上 下
68 / 105
第7章 アカネとフルーテスとのお茶会編

【男の娘068】アカネとフルーテス家の人々3

しおりを挟む
「キャロットちゃん。例のものを、ベリーナ様にお渡ししてあげてくれるかしら」

「はい、アカネお姉様」

キャロットちゃんは、持ってきた袋の中から、透明な小瓶を一個取り出した。中には、乳白色のクリーム色の液体が入っている。

「ベリーナ様、こちらをどうぞ。私どもの農園でも僅かにしか入手出来ない代物となりますわ。」

ベリーナ様は、不思議そうに手渡された小瓶をクルクルと回しながら、色んな方向から眺める。そして、ある考えにたどり着いたベリーナ様は、驚いたと思いきやすごく嬉しそうな表情へと変わった。

「ベジタル家の皆様。もしや、この小瓶は蜂蜜由来のものではありませんか?」

ちにみにこの存在は、マッシュ兄さんはご存知ないです。私とティムとキャロットちゃんで、こっそり養蜂箱の中から、採取している極小数の人しか知らない貴重品なんだよ。

マッシュ兄さんは、事情が分からないので、口を挟まずに笑みを保ったまま佇んでいる。女性の美容関連担当として、お母様とお父様とお話しした上で、キャロットちゃんに任命した。その際に、私がガーネットとして、知っている美容の知識、お母様の貴族として、そして、辺境に住む女性としての知識を数日に渡って教育したんだよ。

キャロットちゃんはまだまだ若いし、亜人達と一緒の学舎で学ぶ分には、美容のことはほとんど話題として上がらない。そもそもそんな情報が流れて来ないので、話す人もいないだろうし。

若くて記憶力がよく、スポンジが水を吸い込むようにして、知識を吸収するキャロットちゃん。これらの知識を大体覚えて、プレゼンの練習まで徹底的にやってきたんだよ。

「はい、ベリーナ様の考える通りの品物になります。こちらは、私どもの領地で採れた、最高級品質のロイヤルゼリーextraとなります。なにぶん蜂蜜の量も満足に採取出来ない状態ですので、さらに量の少ないロイヤルゼリーは、これで全てでございます。」

「なんと、それをわらわに手土産として、渡してくれると言うの?一体それがどれほどの高級品か分かっておいでなの?上級貴族でも一部の階級の方しか手に入れられることのできないものなのよ。売れば、宝石一個と同じくらいの金額で取引されるものを?」

「ええ、おっしゃる通りですわ。ベリーナ様。女性であれば、手が喉から出るくらいに欲しい品物です。需要に対して、希少性故、かなりの高価なものになっているのも存じております。私どもとしても、自らのために使いたい程ですので、差し上げるのは苦渋の思いではあります。
ですが、せっかく私どもののために開いてくれたお茶会です。私どもの母もフルーテス家の方々が喜んでくれるので有れば、喜んで差し上げると申しておりました。」

これに関してはホントお母様にとっては、苦渋の決断に近かった。私たちは、比較的若く、肌の衰えも少ないので、必要ないと言えば必要ないが、使えるなら美を若さを保つために今からでも使っておきたい一品だ。お母様は、これを毎日少量、指で少し撫でるくらいの量を舐めて服用し、もう一撫でて、顔の比較的見られやすい部分に塗っている。

その効果は高く、翌日にはその部分がツヤが出て、肌もプルプルするくらいのものだ。異世界のロイヤルゼリーのためか、日本であったものよりも効果が数段高いのかもしれない。私も化粧品はいくつか買ったが、ロイヤルゼリーは、手が出せないでいた。

なんせ、肌に塗ってよし、食べてよし、エネルギーも栄養素も多量に含んでいる万能食である。ゲームの世界ならエリクサーと呼んだも良いほどの一品である。まさに、魔法の薬と呼ぶに相応しい一品である。しかも、養蜂の進んでいないこの世界なら、砂糖よりも希少になりうる。

正直、養蜂を始めた時は蜂蜜欲しさで始めたので、ロイヤルゼリーのことなど、頭の隅にもなかったんだよ。だから、これは完全に棚からぼた餅、瓢箪から駒見たいな完全なる思いがけない副産物である。

こらからも採取出来る量は限られているため、私達のために公開できる範囲を狭めてあく必要があるんだよ。

「ベリーナ様、分かっているとは思いますが、これは、ベジタル家とフルーテス家だけの秘密でございます。なにぶん量が少ないため、限られた人にしか渡ることはありません。この存在が世の女性達に知られてしまえば。。。」

「ええ、そうね。血を見ることになるでしょうね。そんな希少なものを頂いてしまって悪いわね。感謝するわ。」

とベリーナ様は完全に席に腰を下ろした、もはや出ていこうとする雰囲気は微塵もない。まずはベジタル家が先手の勝利を収めた。まだまだ、戦いはこれからである。目的を達成するためには、ここから、全勝していかなくてはならない。

それだけ、私達は、このお茶会を楽しみに準備してきたんでよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました

みなみ抄花
恋愛
睦見 香桜(むつみ かお)は今年で19歳。 日本で普通に生まれ日本で育った少し田舎の町の娘であったが、都内の大学に無事合格し春からは学生寮で新生活がスタートするはず、だった。 引越しの前日、生まれ育った町を離れることに、少し名残惜しさを感じた香桜は、子どもの頃によく遊んだ川まで一人で歩いていた。 そこで子犬が溺れているのが目に入り、助けるためいきなり川に飛び込んでしまう。 香桜は必死の力で子犬を岸にあげるも、そこで力尽きてしまい……

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

【完結】悪役令嬢の妹に転生しちゃったけど推しはお姉様だから全力で断罪破滅から守らせていただきます!

くま
恋愛
え?死ぬ間際に前世の記憶が戻った、マリア。 ここは前世でハマった乙女ゲームの世界だった。 マリアが一番好きなキャラクターは悪役令嬢のマリエ! 悪役令嬢マリエの妹として転生したマリアは、姉マリエを守ろうと空回り。王子や執事、騎士などはマリアにアプローチするものの、まったく鈍感でアホな主人公に周りは振り回されるばかり。 少しずつ成長をしていくなか、残念ヒロインちゃんが現る!! ほんの少しシリアスもある!かもです。 気ままに書いてますので誤字脱字ありましたら、すいませんっ。 月に一回、二回ほどゆっくりペースで更新です(*≧∀≦*)

糞ゲーと言われた乙女ゲームの悪役令嬢(末席)に生まれ変わったようですが、私は断罪されずに済みました。

メカ喜楽直人
ファンタジー
物心ついた時にはヴァリは前世の記憶を持っていることに気が付いていた。国の名前や自身の家名がちょっとダジャレっぽいなとは思っていたものの特に記憶にあるでなし、中央貴族とは縁もなく、のんきに田舎暮らしを満喫していた。 だが、領地を襲った大嵐により背負った借金のカタとして、准男爵家の嫡男と婚約することになる。 ──その時、ようやく気が付いたのだ。自分が神絵師の無駄遣いとして有名なキング・オブ・糞ゲー(乙女ゲーム部門)の世界に生まれ変わっていたことを。 しかも私、ヒロインがもの凄い物好きだったら悪役令嬢になっちゃうんですけど?!

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈 
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...