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第7章 アカネとフルーテスとのお茶会編

【男の娘088】砂糖の栽培3

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 私は火の魔法が使えない。使えればきっと温度を維持して成長を促進することが出来るのに。調理場にいる間は定期的にサトウキビの苗に加速(アクセラレイト)の魔法をかけて、成長時間を短縮している。

 とは言っても、短時間しか効果がない為、5分起きぐらいに魔法をかけ直している。この短い時間がなんとも頂けない。調理場にいる時しか、成長促進を行うことが出来ないからだ。

 他にもお母様のお手伝いで、洗濯や掃除もするから意外と調理場にいる時間は長くないし、かと言って魔法をかけ直すたびに、各部屋から調理場に戻ろうとすると何も出来なくなる。

 如何ともし難い。他にも日常で使える魔法で便利な本がないか、魔法書をみているが目ぼしいものが見つからない。空間と時魔法って条件で探そうとなると、途端に使える魔法の項目が激減してくる。

 超超便利な魔法であるが故に、魔法書に書かれている数の少ないこと少ないこと。とほほほっ。異空間で、温室栽培が出来たら解決しそうなんだけどな。後は、特定の空間だけ、速度を早めるとか。そんな魔法が有ればサトウキビの栽培が上手くいくのにな~。

 魔法書も高価な上、持ってきている蔵書では、今回使えそうな魔法は見当たらないし。新しく本を買ってもらうのも難しいだろう。それに新しく買った魔法書に、私が望んでいる魔法書があるとも思えないなー。

 ティムがいれば色々と出来るのだけれども、そのティムに会いに行くのにティムがいないから出来ないというこのジレンマ。

 最近はティムありきで色々とやっていたから、いなくなると途端にできることが少なくなってしまう。それにティムとの契約があるから、魔法にしても使える量に制限がかかってしまっている。

 温度を一定に保つには、ビニールハウスか、ガラスのハウスが欲しいのだけど………。とほほほほ………。この世界には便利なビニールやプラスチック製品はないし、ガラスはあるけど、一品ものだから物凄い値段がする。とてもじゃないけど、砂糖を作る為のテストで、砂糖よりも効果な設備を投資する余裕はないんだよね。

 となると後は、暖房器具で暖めるだよね。思いつくのは、薪、ホッカイロ、ヒーター、ガスストーブ、コタツ……、うんうんうん、この世界にないものばかりだよ。少しでもアレンジして使えるものなら使いたいんだけどなー。

 それから数日が過ぎた。ティムからは、貴重な魔力を使って、サトウキビの苗や手紙が送られてくる。

 もういいのにと思うのに、返答することができないので、送られてくるものをもらうだけになっている。サトウキビの苗はこれ以上増えてもどうにもならない。貴重なものなのに、この大陸では手に入らないものなのに、枯らせるなんてそんなもったいないことはしたくないけど、植木鉢を置くにも、日向に毎日持っていくにも、加速の魔法をかけるにも限界が存在するんだよー。

 もう諦めた、2本の苗は私が丹精込めて手間暇かけて育てるけど、残りの苗はお母様に許可を取って、家の畑に植えることにした。多分地温が低いから、成長しないと思うんだけど……。なにもせずに枯れることを待つよりかは、外で試して、本当に成長しないか確認する手段にすることを選んだ。

 そんなある日、

「アカネ、そろそろ冬自宅をするから火石を取りに行くよ」

 そんなことをマッシュ兄さんが言ってきたんだよ。

「ひせき?って何なんですか?」

「あれっ?向こうでは使わないのか?火のように温かくなる石のことだよ。魔力を込めると、込めた量に応じて温かくなるんだぞ。」

 記憶を探って見るが、ガーネットが火石を使ったという記憶も見たという記憶もない。暖炉に薪を執事やメリーナが入れて、暖を取る姿が思い出されるくらいだ。火石は、地方特有のものだろうか?それとも特殊なゲームに出てくる魔石のこと?

「多分使ってないかと。薪を使って暖を取ってましたわ。そんな便利な石があるのなら、料理もその石を使って調理すればよかったんでは?」

「そんな便利なものでもないんだよ。魔力を込めたら熱くなるとは言っても、精々が人肌よりも高くなって、そうだな病気に発熱したときぐらいのおでこの熱さぐらいかな。」

 ということは、だいたい37~39℃位までは発熱するってことなのか。それを冬に使うってことは、一回魔力を込めれば暫くは保つってことよね。度々魔力を送る必要があったら、誰かが常に魔力を送り続けなきゃならないし、そんなことしてたら直ぐに魔力がなくなりそうなものよね。

 それにさっきのマッシュ兄さんの話ぶりだと、毎年冬の準備をするために火石を取りに行く必要があるみたいだから、消耗品ってことよね。石炭みたいなものなのかな?固形の灯油みたいなイメージかも。

 でも、

「うふっ、うふふふっ」

 
 私は思わず笑いが込み上げて来た。これだけ苦労してやっていたのに、解決策は本当に近くに転がっているのだから。

「アカネ、どうしたんだ?いきなり笑い出して、僕の話がそんなに面白ろかったのか?」

「いえね、マッシュ兄さん、私がこの数日頑張って来たのがマッシュ兄さんの一言で解決しちゃいそうなんですよ。やっぱりマッシュ兄さんは頼りになりますなー」

 と言って、マッシュ兄さんの片腕に抱きつく。

「そうだろうそうだろう。僕は頼れる男だろう。ふんっ」

 マッシュ兄さんは、胸を張ってそう応えた。





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