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【閑話】年末のダンジョン

【閑話】お正月その8

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 おそるおそる天つゆを吸ったお餅を食べてみる。

 お餅自体を色々なものにつけて最近食べてきたが、汁に入れて食べるということはしていなかった。べちょべちょになって美味しくないのではなかろうか?いや、固定観念で美味しくないと決めるのは早計かもしれない、天ぷらもサクラちゃんたちに勧められるまでは、揚げたての天ぷらをそのまま食べるのが美味しいとおもっていたからだ。

「もぎゅもぎゅもぎゅ、ごっくん」

「んっ、上手い。煮物を食べているのとは違いますが、お餅がおつゆの中に少し溶けて、それにつゆがあわさり、絶妙な感じで味がついています。」

「でしょ~~~。やってみたら美味しいんだよ。ごはんにおつゆやラーメンの残りの汁をかけて食べる猫まんまが私好きなんですけど、あまり食べてくれる人がいないんですよね。ぜ~~ったいに美味しくなるのに。ウィーンさんが食べてくれてよかったです。」

そんな感じで、この半年であったことを語りあいながら残りの僅かな時間を過ごしていた。もう新年を迎える時間になるという頃に

「ご~~ん」

「ご~~ん」

「ご~~ん」

「ご~~ん」

「あれっ、なんか変な音が聞こえますよ。」

「ウィーンちゃん。あの音はね。欧州からのウィーンちゃんには馴染みないかもしれないけど。鐘の音だよ。」

「鐘の音?」

「そうだよ。除夜(じょや)の鐘って言ってね。寺院にある大きな梵鐘(かね)を108回撞くことなんだよ。108は、煩悩の数を表しているといわれているの。」

「そうなんですね。でもうちのダンジョンに鐘はおいてないですよね。まさかまたソウルショップに登録してあるんですか?」

「そうよ。ウィーンさんこれも私達が頑張って作ったのよ。今は天狗の天魔さんが鐘をついているわ。さっ、せっかくのいい機会だから私達も鐘を撞きに行きましょう。」

 ぞろぞろと温泉から上がり、水着姿から、着物姿へと瞬時に変えていった。もっとも雪山なので辺りの気温は寒く、上着がないと厳しいのだが……

「ウィーン、着物に上着を羽織るのは無粋やぞ。我慢してそのままこいや。」

 と言われる始末である。寒いが我慢して、天魔さんが鐘を撞いている山頂に歩いていく。

「いやっちょっちょっと、いくらソウルショップで簡単に登録できるとはいえ、このサイズの鐘はなんなんですか?」

 山頂には、大の大人が5~6人は入れる程の巨大な鐘が簡易的な箱物から釣り下がっていた。そこへ、同じく釣り下がっている巨大な丸太を振り子のように後ろに大きく引っ張ってから、鐘に勢いよく撞いていた。

「ご~~~~~~~ん」

 近くで聞くと耳が痛い。思わず両手で両耳を塞ぐ。そして、この音は身体を芯から揺さぶってくる。こういうものをずっと叩いている天魔さんの耳は大丈夫なのだろうか?

「それはね。何事も大きいことはいい事でしょ?ダンジョン内なら置き場所にも困らないし、保管もソウルデバイス内に登録されるだけだから、思い切って大きいものを作成したんだよね~~~」

「「ね~~~(にゃ~~)」

 また、今年最後にも関わらず『ね~』始まってしまったようだ。

「ご~~~~~~~ん」

 また鐘が鳴り、思わず耳を塞ぐ。でも周りの人は誰も耳を塞がない。どうしてなんだ?この音は日本の物の怪なら、大した音ではないということか?それとも欧州の物の怪には音以外でダメージが出るようなものなのか?

「みなさんはなんで、耳を塞がないんですか?鐘の音が煩くはないんですか?」

「それはねウィーンさん。」

と言って、玉藻姉さんが耳の中から何かを取り出した。

「これを耳にいれてあるからよ。」

「耳栓??」

「そうよ。これがないと私達動物ベースの物の怪は耳がいいからやられちゃうわよ。ね~~」

「「ね~~(にゃ~~~)」

 僕も真似て、ソウルSHOPで耳栓を購入し、さっそく耳につける。

「ご~~~~~~~ん」

「うん、これで大分楽になりましたね。」

「ウィーンさんも鐘を撞いて下さいね。他のかたはもう撞き終わってますから」

「えっ、みなさんもう撞いているんですか?いつの間に……」

「さっラスト108回目の鐘撞きですよ。新年をまたぐ瞬間に撞くのがいいとされていますからね。最後は子のダンジョンのオーナーたるウィーンさんが叩いて下さいね。あっ、もう時間がないですね。さっ、ウィーンさん、早く準備して下さい。他の方は新年へのカウントダウンをお願いします。」


「「「60・・・・59・・・58・・・」」」

 僕は天魔さんに背中を押されて、丸太の隣まで移動する。いや、でもそんな貴重な瞬間に一番若い僕なんかがしてもいいものだろうか?

「「「10・・・・9・・・8・・・」」」

「さっ、ウィーンさんこの橦木(しゅもく)を思いっきり引いて下さい。」

どうやら鐘を撞く丸太のことを橦木(しゅもく)と呼ぶらしい。僕は思いっきり後ろに引いた。

「「「5・・・・4・・・3・・・」」」

「さっ、思いっきりついて下さい。」

天魔さんが僕の背中を軽く押してきた。そのタイミングに合わせて鐘を撞いた。

「「「0」」」
「ご~~~~~~~ん」

「「「「明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。」」」」」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「読者の皆様、新年早々お読み頂きありがとうございます。僕のお正月バージョンいかがでしたでしょうか?」

「みやぁ~~。ご主人固いにゃ~。もっと読者の皆様にサービスするにゃ~」

「えっ、サービス…………。ごめん思いつかないよ。ミリィ頼むよ。」

「わかったにゃ~。ミリィに任せるにゃ~。
 読者の皆さん明けましておめでとうにゃ~。みんにゃのおかげで、6月から連載が始まったこの作品が半年以上続けられることが出来たにゃ~。読者の一名からおめでとうメッセージが元旦に来て、作者が喜んでたにゃ~」

「作者に代わり感謝するにゃ~。終わりが見えないって言う人もいるようにゃけど、終わりはあるようでないにゃ~。日常ベースの物語だからにゃ~。これからもドシドシ作者にエール(応援)を送って欲しいにゃ~。じゃ~~みんにゃ~これかもご主人共々宜しくにゃ~」

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