【完結】TS転生で悪役令嬢に?~婚約破棄され辺境に嫁ぎ、ホットケーキで結納金返済です。~

近衛 愛

文字の大きさ
上 下
69 / 105
第7章 アカネとフルーテスとのお茶会編

【男の娘069】アカネとフルーテス家の人々4

しおりを挟む
 メリーナが目を私の方に向けてくる。意味する所は分かるんだよ。メリーナもロイヤルゼリーが欲しいんだよね。だって、女の子だもん。そりゃー欲しいに決まってるよね。

 でも、私はメリーナに向けて横に首を振る。さっきも言ったけど、本当にあれで全部なんだよ。ベジタル家にある分を全て持って来てあの量なんだから。

 メリーナが目に見える形でガッカリする。

「ベリーナ様、そちらは、フルーテス家の皆様でどうぞお使いになって下さいね。使用感のご感想も楽しみにお待ちしておりますわ。」

そう、私が言った瞬間、メリーナの表情が歓喜に満ちて、代わりにベリーナ様が少し残念そうな表情に変わった。そして、キウィー様も男性にもかかわらず、目が輝いて小瓶を見出した。

「お母様、私にも少し使わせて下さいね。」

「メリーナあなたはまだ若いじゃないの、こういう化粧品に頼らなくてまだ大丈夫よ。」

「いえ、お母様、素敵な殿方を早く見つけるためにも、より一層綺麗になる必要がありますわ。」

母と娘の美容品の争奪戦か勃発してしまった。そこへ。。。

「母上、私にも少量分けて下さい。」

「キウィー、あなたは男でしょう?このロイヤルゼリーは、女性のためのものよ。あなたが出る幕ではなくてよ。」

「母上、意中の女性にプレゼントをしたいのです。母上とメリーナの様子を、見ているととても喜んでもらえると分かりますから。」

3人の視線が小瓶に集まり、バチバチと火花が見えるようだ。家族の仲でも争いが勃発してしまった。しかも、予想外の男の人まで、乱入して。やはり、このロイヤルゼリーextraの存在は秘匿しておく必要があるわね。

 私は隣に座っているキャロットちゃんを見た。キャロットちゃんも私の視線に気づき、私が伝えたいことが分かったのか、なにも聞かずに、頷いた。

 そう、伝えたかったことは、争いを起こすものを世に出すよりかは、ベジタル家の私、お母様、キャロットちゃんの3人で仲良く平和利用しようということだ。

 争いは醜い。綺麗になる品物を巡り、醜くなるのはとてもではないけど耐えられそうにないんだよ。

「ごほん、3人とも、お客様の前だぞ。いい加減にしないか。キウイー、キャロットさんも言っておっただろう。これは、ベジタル家とフルーテス家の秘密にする。他家には、一切話すことはならん。出所を聞いてくる人で溢れ返ってしまうぞ。ベリーナ、ちょっとだけ、メリーナに分けて上げなさい。メリーナも少量しかないのだから、大部分は母に譲ってあげなさい。」

「.はい、あなた」

「はい、お父様」

「了解です。父上」

当主の話で皆が皆納得したようだ。素晴らしいお手並ですわ。

「それで、話が逸れてしまったようだ。ベジタル家の皆様にはみっともない所を見せてしまった。いやはや申し訳ない。」

領主が頭を、下げてくる。私とマッシュ兄さんは慌ててそれを止めさせる。

「いえいえ、そんな謝らないで下さい。」

「それでは、お話を戻しましょう。こちらがベジタル家で今期開発した、魔法の小麦粉になります。」

マッシュ兄さんが袋に詰めてある。小麦粉をパパーヤ様にお渡しした。

「見ても宜しいですかな?」

「ええ、どうぞご覧になって下さい。」

袋の紐を解いて、パパーヤ様が袋の中を覗く、指で少しつまみ、手にとってみる。中々注意深く見ているようだ。一見はなんの変哲もないただの白い小麦粉に見えるはずなんだよ。

「ふむ、見た目も、触り具合もそれほど変わった所はないようだ。マッシュさん。詳しく説明して頂けるかな?」

「はい、まずは言葉でご説明するよりも実際にそれで作ったものを試食してもらった方が分かりやすいでしょう。アカネ、皆さんにお出しして下さい」

「はい、マッシュ兄さん」

私は、前もって作って来てあった日持ちするドーナッツを籠から取り出し、執事の方にお渡しして、皆さんに配って頂いた。

「こちらが、先ほどの魔法の粉で作成したドーナッツというものです。本来の味を損なわないために、小麦粉と必要なもの以外は、味付けをしておりません。」

 みんな不思議な丸い穴の空いた物体に、キョトンとしている。それもそうだろうこの世界にはない、油で揚げた料理だし、形状も凝ってるんだから。

「さっ、どうぞ召し上がって下さい。」

 フルーテス家の人たちは、お互いを見て、誰が先に食べるか思案しているようだ。時間がかかりそうだね。毒は入っていないというの。

「アカネ、食べて良いか?」

ティムがおもむろに私に聞いてくる。お行儀よく、先方が食べるのを待っていてくれたのだが、時間がかかったため、焦れてしまったようだ。

私は、パパーヤさんに視線を向けると、コックリとうなづいてくれた。

「ええ、いいわよ。私たちも頂きましょう。」

用意してもらっているナイフとフォークを使って切り分けて、一口サイズにしたものを口の中に入れていく。

ベジタル家では、そこまで上品には食べていない。タオルを置いて、手で掴んで食べることが多いんだよ。ここは、お茶会の席なので、テーブルマナーを優先してやってます。

「うむ、熱々も美味いが、冷めても美味いのだ。食べないのなら、我がもらっても良いかのう?」

腹ペコティムがいい仕事をしている。毒もないし、美味しいし、何より食べないなら、頂戴ときたものだ。そこまで美味しいものを食べずに渡すくらいならと、メリーナが一口食べる。

「あっ、サクサクして、ほんのり甘くて美味しいですわ。」

「では、私も」

パパーヤ様、ベリーナ様、キウィー様、アボート様が次々と食べ始める。

「ホントだ美味しい。」

「デザートにしてはあっさりしているが私としては、このくらいの方が食べやすい。出てくるデザートは甘ったるいものが多いからな。」

「ホントです。あっさりしているので、男性も無理なく食べられます。」

「紅茶にも合いますわ」

次々とドーナツを食べた感想が出てくる。どれも高評価なコメントだ。2戦目もベジタル家の勝利だね。

私は、マッシュ兄さん、キャロットちゃん、ティムを見て、やったとばかりに微笑んだ。みんなは、それに微笑み返してくれた。流石に、お茶会でハイタッチは出来ないもんね、


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...