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風土病にはご用心4
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「ペチャっ」
穴はかなり深かった。手を伸ばしても地面を掴むことは出来そうにないんだよ。それに運が良い下がったのか、悪かったのか分かんないんだけど、落下した先には、落ち葉がいっぱい積もっていてクッションになってくれたんだよ。
お陰で骨折とかはしなくて済んで助かったんだよ。でもね、水が溜まっててその場所に落ちたからね。言わなくても分かるよね。
そう、服も下着も濡れてしまった。お陰で、下着が肌にくっついて気持ちが悪い。
「キャロットちゃん。私は大丈夫だよ。この通り無事だよ。」
と立ちあがろうとして、
「イタッ」
「お姉様大丈夫ですの?」
「うん、大丈夫だけど、足をちょっと捻ったみたいで歩くのは難しいかな。」
「キャロットどうしたんだ?」
マッシュ兄さんが、何かあったのかと大声で叫んでくる。
「お兄様、アカネお姉様が落とし穴に嵌まってしまって出られないんですの。」
「分かった。すぐ戻るから、ちょっと待ってろ」
私は、落とし穴の中からでもマッシュ兄さんに聞こえる様に声を大にした。
「待って。マッシュ兄さん。私のことはいいから、先にお父様の薬草をとってきて。私は命に別状はないけど、お父様は命に関わるでしょ?」
「だがな……」
「マッシュ兄さん。お願い。」
両手を胸の前で組んでマッシュ兄さんに懇願してみる。ただ、マッシュ兄さんからは、その姿を見ることは叶わないのだが。
「分かった。なるべく早く採取して、そっちに行くから無理はするなよ。キャロット、アカネを暫く頼む。」
「はい。」
さて、これからどうしよう。壁を登って行こうにも足は痛いし、穴が両手を広げたよりも大きいから、よじ登ることも叶わないし。
薄手のシーツも私と一緒に落ちてきてるから、綱代わりにすることも厳しいかも。とてもじゃないけど、これを放り上げルナも厳しそうなんだよね。
どうしようかな?魔法は、いざとなったら、使ってもいいとは、出る前にお母様から許可は頂いたのだけど、それでも極力、マッシュ兄さんやキャロットちゃんが知らない魔法は使わない様にって、念押しされている。
勿論命に関わる状況なら、そんなこと気にしなくて使えばいいよとは言ってもらってはいるんだよ。でもね、今の状況って、ピンチはピンチなんだけど、命に関わるピンチって言われると。うーん、って考えちゃうんだよね。
なので、魔法は、キャロットちゃんがいる前では、ほとんど使えないし、マッシュ兄さんがいる時でも、『梱包』の魔法と『アクセラレイト』『デイレイ』の加速、遅延魔法がせいぜいだなんだよね。
とても状況を打開出来る気がしないなー。
「お姉様、私の手に掴まれませんか?」
地面にしゃがんでキャロットちゃんが穴の底の方に必死になって手を伸ばしてくる。
「うーん、ちょっと高くて届かないかな。キャロットちゃん危ないから、少し離れてて。どこまでが穴か、分からないし、キャロットちゃんまで落ちたら、大変だよ。」
「そうですか。アカネお姉様。ごめんなさい。私がちゃんとシーツの端を掴んでいれば、穴の中に落ちることはなかったですのに。私がちょっとシーツをしっかり握っていなかったばっかりに……ぐすん。」
ちょっと待ってキャロットちゃん。あなたは全然悪くないのよ。ちゃんとこんなに滑る葉っぱのある場所で安全確認をしなかった私にも責任があるんだし、キャロットちゃんのせいではないんだよ。
「いやいや離してよかったよ。もしかしたら、キャロットちゃんも一緒に落ちてたかもだし。私の方が体重は重いからね、軽いキャロットちゃんでは、私を支える重石にはなれないよ。ふふっ、だから笑ってね。キャロットちゃん。幸運の女神様は、前を向いている人だけが後ろ髪を掴むことが出来るんだよ。」
それにミイラ取りがミイラになったら困るしね。キャロットちゃんまで落ちてきたら、流石にお姉ちゃんも一緒になって泣いちゃうわ。
「ふふっ、そうですね。アカネお姉様。幸運の女神様?のとこは良く分かりませんけど、励まそうとしてくれるお姉様の温かいお気持ちが嬉しいですわ。」
「アカネ大丈夫か?」
キャロットちゃんと話しているうちに、マッシュ兄さんが絶壁から降りてきたみたいだ。マッシュ兄さん、早すぎじゃない?危ないから気をつけて降りてきてね。私が言えた義理ではないんだけど。
「えぇ、大丈夫よ。マッシュ兄さん、お父様の薬草は大丈夫ですか?」
「ぁぁこの通り、ちゃんと採取してきたよ。少し多めに取ったから十分だろう。」
「そうなら、よかったわ。マッシュ兄さん、それを持ってキャロットちゃんと一刻も早くお家に帰ってお父さまを楽にしてあげて。」
穴はかなり深かった。手を伸ばしても地面を掴むことは出来そうにないんだよ。それに運が良い下がったのか、悪かったのか分かんないんだけど、落下した先には、落ち葉がいっぱい積もっていてクッションになってくれたんだよ。
お陰で骨折とかはしなくて済んで助かったんだよ。でもね、水が溜まっててその場所に落ちたからね。言わなくても分かるよね。
そう、服も下着も濡れてしまった。お陰で、下着が肌にくっついて気持ちが悪い。
「キャロットちゃん。私は大丈夫だよ。この通り無事だよ。」
と立ちあがろうとして、
「イタッ」
「お姉様大丈夫ですの?」
「うん、大丈夫だけど、足をちょっと捻ったみたいで歩くのは難しいかな。」
「キャロットどうしたんだ?」
マッシュ兄さんが、何かあったのかと大声で叫んでくる。
「お兄様、アカネお姉様が落とし穴に嵌まってしまって出られないんですの。」
「分かった。すぐ戻るから、ちょっと待ってろ」
私は、落とし穴の中からでもマッシュ兄さんに聞こえる様に声を大にした。
「待って。マッシュ兄さん。私のことはいいから、先にお父様の薬草をとってきて。私は命に別状はないけど、お父様は命に関わるでしょ?」
「だがな……」
「マッシュ兄さん。お願い。」
両手を胸の前で組んでマッシュ兄さんに懇願してみる。ただ、マッシュ兄さんからは、その姿を見ることは叶わないのだが。
「分かった。なるべく早く採取して、そっちに行くから無理はするなよ。キャロット、アカネを暫く頼む。」
「はい。」
さて、これからどうしよう。壁を登って行こうにも足は痛いし、穴が両手を広げたよりも大きいから、よじ登ることも叶わないし。
薄手のシーツも私と一緒に落ちてきてるから、綱代わりにすることも厳しいかも。とてもじゃないけど、これを放り上げルナも厳しそうなんだよね。
どうしようかな?魔法は、いざとなったら、使ってもいいとは、出る前にお母様から許可は頂いたのだけど、それでも極力、マッシュ兄さんやキャロットちゃんが知らない魔法は使わない様にって、念押しされている。
勿論命に関わる状況なら、そんなこと気にしなくて使えばいいよとは言ってもらってはいるんだよ。でもね、今の状況って、ピンチはピンチなんだけど、命に関わるピンチって言われると。うーん、って考えちゃうんだよね。
なので、魔法は、キャロットちゃんがいる前では、ほとんど使えないし、マッシュ兄さんがいる時でも、『梱包』の魔法と『アクセラレイト』『デイレイ』の加速、遅延魔法がせいぜいだなんだよね。
とても状況を打開出来る気がしないなー。
「お姉様、私の手に掴まれませんか?」
地面にしゃがんでキャロットちゃんが穴の底の方に必死になって手を伸ばしてくる。
「うーん、ちょっと高くて届かないかな。キャロットちゃん危ないから、少し離れてて。どこまでが穴か、分からないし、キャロットちゃんまで落ちたら、大変だよ。」
「そうですか。アカネお姉様。ごめんなさい。私がちゃんとシーツの端を掴んでいれば、穴の中に落ちることはなかったですのに。私がちょっとシーツをしっかり握っていなかったばっかりに……ぐすん。」
ちょっと待ってキャロットちゃん。あなたは全然悪くないのよ。ちゃんとこんなに滑る葉っぱのある場所で安全確認をしなかった私にも責任があるんだし、キャロットちゃんのせいではないんだよ。
「いやいや離してよかったよ。もしかしたら、キャロットちゃんも一緒に落ちてたかもだし。私の方が体重は重いからね、軽いキャロットちゃんでは、私を支える重石にはなれないよ。ふふっ、だから笑ってね。キャロットちゃん。幸運の女神様は、前を向いている人だけが後ろ髪を掴むことが出来るんだよ。」
それにミイラ取りがミイラになったら困るしね。キャロットちゃんまで落ちてきたら、流石にお姉ちゃんも一緒になって泣いちゃうわ。
「ふふっ、そうですね。アカネお姉様。幸運の女神様?のとこは良く分かりませんけど、励まそうとしてくれるお姉様の温かいお気持ちが嬉しいですわ。」
「アカネ大丈夫か?」
キャロットちゃんと話しているうちに、マッシュ兄さんが絶壁から降りてきたみたいだ。マッシュ兄さん、早すぎじゃない?危ないから気をつけて降りてきてね。私が言えた義理ではないんだけど。
「えぇ、大丈夫よ。マッシュ兄さん、お父様の薬草は大丈夫ですか?」
「ぁぁこの通り、ちゃんと採取してきたよ。少し多めに取ったから十分だろう。」
「そうなら、よかったわ。マッシュ兄さん、それを持ってキャロットちゃんと一刻も早くお家に帰ってお父さまを楽にしてあげて。」
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