【完結・短編】創作スキルと占い師 〜小説家の卵に創作スキルは必要ですか?〜

近衛 愛

文字の大きさ
上 下
4 / 22

怪しい占い師の正体は? その2

しおりを挟む
「それで私がその水晶玉を手に入れないとダメなんですね。おいくらなんですか?」

 あーもうやだ。値段聞いて、高いって言ってさっさと帰ろう。それでダメならお店の人呼ぶなり、警察呼ぶなりして対応してもらおう。

「先程も言いましたが、悪徳商法ではありませんので、10万とか100万とかの値段がするものではありません。ただ……。」

「ただ……。」

 もう早く言っちゃってよ。どうせ霊感商法なんでしょ。5000円か1万円か好きな値段を早く言いなさいよ。

「ただで差し上げるのはシステム上、出来ませんので、10円でも100円でも良いので対価をお願いします。」

 そう言って占い師が頭を下げてくる。

「あの~、水晶玉って、購入するにも3000円くらいすると思うんですけど、そんな価格で赤字になりませんか?何のためにそこまで必死になって私に、その、スキルオーブを渡そうとするんです。と言いますか、そのスキルオーブを使ったとして、何のスキルが身につけられるんですか?」

「その点は大丈夫ですよ。これはクエストで手に入れたもので、このスキルオーブをあなた、栞さんにお渡しすることが今回の私のクエストなんです。是非とも達成しないといけないのでお願いします。
 私としたことが、スキルの中身を説明していませんでしたね。こちらのスキルオーブには、『創作スキル』が入っています。」

「創作スキル???」

 創作って、小説を作ることだよね。または、その作品自体のことを指すけど………?スキルやクエストは、私もそういう漫画を読むから分かるけど、このスキルは一体どんな技能を得られるのだろうか?

「ええ、創作スキルです。私の鑑定スキルでみた内容は、『書いたことが事実となる』というものです。私の鑑定レベルは高いのですが、これ以上の情報は出てきませんでしたし、他にも類似のスキルを持っている人もいませんでした。」

 うーん、どうしようかな?話を聞いたら、この人は荒唐無稽なことは言っているけど、嘘は言ってないわね。私が受け取らないと、この占い師の方が困るみたいだし、ここは人助けだと思って気味が悪いけど受け取りますか。

「占い師さん、分かりました。では、こちら100円になります。」

 小銭入れから100円を取り出し、占い師さんの手に渡した。

「よかった。本当に良かったです。トレードしてくれてありがとう。こちらがスキルオーブです。では、大分お時間とってもらいありがとうございました。あなたの今後に幸あらんことを」

 占い師はそう言うと席を立った。

 かと思えば占い師は消えてしまった。
 いや消えたというよりも、私はなぜか通路に立ったままだった。食品売り場に繋がる通路に立っていた。

「あれ、なんでこんなことになってるの?まさか、これが噂に聞く白昼夢?いや、夢にしてはリアル過ぎるはね。」

  手を見ると、その中には先程占い師からトレードしたスキルオーブがあった。

 スキルオーブがあるってことは、これは現実にあったことなのよね。スキルやら、クエストとやら色々あったけど、これが現実にあるってこと。小説の様な空想の話が現実になっている?

 ということは、私がこのスキルオーブを使えば、スキルが使えるってことよね。

 気味が悪いことは気味が悪い。何故私だけにそういうことが起こったのか?もしかしたら、私以外でも同じ様にしてスキルオーブを受け取った人はいるのかもしれない。

 頭がおかしいと他の人けら言われるのを避ける為に、秘匿してるのかもしれない。

 わたしは、少しワクワクしながら、買い物をして家に帰った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もしもしお時間いいですか?

ベアりんぐ
ライト文芸
 日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。  2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。 ※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

差し伸べられなかった手で空を覆った

楠富 つかさ
ライト文芸
 地方都市、空の宮市の公立高校で主人公・猪俣愛弥は、美人だが少々ナルシストで物言いが哲学的なクラスメイト・卯花彩瑛と出逢う。コミュ障で馴染めない愛弥と、周囲を寄せ付けない彩瑛は次第に惹かれていくが……。  生きることを見つめ直す少女たちが過ごす青春の十二ヵ月。

ゼンタイリスト! 全身タイツなひとびと

ジャン・幸田
ライト文芸
ある日、繁華街に影人間に遭遇した! それに興味を持った好奇心旺盛な大学生・誠弥が出会ったのはゼンタイ好きの連中だった。 それを興味本位と学術的な興味で追っかけた彼は驚異の世界に遭遇する! なんとかして彼ら彼女らの心情を理解しようとして、振り回される事になった誠弥は文章を纏められることができるのだろうか?  

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...