【完結】雇われ勇者の薬草農園 ~チートスキルで薬草栽培始めます~

近衛 愛

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第2章 魔族襲撃編

【雇用№014】雇われ勇者 魔族襲来 再び

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 インプはまだ見る事は出来るが、デーモンだとかなり醜悪だな。
 僕は遠距離タイプなので、防具もないし接近戦の技術もないのでご遠慮願いたいな。でも、許してくれそうにないな。

 後ろには傷ついた母と子もいる。僕を狙って攻撃するなら恰好の的だ。
 魔法に関しては、あくまでマジックプログラミングで作成したものなので、規定時間、規定量、規定サイズ等の様々な制約があり、本場の魔法使いの人のように状況に応じた調整ができない。

 遠隔での攻撃なら、ユーザーインターフェースを通じて、外部入力で調整は可能なのだが、今回はユーザーインターフェースをちまちまと触っている暇はない。
 手持ちで使える無詠唱の呪文と、UIに登録してある、コマンドキーで放つしかない。

『疾風』の呪文で移動速度自体は上昇しているが、思考能力や動態視力が上昇しているわけでもないので、やはり接近戦は回避したいな~~。

 ひとまずは、庇護対象をなんとかしよう。
『我を守る盾よ。アースシールド』*3連発。
 |○|
 |-|  ○:庇護対象   |:土壁

 これで母子の周囲3方に土壁は出来た。これでデーモンだけに集中できるぞ。
 おっと、呪文詠唱している間に空中旋回しながら、爪で襲ってきやがった。

 相手を倒そうとしてはダメだ。
 僕は止まっている相手なら、倒すための攻撃は出来る。相手は空中を旋回している。
 軌道予測が難しい魔物相手に、一撃で倒すような攻撃は出来ない。

 魔法での攻撃は、対象設定と詠唱時間があるのでやっぱり厳しい。
 となると、長刀での回避行動か。右足を前に出し、正中の前で、長刀を構えた。
 相手が線で飛び込んできた。点での攻撃は不可能、線に対して線で当てる。

 長刀を右回転させ、相手を払う。
 刃先はあたらなかったが、柄の部分を当てることに成功する。
 デーモンは胴体にあたったため、体勢を崩しながら、上空へ飛んでいく。

 ふ~、ひとまず危機は一旦回避した。逃げるだけなら、僕もアースシールドで防御して応援くるまでやりたい。でも、インプとは違って、スピードも耐久力も攻撃に関しても上だ。
 前回の襲撃では人死にはなかったけど、今回はそうはならないかもしれない。

 勇者と名乗って、人類を守るみたいなテンプレ勇者とは、僕は違う。
 女神に勝手に雇われただけの『雇われ勇者』だ。

 でも、だからと言って、目の前で人がなくなるのを無責任に見ていられるほど強くはない。
 ここでもうちょっとだけ勇気を振り絞ってなんとか撃退するんだ。今なら空中をまた旋回しだしている。呪文を唱えている暇はある。

 対象をデーモンに設定、属性は火、形状は光線の『ヒートショット』をお見舞いしてやる。
 指先からでた熱線がデーモンにあたるかと思いきや、何かが来ると思ったのか、経路を少し変え回避してきた。

「避けてきたか、でもそんなの僕には関係ないね」
 熱線の出ている指先をデーモンの方に少しずらす。
 熱線でのデーモンへの貫通はなかったが、2枚あるうちの片方の翼に当てることはできた。

『ジューッツ』
 少しだけ羽根を焼き切ることができた。デーモンの速度が落ち、飛行がふらふらと定まらなくなってきた。そして、また、体勢を立て直すためにフラフラと上昇していく。インプとは違い、魔法にも耐性があるのか?インプなら多分この熱線でも切り裂くことは出来るのに。

 また、空中旋回しだした。どういうことだ?
 ふらついて、もう僕に攻撃しても当たらない気がするのに。あっ、別の場所に目を向けて飛び去って行こうとしている。

「まずい。手負いでも一般人だと非常にまずい。ここでなんとか仕留めないと。あと地味に他のデーモンがこっちに向かってきている。1対1でも厳しいのに。手負いとピンピンしてるやつの2面での戦闘はまずい。ここで仕留める『ヒートショック』」

 熱線がデーモンの飛行先を進んでいくが、ふら付き乍らもデーモンはそれを避ける。
 指先を動かし、同じようにしてあてる。今度は反対側の羽にあてた。
 これで飛行は出来まい。デーモンはくるくると回転しながら、地面に落下して激突する。
『バっちゃ~~ん』

 墜落した衝撃で、立上がりこそはしないが、死んでもいない。
「ここで確実にとどめをさす!!」
 しかし、次のデーモンがこちらを発見し、爪を前に出しながら、一直線で飛行して向かってきた。
「ちっ、もうちょっとのとこっだったのに、次がもう来たよ」

 さっきとは違い、まだ少し時間の余裕はある。
 熱線だと、あのスピードでは、仮に当てたとしても、こっちにぶつかって来て危険だ。
 魔法を詠唱・発動しながらの回避行動は、1回に2手同時にするようなものなのだ。慣れていない僕には、そんな高度なことは出来ない。

 かと言って、長刀での旋回での回避は、あのスピードでの突進では、当てる自信はない。
 なら、あのスピードでの突進を利用してやる。もう、少し相手が回避出来ないくらいのタイミングで。。。。

 ここだ。
『アースシールド』
 高さ2mの土壁が、僕とデーモンの間に突如出現する。相手がそれを視認し、回避しようとするも、スピードが速すぎて間に合わない。

 土壁に爪が当たり激突する。
『ガッ、ガシンっ、バタン』

 爪が土壁に刺さり、突進のスピードでは腕にかかりあらん方向に曲がった。それでは吸収出来なかった衝撃で、デーモンの体は頭を下にして、土壁に叩き付けられる。身体が壁に叩きつきられた衝撃で、壁に刺さっていた爪が外れ、地面に落ちた。
 衝撃でピクピクとしている。

「ふぅ~、上手くいってよかった。さて、次の増援来ないうちに今度こそ止めを刺す」
 長刀を上段に構え、横たわっているデーモンの首を目がけて、振り下ろす。

『バスッ』魔猪やインプみたいに切断できるかと思えばできなかった。
 切れるは切れるが切断まではいかない、首半ば、骨のあたりで止まってしまった。

 精霊樹の長刀でも、多少効果はあるけど、魔族の格が上がると、効果が薄くなっているな。

 切断はできなかったが、デーモンは絶命していた。ひとまずは考えるのは後だ。さっきの手負いを『疾風』を使い、傍に行って長刀で止めをさした。

「これでようやく2匹目か。」
 戦闘に集中していたため、先ほどまでは聞こえなかった周囲の音が聞こえてきた。

「い痛いよ~誰か助けて、死んじゃうよ~」 と女の子の声。
「あっちにデーモンが2匹現れた。戦えるやつは、宿屋の方に来い」
 と中年の男性の声が。

「だ誰か~ポーションを持っていないか、嫁が、嫁がインプにやられて、血がでてるんだ。早くしないと」と、ふっくらした男性の声が。

 どっどうする?どうしたらいい?誰を助ければいいの?デーモンやインプを倒した方がいいのか?
 わからん。前から思ってきたけど、突発的に起こるイレギュラーな事態は嫌いだ。
 優先事項が全部高すぎて、何から手をつけていいのかわからなくなる。
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