上 下
61 / 105
第6章 アカネと森の狼さんと熊さん クラッシュ編

【男の娘061】アカネと魔熊退治の結末

しおりを挟む
「アカネちゃんすごいじゃないの。あの硬くて、獣臭くてとても食べられないお肉がこんなに柔らかく、美味しくなるなんて、まるで魔法でも見ているみたいだわ。」

一応、試食の時に何も手を加えていない熊肉、同じく薄く切って、焼いたんだけど、とても食べらるようなものじゃなかった。試しにみんな10円玉くらいの大きさにして食べたんだけど。

まず、噛みきれない。硬いゴムを食べているようだ。噛んでも噛んでも噛みきれない。そして噛むたびに嫌な獣臭い味があ口の中一杯に広がる。とても不味い。美味しくない。確かにティムの言いたいこともよく分かった。

鼻の効く、獣ならもっと嫌かも知れない。でも、肉食獣って、生肉を血のついたまま食べるから、そういうのは気にならないのかな。野生の狼達ならこれでも食べてくれるのかも。

結局、飲み込むことが出来なかった私とお母様は、口元を隠しながら、ゴミ箱に、噛んでいた肉片を吐き出した。ティムは、嫌な顔をしながらもごっくんと飲み干していた。

口の中が変な味が残っていて、必死に水で口の中を濯いでいた。

その後での、浸けたものを試食したので驚きは凄かった。でも、私が美味しいというまでは、二人とも手をつけなかったんだよね。

「いえいえ、お母様が蜂蜜やヨーグルトを作ってくれていたおかげですよ。いや、でも本当、少しだけど食べれる目処がついて良かったですね。」

「そうさね。流石に手をつけない状態でのあのお肉、お腹が空いていたとしても食べたくないからね。しかも、まだまだ大量に残っているから良かったわ。これで、森の熊の問題も解決したようなものよね。」


「そうですね。後は、夕食が終わったら、薄くスライスした熊肉をお鍋で煮込んでみますね。それで、肉が柔らかくなって、灰汁が取れれば、きっと調味料を使わなくても食べられると思いますから。」

「アカネちゃんが言うなら間違いないさね。さっ、ちゃっちゃと残りの夕飯の準備をしちゃおうか。今日は頼みの綱の可愛い小人さん達もいないからね。」

◆ ◆ ◆  ◆ ◆  ◆ ◆  ◆ ◆

夕食後、お父様からの発表があった。


「ペレストやグラファンに森の小動物や鳥たちに調査をしてもらった結果。森には約50頭ほどの熊が棲息していることが判明した。それに伴い、大幅に動物や木の実の数が最近は減少しているそうだ。

 狼達が、襲って来たのも、食べるものが少なくなった故に取りに行かせた感じだな。これは今朝までの報告の分だ。

 午後からは、その状況が慌しく変化した。広範囲に棲息していた熊が一箇所に集まり出した。どうやら、熊の主が昨夜一匹の巨浪になす術もなく、やられ、亡骸ごと持って行かれたのが原因のようだ。

 それで事態を重く見たのか、他も襲われることを危惧して集まったのか、復習しようとしての作戦会議かは分からんが集まったようだ。」


 ほえーーーーっ、昨日とってきた、さっきちょっと食べた魔熊の、お肉って、主人さんのお肉だったのね。ティムったらかなり強いのね。ドラゴンだから強いと言えば強いのだろうとは思ってだけど、ボス熊を一噛とは、、、

 ここら辺にティムの敵はいないようだね。これなら、安心して、熊を狩ってもらえるね。


「ペレスト達はその巨浪の話を聞いて、この地の神獣フェンリル様と結びつけた。かなり興奮して盛り上がっておったな。狼達も遠吠えをいくつも上げて興奮しておった。

 その中で今後のことについて話したのだが。

強いバックアップが出来たおかげか、意気揚々と群を連れて、狼達は、残りの熊をやっつけにいった。グラファンとペレスト達も一緒に討伐に行った。」


あらあら、展開が早すぎやしませんか?ティムに残りの熊も時間を、かけてゆっくりと狩ってもらう予定だったのに。熊肉もこれ以上は、増えないってこと?なんか拍子抜けの結末になっちゃってたね。

「その狼達と熊への反撃に対しての報告は明日以降もらうことになってある。なにはともあれ、これで大事は一つ完了したということだ。」

みんなそれ程被害もなく終わりそうでホッとしている。

◆ ◆ ◆  ◆ ◆  ◆ ◆  ◆ ◆

後日談、

狼達は、グラファンやペレスト達の協力も、あって無事に熊を追撃したもようだ。狼達の被害は大きかったものの、逃げ腰の熊を相手に辛勝を挙げた。

熊達は、また、巨狼が来ることを恐れ、森の奥に引っ込んでいったようだ。その際に足の遅い子熊を何匹か倒したようだ。

大人の熊相手には、あいも変わらず攻撃が通じなかったようだ。巨狼の存在の力が大きく影響していたようだ。

これで、牧場や家の周辺には魔熊の影はなくなり、さらに、狼の数も併せて激減したこともあり、小動物が暮らせる森たとなりました。

ベジタル家は、残った熊の肉を熟成させ、味を占めたのはよかったものの、もうしばらくは熊のお肉を味わうことが出来なくなりました。


「あんなに美味しく食べられるので有れば、もう何匹か狩っておけばよかったかのー」

ティムの食い意地が食卓を大きく賑わすのでした。



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...