【完結】雇われ勇者の薬草農園 ~チートスキルで薬草栽培始めます~

近衛 愛

文字の大きさ
上 下
83 / 188
第6章 精霊樹の苗木 準備編

【雇用№82】薬儒の森  大きな穴と熊の死骸2

しおりを挟む
 魔霊樹の件についていくつかティタニアと話していたら、チルが目をさました。

 目をこすりながら、言ってくる
「リュウ兄ちゃんおふぁよう。」

「あぁ、チルおはよう、昨日はよく頑張って寝ずの番してくれたね。お蔭で助かったよ」
 僕は、身体を起こしてチルの頭を撫でて上げた。

「みんなが頑張って、そのボス熊を倒してくれたんだもん。私だって、出来ることをやらないとね。でも嬉しい。」

 と言って、チルはもっと撫でてと言わんばかりに僕の胸に頭を付けてきた。


「さっ、チルも起きたことだし朝ごはんでも食べようか。結局昨日の夜は何も食べずにそのまま食べたからお腹ペコペコだよ。」

「私も~、少し携帯食食べたけど、やっぱり美味しいものが食べたいもん。」

「だよな~、結構この場所って、いいとこだよな。日が射してよくわかったけど、果物が豊富に木になっているし、熊がここを根城にするのもわかるよね。さっ、みんなで朝食拾ってこよう」

「うん」

 色々木になっていた。チルに名前を聞くと、モモン、ナシン、リゴン、マスカンなど地球で見る果物が沢山とれた。

「う~~ん、美味しい。すっごく甘くて美味しいよ。リュウ兄ちゃん。これみんなにも持って帰ってあげようよ。」

「そうだな。これだけ美味しいものだと、僕達のいない間頑張っているみんなにも食べさせてあげたいよな。」

 隣では、ウリとボスが床に置いてある果物をバクバク食べている。ティタニアはモモンを皮を剥いて、齧りついている。もう体が汁でベトベトになってるぞ。

「はぁ~~~、もうお腹いっぱいだよ。もう眠くなってきたよ」

「チル、これからがメインの目的だぞ、ちょっとがんばったら、またすぐお昼で美味しいもの沢山食べられるぞ。」

「えっ、本当リュウ兄ちゃん!?」

『ぶぎゅっ、ぶぎゅぶぎゅ~~~』
「なになに。我々が出来ることはなさそうなので、一旦巣に戻って家族たちをこの地へ連れてくる、だって」

「ああ、わかったよ。僕たちはまだしばらくここで作業しているから行ってくるといいよ。」

 ボスは一匹で、仲間を連れに戻っていった。ウリはどうやらここでお留守番のようだ。完全にティタニアのお馬さんと化している気がする。

「じゃ~チルまずは、穴の中の熊の死骸を全部、穴の外へ出すぞ。それが終わったら、穴を一旦全部埋める。」

「リュウ兄ちゃん。本気、?あの熊を全部運ぶって、私は絶対出来ないよ。」

「大丈夫だって」

 そういって二人は穴の中に入っていった。穴の中は木や、熊の死骸、石ころでごたついている。自然災害の現場並だなこれは。

「う~~ん、結構手間がかかりそうだな。足場も悪いし熊も木の下敷きになってたりするしな」

「そうだよ。リュウ兄ちゃん。私達二人しかいないのに、こんな重いもの運べないよ。」

「チル忘れているだろう。僕たちは一晩寝て魔力は回復してるんだ。」
『浮遊』
 僕は対象範囲を穴の中全体にして、魔法をかけた。一つ一つやってたら、きりがないのでまとめてね。

「ほら、これで、僕達でも運べるよ」
 と言って、熊の上に乗っている大木を持ち上げて、穴の隅へ運んでいった。

「最近特にだけど、もう、リュウ兄ちゃんの魔法ってなんでもありだよね。この魔法だけでも、建築業界や行商人たちから引っ張りだこだよ。」
 と、チルがその光景を見て呆れて言った。

「いやいや、僕が知ってて、出来ることだけだよ。実際、ボス熊相手にはまったく効かなかったしな。」

 そう、結局は最後に『魔女の一撃』のスキルを連発して、ごり押しで倒したのだ。その弊害は今のインターフェースに表示されている。
『魔女の一撃:使用人数 9人』

 うん、どっかで計算を間違えたのか、カウントを間違えたのかわからないが、残り1回を使用すれば、『人を呪わば穴二つ』が適用され、僕自身にも『魔女の一撃』の効果である『ぎっくり腰』が発生してしまうのだ。

 魔王や、どこぞの四天王を相手にしているわけでもなく、辺境のただの群れのボス熊相手にこのありさまである。正直今のままでは、魔王と相対しても倒せる見込みはまったくない。
 1対1なら、魔女の一撃でなんとかなるが、それでも相打ちである。先に立った方が勝つというなんとも分の悪いかけになってしまう。

 僕は魔王を倒すことが目的ではない。それはあくまで、地球に日本に帰るための手段なのだ。手段のために、命を懸けていては、目的が達成できないではないか。

「はぁ~~~っ、もっと殺傷能力の高い魔法を使えなきゃこれから難しそうだな。」

「いや、それ以上の殺傷能力って。。。リュウ兄ちゃん。そういえばどうやって倒したの。ティタニアちゃんが熊が突然苦しみだして、倒れたって言ってたけど、最後のとこを聞いてないんだよね。二人で特攻しようとしたのは聞いたけど」

 話ながら、着々と熊と瓦礫の仕分けを進めて行く二人。

「最後はね。『アース・スパイダーネット』と『ミネラルウォーター』を使っての、呼吸困難による窒息死だよ。」

「えっ、それって回避不能じゃないの?初めからしてたら、楽に倒せたんじゃ?」

「それがそうもいかないんだよ。『ミネラルウォーター』」
 とチルの口の前に持っていったけど、チルはすぐさま口を閉じて、手を前に持ってきていた。

「こういうことだよ。元気な相手だと、そもそも、窒息させるまでの仕掛けが出来ないんだよ」

「そういうことなんだね。たしかに私もイキナリ何かが飛んで来たら警戒するものね」

「そういうこと、弱らせて、拘束して、ようやく出来たんだよ。それに気づいたのもギリギリだったし。それがなかったら、特攻して、どうなっていたかはわからないな」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

婚約破棄追追放 神与スキルが謎のブリーダーだったので、王女から婚約破棄され公爵家から追放されました

克全
ファンタジー
小国の公爵家長男で王女の婿になるはずだったが……

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...