わなかった人もいるので……。」

 ウェルザさんは、視線を別の所に移した。そこには、女性の人が倒れていて、血が地面に広がっている。泣き叫んでいる子供がいる。

 子供の親がなくなったのだろうか?精霊術を使えば持ち直せるかもしれない。そう思って、その子の元は行こうとした時、ウェルザさんに手を掴まれた。

 ウェルザさんが首を振った。

「リュウさん。私達に出来ることは、そんなに多くありません。火を消さないと燃え広がるのも分かってます。家財がないとこれから大変なことも………。」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...