上 下
43 / 105
第6章 アカネと森の狼さんと熊さん クラッシュ編

【男の娘043】アカネとマッシュ兄さんとのほのかな散歩

しおりを挟む
「さっ、アカネ食事も終わったしソロソロ行こうか?」

「ちょっと待ってくださいね。マッシュ兄さん。」
私は、エプロンを脱いで、少し外行の恰好にして、お弁当の藤籠を持ってくる。

「マッシュ兄さん。お待たせしました。」

「いや、待ってないし大丈夫だよそれじゃ行こうか。」

「えっ、マッシュ兄さんは蜂の巣箱作りするんじゃなかったんですか?」

「もろんするよ、だから、これ」
と右手で道具箱らしきものを持ち上げて見せてくる。


「いや、あのそれは道具でしょ?材料はどうするんですか?」

「材料はそこら中にあるだろう?」

た、たしかに、そこら辺に木が生えているし、問題ないといえば、問題ない?というか現地調達?

「あっ、お母様外にでるので、魔法は持って行きますね。」

「ええ、わかたっよ。ゆっくり楽しんでおいでね。夕飯の準備までに戻って来てくれると助かるよ。」

「ええ、わかりましたわ。お母様。では行ってきます。」

「さぁ、アカネ」

 と言って、さりげなく、道具箱を持っていない右手を出してくる。これはなんだろう。手を繋ぐということかな。

「はい、お兄様」
と言って、私は藤籠を右手に持ち替え、左手をマッシュ兄さんに差し出した。

「あっそうか。この場合はそういう風にも捉えられるんだな。いや、アカネすまん。それは非常に手を取ってあげたいんだが、そのお弁当の荷物が重いだろうから、持ってあげるってことだよ。」

と笑いながら言っていた。

「ああ、なるほど、マッシュ兄さんありがとうございます。」

 自分が女であることを忘れるわけではないんだけど、ついつい男の時だった時と同じ用な感覚で自分で重いものは持つものだと思ってしまっていた。ちょっとしたことで、前世で、女の子扱いしてもらえなかった反応がそのままでてきてしまう。

 う~~~、上流貴族でなくてよかったよ。きっと、上流階級の交流だと、こんなボロ一つでもきっと怪しまれてしまうよ。私は上流貴族の令嬢のガーネットだったんだから。そういう意味でも改めてベジタル家に来れたことに感謝だね。

「さ~どこに行きたいアカネ。あまり遠くや森の中には連れていけないけど、なるべく行きたい場所に連れて行ってやるぞ。」

「う~~~んと、お父様やお兄様がいつも働いている所を見てみたい!!あとは、キャロットちゃんが勉強している学校?らしきとこも行ってみたいよ。」

「キャロットのとこは、父さんの許可がいるな。鳥人と獣人がいるから、朝も行ってただろう?ペレトンのやつに見つかると、また、アカネがプロポーズされるかもって?父さん気が気でならないからな。僕も獣人の所にだけは連れて行くなときつく言われているからな。それは無理だな。」

「そうっか~残念。パンがなかったらいけたんだよね?」

「どうだろうな?あいつらそれでなくても気になったメスがいたら、やっぱり自分の集落に連れて行こうとするからな。パンはあくまで一つの材料にしかすぎないよ。アカネは獣人族から見ても十分魅力的だと思うぞ。ごほん」

 マッシュ兄さんが、顔を赤らめながらそんなことを言ってくる。あれ、それって私が美人てことかな。あのガーネットが苦手な兄さんがここまで言うなんて、変わったね。それとも私がそれだけ魅力的になったのかな?それなら純粋に嬉しいかも。

「やっぱり、兄さんお弁当箱貸して。」
と言って私は無理やりお弁当箱をマッシュ兄さんから奪い取った。そして、

「はい」

と左手を差し出した。今度は意味ちゃんと伝わるよね。

「たく、甘えん坊だな。アカネは。。。」

 と私から顔を背けて、赤くなった顔を隠しながら、手を繋いでくる。マッシュ兄さんて、女慣れしてないのかな。可愛いかも。と不覚にも思ってしまったよ。

 マッシュ兄さんでいいのなら、婚約破棄する必要もなかったし、結納金返済もいらないんだよ。ま~兄さんには私で、少し、女慣れしてもらって、素敵な女性を是非とも捕まえて頂こう。私は、それまで、マッシュ兄さんを鍛えるという名目の上でちょっとした交流をするだけなんだよ。

 私も、女性になってから、男性との付き合い方が少しわからなくなってきた所もあるから二人で練習して、本番が来てもばっちり出来るようにしておこうね。とこっそりと思うのであった。

 これにしたって、ある意味男性と女性が二人でデートしているようなものだよ。カテゴリー的には、兄と妹だけど、血縁的には、見知らぬ他人だからね。そう考えると私って、現代で言えば、親公認で同棲しているようなものなのかな。恋愛感情がないから実際は違うのだろうけど。

「兄さん。妹相手に緊張しないでよ。手汗が凄くでてるよ。リラックス。リラックス」

と言ってあげる。兄さんは慌てて、手を離し、服で手汗を拭う。

「すまんな。アカネ。ほら、これでもう大丈夫だぞ。」

「いや、別に兄さんが手汗掻いてても私は全然平気だよ。ただ、女性と付き合うまでには直しておかないとね。ふふふっ」

と言って笑った。マッシュ兄さんはポカーンと私の顔を見ている。なんでだろうね?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】シェアされがちな伯爵令嬢は今日も溜息を漏らす

皐月 誘
恋愛
クリーヴス伯爵家には愛くるしい双子の姉妹が居た。 『双子の天使』と称される姉のサラサと、妹のテレサ。 2人は誰から見ても仲の良い姉妹だったのだが、姉のサラサの婚約破棄騒動を発端に周囲の状況が変わり始める…。 ------------------------------------ 2020/6/25 本編完結致しました。 今後は番外編を更新していきますので、お時間ありましたら、是非お読み下さい。 そして、更にお時間が許しましたら、感想など頂けると、励みと勉強になります。 どうぞ、よろしくお願いします。

追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚  ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。  しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。  なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!  このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。  なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。  自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!  本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。  しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。  本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。  本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。  思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!  ざまぁフラグなんて知りません!  これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。 ・本来の主人公は荷物持ち ・主人公は追放する側の勇者に転生 ・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です ・パーティー追放ものの逆側の話 ※カクヨム、ハーメルンにて掲載

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

いもおい~日本に異世界転生した最愛の妹を追い掛けて、お兄ちゃんは妹の親友(女)になる!?

栗栖蛍
ファンタジー
『TS転生して美女に生まれ変わった元お兄ちゃんが、今のお兄ちゃんの彼女になった!?』 地球を救う為、異世界から仲間を追って日本へ転生したリーナ。 一人残された兄ヒルスは、溺愛する妹を追い掛けて彼女の親友(女)として生まれ変わる--。 最強のウィザードから女子高生に生まれ変わったみさぎ(リーナ)と、咲(ヒルス)のダブル女子主人公。 みさぎは、現世の兄・蓮と、前世の兄・咲の関係に翻弄される。 果たして地球は救われるのか──? ふりがな多めです! ファンタジー枠ですが、日常・恋愛エピソード多めになります。 表紙イラスト:猫田もち太様 ☆タイトルを【日本に異世界転生した最愛の妹を追い掛けて、お兄ちゃんは妹の親友(女)になる!?】から変更しました。今までの略題をメインタイトルにしました。 ☆1日おきの更新予定(たまに気まぐれで更新)。 ☆各話2000字前後(プロローグとエピローグは除く)。 ☆カクヨム様・小説家になろう様・ノベルアップ+様でも公開してます。 ☆感想・評価などいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】

ゆうの
ファンタジー
 公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。  ――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。  これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。 ※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。

【完結】目覚めたらギロチンで処刑された悪役令嬢の中にいました

桃月とと
恋愛
 娼婦のミケーラは流行り病で死んでしまう。 (あーあ。贅沢な生活してみたかったな……)  そんな最期の想いが何をどうして伝わったのか、暗闇の中に現れたのは、王都で話題になっていた悪女レティシア。  そこで提案されたのは、レティシアとして贅沢な生活が送れる代わりに、彼女を陥れた王太子ライルと聖女パミラへの復讐することだった。 「復讐って、どうやって?」 「やり方は任せるわ」 「丸投げ!?」 「代わりにもう一度生き返って贅沢な暮らしが出来るわよ?」   と言うわけで、ミケーラは死んだはずのレティシアとして生き直すことになった。  しかし復讐と言われても、ミケーラに作戦など何もない。  流されるままレティシアとして生活を送るが、周りが勝手に大騒ぎをしてどんどん復讐は進んでいく。 「そりゃあ落ちた首がくっついたら皆ビックリするわよね」  これはミケーラがただレティシアとして生きただけで勝手に復讐が完了した話。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

処理中です...