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第5章 アカネと美味しい食卓

【男の娘036】アカネと鳥かごの中の小鳥

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「あなた、あれもダメこれもダメでは頑張っているアカネが可哀想ですわ。あなたがアカネを大事に大切にそれこそ、小鳥を鳥かごに飼って、外敵から身を守るようにしているように見えますわよ。

 今は社会の常識を学ぶために、うちの中で過ごしてもらってますけど、この子が生きるためにはある程度の自由は必要ですわ。あなたが言っていることも勿論私には理解できますのよ。

 でもね、その結果、アカネが外に出ることも出来なくなり、ず~~~っと家にいることになっては、本末転倒ではありませんか。生きるだけが全てではないでしょう?色んな人と関わって、思い出を作ったりしながら生きていくのが私達人間ではありませんか。

 その本質を取ってしまうのはいけませんよ。」


「うむむ、アカネすまん。どうも私は過保護に過ぎているようだ。確かに母さんの言う通りだ。大切にするあまり、その子の自由や意思を無視してしまっては、いかんわな。だがな、私も正直どうしていいのかわからんのだよ。

 これほど、希少で強大な魔法の使い手は、本当に喉から手が出るほどに欲しいものなんだ。知られてしまえば、一気に、大量の貴族や商人が来るのは間違いないんだよ。」


「父さん。少し早いけど、アカネにはここの辺境の周りを案内することにしようよ。家の中だけだと、どうしても視野が狭くなって、魔法や植生の勉強に気が向いてしまうよ。その頑張った結果が使用禁止になっていくわけだから、やっている意味がなくなってどんどん気落ちしちゃうよ。」

 とマッシュ兄さんがそう言って、私の方を向いてくる。そんなにがっかりした表情してたかな?
でも、確かに、提案した内容や勉強したことがことごとく禁止されている現状って何をやっても禁止されそうで、嫌になってきてるんだよね。もしかしら、これがずっと続くならこっそり抜け出すかもしれないし。。。

「でさ、父さんアカネには息抜きにさ。色々手伝ってもらおうよ。料理も美味しいし珍しいものも出てくるから調理の手伝いはしてほしいけどね。」

 と笑って言っていた。マッシュ兄さんありがとう。援護射撃なかったら、本当にしょげてたかもしれないわ。でも、お父様が悪いわけでもないのよね。かと言って、かばうと援護してくれたお母様とマッシュ兄さんに悪いし、どうしたものかしらね。

「お父様。お父様が私をすごく大切にしてくださっていることはとてもよく分かっておりますわ。アカネはとてもお父様のそのお気持ちが嬉しいです。お母様やマッシュ兄さんの言う通り、ちょっとしょげてた部分もあります。十二分に気をつけますから、私にも外の景色を見させて下さい。お願いします。」

 私はお父様に頭を下げた。日本人の最終奥義である土下座は封印しておく。この奥義を使ってしまうと、お父様がまた、珍しいものが出てきたと警戒してしまうもの。

「アカネ。マッシュの言う通りだな。明日からは、私か、マッシュの付き添いがあれば外を見てもらって構わんよ。これからも最大限の警戒は行うが、アカネが自由に動けるように配慮していこうと思う。みんな忠告してくれてありがとう。」

「さすが、あなたそれでこそ私の愛すべき夫だわ。」

「ちゅっ」
とお母さまはご褒美お父様の頬っぺたにキスをした。

「あ~~マッシュ兄さん。そろそろ私達お邪魔のようだから、出ましょうか。」

「そうだな。アカネ我々がいては邪魔だろう。では失礼します。」

 もはや二人の世界に入ってしまっていて、私達の声は届かないらしい。もうちょっと場所を弁えてほしいな~。あ~いう熱々な夫婦は見ていて飽きないし、羨ましくはあるんだよ。でもね。目の前でされるのはちょっとな~。

「アカネ。明日は僕が案内してあげるよ。どこか行きたい所はあるかい?といってもこの周辺ぐらいしか案内できそうにないな。」

「いいんですか?マッシュ兄さん。蜂の巣箱づくりしないといけないんじゃ?」

「いいんじゃないか。それに部材運んで、アカネのみたい所でしたら、作業も出来るし、アカネもゆったりと見て回れるだろう。」

「そうですね。なら、もっとゆっくり出来るようにお昼も作ってもっていきましょうか?」

「あ~それはいいな。手軽につまめるものなら大歓迎だよ。」

「では、明日は朝食を食べたらいくよ。お休みアカネ。」

「おやすみなさい。マッシュ兄さん」

 マッシュ兄さん。ほとんど私に抵抗がなくなってきているな。初めてお会いした時はあんなに嫌悪感むき出しだったのに。あ~~あ~~~マッシュ兄さんに早いとこ素敵な女性見つけてあげないとな~。フルーテス元気かな?今度お手紙書いてみよう。あれ、これもお父様に許可をもらう必要があるのかな?

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