上 下
96 / 105
第7章 アカネとフルーテスとのお茶会編

【男の娘096】帰った矢先の?

しおりを挟む
「はぁー、やっとお家に着いたー。」

 販売会が終わって、打ち上げして、一泊泊まって翌日からの移動である。

 凄いお家のお母様の料理が恋しかった。外だと気が張ってのんびり休めないのってのもあるわよね。家に着いたら、もう夜でお母様が食事を温めてくれたのをサラッと食べて、お部屋のベッドにダイブした。

 ジィやさんから報告があった後お父様やマッシュ兄さんと話をしたけれど、注意を払うに留まっている。うちの領土は辺境だし、来るまでにも時間がかかるからね。何かしてくるなら、フルーテス領からベジタル領での帰り道だと思ってたんだけど、何もなかった。

 護衛もつけてない形で、襲うには絶好のチャンスな筈なのに全くない。お陰で私は、道中はずっと神経を張り詰めていたので、ヘトヘトである。

「うーん、今日はもう起きてられないわ。温室の状況なんかを確認しときたいけど、明日ね」

 そのまま寝巻きに着替えることもなく、私は深い眠りに着いた。

 私はその時、ただ移動で疲れて私だけ眠たくなっていると思ったんだ。でも、実は違った家族みんなが泥の様に一斉に眠ることになっているなんて。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「むごぉっむごおっ、うごっ」

 あらやだ、女の子としては発してはいけない声を出してしまったわ。

 目を覚ました時には、いつもの私の部屋とは違う所で寝かされていた様だ。上手く喋れない。口の中に布が入っており発音できない。猿轡の様なものをされているんだろう。

 目を開けて、辺りを見ようとするが目を開いたのに前が真っ暗で見えない。目隠しもされているんだ。手を動かそうとするけど、こっちもダメ。手首を縛られている様だ。

 えっ、これってもしかして私誘拐されちゃった?どっどうしよう…女の子だし、誘拐されたら、あんなことやこんなこと少年誌では書かないことをされるんじゃ……。

 急に心細くなってきた。でも、男の子だったら、奴隷になるのかな?この世界では、人間は人権が認められているから、奴隷なんてことはないんだけど。

「ようやくお目覚めの様だね。おはようガーネット。元気だったかい?」

 この声は元お父様、レディアント当主レディアント ブラダ。てことは、私は元お父様に誘拐されたのね。

「むごぉっむごお」

「おや、私と話をするかい?逃げようとして魔法を使ってはいけないよ。」

 その言葉に少し考える。なるほど、魔法を使うには言葉を放つ必要があるから、猿轡(さるぐつわ)をして魔法を使えなくしているのか。現代日本とは異なる文化の理由だね。

 ひとまず状況を確認したいから、コクンと寝転がったまま頷く。魔法を使おうにも、場所によっては転移ゲートを使って逃げたいけど、魔力を使い過ぎるみたいだから、場所が何処か分からないと最寄りのポイントに繋げられない。

 誰かが私の身体を乱暴に起こし、壁に身体を預ける様に座らせ、目隠しと猿轡を外してくれた。

「ふーっ、あら、元お父様のレディアントさん。ご無沙汰しておりますわ。今日はこの様な場所でどの様なご用件ですか?また、ご契約書面をお作りした方が良いですか?」


 私は平然と何事もない様なふりをしながら、プラダに話しかけた。心臓はバクバクなんだよね。いくら元父親だからといって、このやり方は褒められたものではない。場合によっては、私に命の危険があるかもしれないんだよ。

 何気ない会話をすることで情報を多く聞き出し、現状を理解しなきゃ。

「ふーつ、憎まれ口は相変わらずだね。ガーネット、いや、今はアカネさんとお呼びした方が良いかな。」

 ぎくっ、冷や汗が少しです。なんで、アカネの名前と私の容姿がこの男の中で一致するんだろうか。ベジタル領には金髪は私しかいないから、拉致るのはなんとかなるが名前なんて分からない筈だ。なるべく表舞台には立たない様にホットケーキの販売会だって、裏方作業になっていたんだ。

「なんで、名前がバレたかわからないって、顔をしているね。あれだけ派手にベジタル領で動いていれば、そりゃ分かるよ。私たちの仲間でベジタル領に出稼ぎにいっているものもいるからね。」

「私達ですか?今回のこの件はレディアント家の家族による誘拐なのではないですか?」

「ガーネットこれは誘拐ではないんだよ。元々お前はうちの子だったからね。そっと返しにもらいに伺って、ちょっと寝静まっている時にお邪魔しただけなんだよ。」

「レディアントさん、私以外のベジタル家の人に何かしていないでしょうね。」

「まだしてはいないさ。ガーネットが私達の元へ素直に帰って来てくれるならね。」

 ひとまずはよかったね。キャロットちゃんやお母様達は無事らしい。と言っても私次第ってことは、ここに連れられて来ているのかしら?

「レディアントさん、誰かここに連れて来ているんですか?それにここは一体何処なんですか?何かの倉庫の様に見えますけど。」

「ガーネット、君の心配はもっともだ。私としても誘拐はしたくはなかったが君に言うことを聞いてもらう為には致し方ない部分もあってね。ダイナ、あの娘を連れてきなさい。」

「はい、お父様」

 ダイナもいた様だ。後ろ姿を見ると、前の時の様な派手な格好ではない。庶民の着ている様な服だ。変わってお父様は、そこそこ下級貴族が来ているスーツを着ている。

「お姉様」

 ダイナが連れてきたのは、寝間着姿のキャロットちゃんだった。どうやら、キャロットちゃんも寝ている間に連れてこられたみたいだ。

「キャロットちゃん。レディアントさん、幼い女の子を誘拐するなんて酷いですわ。解放してあげて下さい。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】シェアされがちな伯爵令嬢は今日も溜息を漏らす

皐月 誘
恋愛
クリーヴス伯爵家には愛くるしい双子の姉妹が居た。 『双子の天使』と称される姉のサラサと、妹のテレサ。 2人は誰から見ても仲の良い姉妹だったのだが、姉のサラサの婚約破棄騒動を発端に周囲の状況が変わり始める…。 ------------------------------------ 2020/6/25 本編完結致しました。 今後は番外編を更新していきますので、お時間ありましたら、是非お読み下さい。 そして、更にお時間が許しましたら、感想など頂けると、励みと勉強になります。 どうぞ、よろしくお願いします。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

農業機器無双! ~農業機器は世界を救う!~

あきさけ
ファンタジー
異世界の地に大型農作機械降臨! 世界樹の枝がある森を舞台に、農業機械を生み出すスキルを授かった少年『バオア』とその仲間が繰り広げるスローライフ誕生! 十歳になると誰もが神の祝福『スキル』を授かる世界。 その世界で『農業機器』というスキルを授かった少年バオア。 彼は地方貴族の三男だったがこれをきっかけに家から追放され、『闇の樹海』と呼ばれる森へ置き去りにされてしまう。 しかし、そこにいたのはケットシー族の賢者ホーフーン。 彼との出会いで『農業機器』のスキルに目覚めたバオアは、人の世界で『闇の樹海』と呼ばれていた地で農業無双を開始する! 芝刈り機と耕運機から始まる農業ファンタジー、ここに開幕! たどり着くは巨大トラクターで畑を耕し、ドローンで農薬をまき、大型コンバインで麦を刈り、水耕栽培で野菜を栽培する大農園だ! 米 この作品はカクヨム様でも連載しております。その他のサイトでは掲載しておりません。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

ミネルヴァ大陸戦記

一条 千種
ファンタジー
遠き異世界、ミネルヴァ大陸の歴史に忽然と現れた偉大なる術者の一族。 その力は自然の摂理をも凌駕するほどに強力で、世界の安定と均衡を保つため、決して邪心を持つ人間に授けてはならないものとされていた。 しかし、術者の心の素直さにつけこんだ一人の野心家の手で、その能力は拡散してしまう。 世界は術者の力を恐れ、次第に彼らは自らの異能を隠し、術者の存在はおとぎ話として語られるのみとなった。 時代は移り、大陸西南に位置するロンバルディア教国。 美しき王女・エスメラルダが戴冠を迎えようとする日に、術者の末裔は再び世界に現れる。 ほぼ同時期、別の国では邪悪な術者が大国の支配権を手に入れようとしていた。 術者の再臨とともに大きく波乱へと動き出す世界の歴史を、主要な人物にスポットを当て群像劇として描いていく。 ※作中に一部差別用語を用いていますが、あくまで文学的意図での使用であり、当事者を差別する意図は一切ありません ※作中の舞台は、科学的には史実世界と同等の進行速度ですが、文化的あるいは政治思想的には架空の設定を用いています。そのため近代民主主義国家と封建制国家が同じ科学レベルで共存している等の設定があります ※表現は控えめを意識していますが、一部残酷描写や性的描写があります

公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】

ゆうの
ファンタジー
 公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。  ――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。  これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。 ※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。

【完結】目覚めたらギロチンで処刑された悪役令嬢の中にいました

桃月とと
恋愛
 娼婦のミケーラは流行り病で死んでしまう。 (あーあ。贅沢な生活してみたかったな……)  そんな最期の想いが何をどうして伝わったのか、暗闇の中に現れたのは、王都で話題になっていた悪女レティシア。  そこで提案されたのは、レティシアとして贅沢な生活が送れる代わりに、彼女を陥れた王太子ライルと聖女パミラへの復讐することだった。 「復讐って、どうやって?」 「やり方は任せるわ」 「丸投げ!?」 「代わりにもう一度生き返って贅沢な暮らしが出来るわよ?」   と言うわけで、ミケーラは死んだはずのレティシアとして生き直すことになった。  しかし復讐と言われても、ミケーラに作戦など何もない。  流されるままレティシアとして生活を送るが、周りが勝手に大騒ぎをしてどんどん復讐は進んでいく。 「そりゃあ落ちた首がくっついたら皆ビックリするわよね」  これはミケーラがただレティシアとして生きただけで勝手に復讐が完了した話。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

処理中です...