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第6章 アカネと森の狼さんと熊さん クラッシュ編

【男の娘046】アカネと碇

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「ということでなんとか、砂糖の原料の植物かそれにかわる甘味の原料を採取しておきたいんですよね。」

「アカネのやりたいことと、どうやってするかの筋道はわかったけど、今の段階だと無理と言っていいんじゃないかな。まず、砂糖の原料のサトウキビだったか、それを入手してここに持ってくるのが第一に無理だな。長い期間を得て運んでいれば、植物は枯れてしまうんじゃないか。それに、採取しようと思っても農園ではさせてくれないだろう。」

「ダメですかね?小麦や大麦なら、多少持っていってもらっても大丈夫だと思いますが。。。」

「あ~ダメだと思うぞ。麦なら、ここ以外の土地で大量に作っているから、うちがどうとかは関係ないんだけどな。砂糖は、高価だろう?それを少量でも持って行くなら、やっぱり変に勘繰られると思うぞ。」

「う~~ん。やっぱり難しいですか。となると、私の空間魔法で、原種を持って行くのが一番なんですよね。」

「それもやっぱり難しいと思うよ。父さんがまず、サトウキビの原種のある土地まで、アカネの同行を許可しないだろうし。それに、魔法は禁止されているから、どちらにしろアカネがどうこうするのは現時点ではダメじゃないか。」

「そうですね。私が外に行けるのと、魔法が使えること。両方がお父様に許可されないと難しいですね。先は長いな~~」

「アカネ。僕が手伝えそうなことならなんでも言ってくれよ。協力するから。」
「(それに、別に結納金返済しなくても、ここで一緒に暮らせばいいと思うんだよんな)」

「えっつ、マッシュ兄さん何かいいました?協力は凄い助かります!!」

「いや、なんでもないぞ。よし、では早速養蜂箱を作るとするか。アカネはしばらく周辺をぶらついててもいいぞ。ただし、僕の見える範囲だぞ。」

「は~い、了解ですわ。マッシュ兄さん」

 マッシュ兄さんが、魔法を使って、木を切り倒し、使いやすいように生木を魔法で乾燥させ、ある程度の長さにカットして、養蜂箱に必要な木材をさっさと準備していく。

 私は、そんなマッシュ兄さんの作業を少し離れた所の切株に腰かけてみていた。

「さて、あたりに他に人影はないし、ここに転送ゲートのポイントを埋めて置こう。別に魔法を使ってなにか起きるわけじゃないから、約束を破ったことにはならないはず。この魔法はもしも、家が襲われた時の緊急避難に使えるからね。悪い事ではないんだよ。」
 
 しっかりと、自分に言い訳をして魔法を唱える。

『転送門碇(転送ゲートアンカー)2』

 こうして見えない楔(くさび)がこの地に打たれた。1は、家の私の部屋で設定してあるんだ。本当は、もしもの時のために、ここから家まで転移できるか、テストしておきたいんだよね。いざという時に必要な魔力が大きすぎて、実は使えませんでしたなんて、土壇場で知りたくはないからね。とはいえ、お父様との約束もあるので、これ以上は魔法は使えないんだよね。

 さて、やることはやったし、どうしようかな?マッシュ兄さんが養蜂箱を作り終わるまではここからあまり離れられないし、麦畑をみるか、そこら辺に生えているシロツメ草で花の王冠でも作ろうかな?保育所の時は、男も女も関係なかったから、別に草で編み物しててもあの頃は特段変なことは言われなかったもんね。

 まずは麦畑でも見てこようかな?もしかしら私にでも出来ることがあるかもしれないし。スタスタとマッシュ兄さんの隣を通り過ぎて、お父様がいた麦畑の方に歩いていく。マッシュ兄さんは、もってきた道具を使って真剣に木材とにらめっこして、罫書き(けがき)をしている。

 うん、真剣に作業しているマッシュ兄さんの横顔はカッコイイね。しかも私が隣を通ったことに気付かなくらいに集中しているよ。

 へ~、これがこの世界の麦か、私の所で作ってた麦とさほど変わらないね。田植え機みたいな種撒き機械でやってたけど、この世界ではどうやって、撒いているんだろう?

 みていると、現代の麦や稲みたいに、等間隔に綺麗に生えてはいないので、機械ではないんだろう。それに私がみた麦よりも、粒が大きくないし、一つの穂につける実の数も少ない感じがする。日本の農業は、管理しやすいように、配合やらなんやらして、一つの株で大量に実をつける品種を扱っているものが多い。中には美味しさ優先で、実の数が少ないのもあったけど、日本の国民の皆様に届けるためには、まずは質よりも量を優先しないと、食べる分が行きわたらないんだって。それに飢饉になった時の蓄えも必要だったらしいし。

 ここでは、そんな植生の品種を研究している人まではいないのかな。雑草は、あまり大きなものは見あたらなかった。ちょっとした雑草なら沢山生えているけど、麦と同じ大きさのものは見当たらなかった。人の手で雑草を全部抜いているのかな。この農地全体を???

 いや、これは人力でやるととんでもない量だよ。江戸時代じゃないんだから、流石に厳しくないかい?
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