上 下
23 / 105
第4章 アカネと便利な魔法

【男の娘023】アカネの魔法適正

しおりを挟む
「そうね。なら、ちょっと魔法の適正検査やってしまおうかしら。」

「えっ、お母様、そんなに簡単に出来るものなのですか?」

「通常は教会や学校などで専用の装置を使うんだけどね。それだと、行けない子たちは適正がわからないから、民間でもできる簡単な方法があるのよ。その分、大雑把にしかわからないわ。」

二人は、話ながら地面の見えるを外に出た。
お母様は木の枝を取り出して、地面に絵を描いていく。なんかお母様魔法使いっぱい。

これはよくある、六芒星の魔法陣だ。少し違うのは、その星の各頂点に小さな○が描かれていることだ。


「これが簡易的な魔法陣だよ。あとは測定したい魔法の属性を○の中に描いていけば完成だよ。
まず基本的な4大元素だね。風の精シルフの風、火の精サラマンダーの火、土の精ノームの土、水の精ウンディーネの水。これでさっきの使えなかった魔法は適正があるかわかるわね。

通常はここに光の精ピリカと闇の精シャドウを入れるんだけど。もし発動しなかったら、魔法陣が正しいかわからなくなるからね。ここは空間の精霊ディナと時の精霊クロノスにしておきましょう。」

「はい、それでお願いしますわ。」
と私は、そのお母様が書いた魔法陣を紙に複写していく。自分でも使えるなら使えるようにしておけば役にたつからね。

お母様はその間に各魔法陣に該当するシンボルを刻んでいる。

「アカネちゃんできたわよ。まずお手本に私が試してみるわね。」

そういって、魔法陣の上に立ち、両手を胸の前で合わせた。

「主神ゼファの名の元に、かのものの適正を示さん。」

お母様が呪文を唱えた。
魔力の光がお母様の足元から流れ出し、魔法陣の中心が光った。
お母様が手を横に大きく広げた。光は魔法陣全体を淡く光らせた。
そして、ゆっくりとその場で一回転した。各星の頂点に描かれたシンボルが発光していく。
『土』『水』『火』『風』。。。。。『空間』と『時』のシンボルはまったく光らなかった。


なるほど、適正があれば、点燈して、適正がなかったら反応がないから光らないんだね。確かに簡単でわかりやすいです。

「うん、こんなものだね。魔法陣はしっかり動作しているみたいだよ。私の場合は4大元素のみだから、これでOKだね。ちょっと、空間や魔法が微かにでも点燈したらと思ったけど、ややっぱりないみたいだね。はははっ」

と明るく笑っていた。

「じゃあ、次はアカネちゃん。やってみましょうか。やり方は私がちゃんとその都度教えるからリラックスしてやったらいいよ。」

お母様が魔法陣から外にでると、発光していた魔法陣が、効力を失って、光が消えた。

私が代わりに魔法陣の中に入っていく。ちょっとドキドキするよ。もしこれで、空間以外の魔法の属性がなかったらどうしよう?空間は珍しいから、人の前では使えないし、4大元素のいずれかが光らないと世間一般的に魔法が使えないことになってしまう。

それはちょっと困るかな。私だって、日本にいた頃は、冒険ものや令嬢もののファンタジーを読んでいたので、魔法を使うことに憧れていたんだよね。こっちで空間魔法を使えてうれしかったんだよ。でも人前でお披露目出来ないってことは、人の役に立つのも難しいってことだから、ちょっと複雑な気分になってくるんだよ。

「ふぅ~~~~」

「リラックスしたかい?では、まずは私のように手のひらを胸の前で合わせてごらん」

私はお母様の真似をして、両手を胸の前で合わせた。

「次は詠唱が必要になるから、ゆっくりするから復唱してね」

「主神ゼファの」「主神ゼファの」
「名の元に、」「名の元に、」
「かのものの」「かのものの」
「適正を示さん。」「適正を示さん。」

私の足元から魔力が流れ出し、魔法陣が発光していく。。。。

ただし、お母様と発光の色が違う。お母様は薄い紫の光だったのに対して、私のは虹色の輝きだった。えっ、魔法陣の光って、使用者によって違うものなのかな?

お母様の方を見ると、口をあんぐり開けて、こっちを見ている。
うん、やっぱりこれも滅多にない現象みたいだね。また、秘密にする内容が出来ちゃったよ。

「アカネちゃん。ちょっと、いや、かなりびっくりしたけど、今は適正検査を進めましょうね。。」
お母様は気を取り直して、次の動作を教えてくれた。

「次は両手をこういう風に横に伸ばしてね」

私も同じように伸ばした。魔法陣の中心に集まっていた光が魔法陣全体に行きわたっていた。

「次はそのまま、そこでクルットターンしたら、そのままそこで立ってて頂戴」

私は言われたままにその場で華麗にくるっと回転した。
各星にしるした元素のシンボルが発光していく。

『土』『水』『火』『風』・・・発光なし
『空間』と『時』・・・発光あり

うん、お母様と全く反対の結果となってしまった。

「アカネちゃんすごいじゃないか。4大元素は軒並みダメだったけど、代わりに希少な『空間』と『時』のシンボルが発光しているわよ。それも、少しの適正じゃなくて、かなり適正があるみたいね。」

そうなのである。『空間』と『時』に関しては、魔法陣が発光しているだけではなく、そこから七色の光の柱が地面から空に向かって伸びていたのだ。

「アカネちゃん。そのままは色々とまずそうだから、一旦魔法陣から降りようか。」

「はいっ、お母様」

「ちょっとやらかしてしまったかもしれないわね。旦那には、この件は詳細に伝えるけど、他の人には内緒でお願いね。私達はおうちの中で家事をしていた。他はなにも知らないってことで、宜しくね。アカネちゃん。」

「やっぱり、異常な事態だったんですね。お母様ご迷惑をおかけします。」

「いいのよ。アカネちゃん。気にしなくて。むしろ私とアカネちゃん二人きりの時でよかったわよ。他の所でやってたら大騒ぎになっていたもの。本当アカネちゃんは面白いわね。」

「そういってもらえると、心が安らぎますわ。お母様」

「さっ、誰かが来る前に中に入ってましょう。私達はなにも知らないのだから。」

お母様は魔法陣を見定め『整地(アースコンディション)』と唱えて、もとの平たい地面に戻してしまった。うん、魔法ってやっぱり便利だよね。私もいつでもちょっと使える便利魔法を使いたかったよ。

二人はそろそろとお家の中に戻っていった。その日虹の柱を見た人は、いなかった。辺境の山に囲まれた土地であることと、農作業をしている人が多かったことが幸いしたようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】

ゆうの
ファンタジー
 公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。  ――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。  これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。 ※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。

エクリプス 〜瑪瑙の章〜

亜夏羽
ファンタジー
某西暦X年、春。 私立妖華軍化学高校(あやはな軍化学高校)に入学した新入生の瑪瑙 紅華は入学早々、様々な出来事に巻き込まれる。 国と国との戦争・冷戦や揉め事、親友や新たな仲間、能力の開花・覚醒、 大事な"あの人"との関係も明らかに?! 国同士のぶつかり合いが今、始まる……! これは、たった1人の少女が国を背負って闘う、学園ファンタジー物語。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

築地シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...