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風土病にはご用心7
しおりを挟む私は足が痛いのを我慢して立ち上がった。座りながら、投げても地表には届きそうもないんだよ。
私は、そっと右手の掌に青い小人さんを置いた。小人さんは、気持ちの準備はOKだよ、いつでも飛ばしてねと言わんばかりに私の方ににっこりと笑顔を向け、敬礼をした。
「小人さん、じゃー投げるね。後はよろしく。3.2.1,・・・0」
の掛け声で小人さんを投擲した。
と言ってもね、野球の選手みたいに豪速球で投げた訳じゃないんだよ。アイドルの始球式の様にふんわり柔らかく山なりのカーブを描く様にね。布で衝撃が緩和出来る様に地面よりは少し高めに、さりとて高く投げすぎるのもそれはそれで問題なので、適度に小人さんに優しい設計にて。
ひゅーっと空を青い小さな物体が飛んでいき、穴を出たと思ったら、パーっと布が広がり、空気を受け止めて足跡のパラシュートに早変わり。ゆらゆらと揺れながら、地表へと落ちていった。
最後の方は角度の問題で見えなかったんだけど、あれなら無事だよね。
暫くすると、青い小人さんが穴を覗き込み、小さく丸と腕で作ってきた。すると……
他の小人さんも我も行くと私の前に一列に勢揃いなんだよ。私は赤い小人さんを投げ、他の小人さんも投げ、最後に紫の小人さんを投げた。
足が痛いので、終わった瞬間、濡れた落ち葉の上に座り込んでしまったんだよね。ちべたい、そして気持ち悪い。早くお家に帰って、着替えてしまいたいんだよ。
小人さん達は、全員が穴から出ると、ボディランゲージにて、「少し待っててね」といつまできたんだよ。
「うん、分かったよ。小人さん達お願いね。でも、無理しないで、危ないことはしちゃダメだよ。」
分かったとばかりに、小人さん達は、私の方を向いて敬礼して、穴から離れていった。
さーっ、これからどうしようかな?話し相手になる小人さんもいなくなっちゃったし、魔法は、『7人の小人』を発動してるから、他の魔法は使えないしね。
私は、痛い足を手当てしながら、小人さん達を待つことにしたんだよ。それから数石後、上から緑色の縄の様なものがするすると降りてきた。
それは、頑丈なツルで編まれた細い縄だったんだよ。そして、先端には、青い小人さんがぐるぐる巻きにされて降りてきた。
私は、緑の縄の先端が落ちてくる所まで移動して、青い小人をさんをキャッチしたんだよ。
「おかえり。小人さん、すごいねこのツル?縄?もしかして、みんなで頑張って作ったの?」
青い小人さんは、ニコッと笑いながら、コクンと頷いた。
「へー、みんな頑張って来れてんだね。ありがとう。」
私は、左手の人差し指で、青い小人さんの頭をヨシヨシと撫でてあげた。それにしても、小人さん達、こんな短時間で丈夫な縄を作って来れたんだね。空を見上げると、お日様は見えなくなってきていて、辺りが涼しくなってきてた。
私は、小人さんに巻きついている縄を解いて、その解いたものを、私の腰に巻き付け、解けない様に固結びをして、きっちりと弛まないことを確認したんだ。
後はこの穴を縄を頼りになんとか登るだけなんだよ。
私はツタを軽く引っ張って、ちぎれないことと、私の体重を乗せてもツタが引き摺られて落ちてないことを確認したんだよ。
「よし、安全確認はバッチリ、じゃー登るよ。小人さん落ちない様にしっかりと捕まっててね。」
肩に乗った青い小人さんがコクンと頷き、私の服のヒダをしっかりと握る。
私は少しずつ、腕の力を力を使って登っていくんだよ。でも、テレビでみたアスリートみたいに腕の力でだけっていうのは女の非力な私では到底無理なんだよ。
だから痛い足を壁につけて、腕と足で体を支えて少しずつ登っていくんだよ。それにありがたいことに微力ながら上にいる残りの6人の小人さん達が引っ張ってくれているみたいなんだ。
「はーっ、はーっ、ようやく登れたよ。ありがとう小人さん達。」
と穴からなんとか登れた私は、地面にそのまま倒れ込んだんだよ。
もうね、腕がパンパンで何度ツルを離そうと思ったことか。でも小人さんも手伝ってくれてらから、なんとか我慢して我慢して登ったんだよ。
外に出たら、もうお日様が沈みかけで、崖は紅く染まっていたんだよ。もうじき夜になるんだよ。街灯もない、スマホもないこの異世界では、星の明かりや月のほのかな明るさによって夜道を照らすんだよ。
山の中を真っ暗の中歩くなんてのは無謀だよね。マッシュ兄さんが仮に迎えに来るにしても、昼間ならともかく、夜の真っ暗な山の中を探しに来れるわけがよく考えてみたらなかったね。
あの時はいい考えだと思ったんだけどなー。今考えると穴が一杯空いてたや。でも、そうなると余計にお父様の元に薬が届くのが遅れた訳だし、判断は間違ってなかったと思う。私がピンチになってるだけで。
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